【連帯・社会像】

星英雄:沖縄の誇りと尊厳をかけた闘い 県知事選がはじまった

 沖縄県知事選がきょう30日、告示された。名護市辺野古への米軍新基地建設に反対する沖縄の意志を安倍政権と日本全国に示す選挙だ。沖縄の人々の誇りと尊厳をかけた、負けるわけにはいかない闘いだ。

 「夜中なのにまだ飛んでいる」 「眠れない」 「安眠妨害だ」

 こんな苦情が9月、米軍普天間基地がある宜野湾市役所に殺到した。普天間基地にはオスプレイが配備されている。米軍が「運用上必要」といえば、まかり通る日米両政府の取り決めがあるから、住民の生活破壊が容認される。

 普天間基地周辺の9月の騒音速報値(沖縄県まとめ)によれば、夜の10:00から朝の7:00まで、深夜の騒音発生回数は12の測定局で、259回記録した。朝7:00から夜10:00までの時間帯では6484回を記録。普天間基地周辺の住民はつねに騒音被害を受け、とくに夜間飛行による深刻な騒音被害が常態化していることがはっきりと読み取れる。

 騒音の最大値は100.5デシベルだった。100デシベルは、電車通過時のガード下の騒音に相当するうるささだ。騒音の発生回数もうるささも、人間の限界だ。

 騒音被害だけではない。沖縄では1995年9月、米兵による少女暴行事件が起きた。2004年8月、米軍普天間基地の大型輸送ヘリコプターが沖縄国際大学に墜落し、2008年10月には名護市に米軍セスナ機が墜落した。米兵による犯罪、米軍機の事故は絶えない。米軍基地がある限り、生命と人権が脅かされない日はない。戦後から今に至るまで、「植民地状態」がつづいている。

 安倍政権が埋め立て工事を強行し、新基地建設予定地としている名護市には、すでに広大な海兵隊のキャンプシュワブ基地があり、オスプレイ用のヘリパッドもある。名護市の人々も、普天間基地周辺の住民同様、日夜生命と人権を脅かされている。その名護市辺野古に、普天間基地に替わる米軍の新基地をつくることに、誰が納得するだろうか。

埋め立て工事前の辺野古・大浦湾。貴重なサンゴ礁、絶滅危惧種のジュゴンやウミガメが生息する。左下の辺野古集落を除くほとんどが米軍のキャンプ・シュワブ

埋め立て工事前の辺野古・大浦湾。貴重なサンゴ礁、絶滅危惧種のジュゴンやウミガメが生息する。左下の辺野古集落を除くほとんどが米軍のキャンプ・シュワブ

 翁長雄志候補は、「あらゆる手法を駆使して、辺野古に新基地は造らせない」と訴えている。知事に当選すれば「埋め立て承認の審査過程を検証し、瑕疵があれば承認を取り消すことは可能」と明言している。

 今につづく沖縄の痛みを理解しないのが仲井真弘多候補だ。仲井真氏は、名護市辺野古に新基地建設を推進する立場だ。昨年12月、自身の公約を裏切って辺野古の埋め立てを承認した。安倍政権の強圧とカネに屈した変節は、沖縄選出の自民党国会議員らと変わらない。

 今回の知事選は、沖縄を「捨て石」にする安倍政権、沖縄を差別する安倍政権に対する、沖縄の誇りと尊厳をかけた闘いだと思う。

 沖縄は日本の国土全体の0.6%しかない。そこに日本の米軍基地の74%がある。「沖縄に米軍基地があって当然」と、政府に押し付けられてきた。そして新基地建設が浮上した。沖縄の反対で、新基地を阻止すること18年になる。

 しかしこの18年は、新基地建設に反対する沖縄の意志がことごとく無視されてきた年月でもある。昨年1月には、県議会議長をはじめ41全市町村長と各議会の議長らが上京して安倍首相に建白書を手渡した。建白書は米軍普天間基地の閉鎖・撤去と県内移設の断念を求めるものだった。しかし、安倍首相が沖縄の叫びを少しでも受け止めることはなかった。沖縄の人々の生命・人権よりも米軍・日米同盟が大事、という姿勢をあらわにしたのだ。

 この時、沖縄のジャーナリストがいった言葉を思い出す。「差別されていると自覚すれば、尊厳をかけた闘いにならざるをえない」

 今年1月、名護市長選挙で稲嶺進市長が大差で再選した。前回市長選につづき、新基地建設に反対する沖縄の民意をはっきりと示したものだ。この名護の勝利が、政府・自民党の強大な権力を相手に、今日までの沖縄の運動を支え、切り開く役割を担ったと思う。この時の稲嶺市長の言葉も忘れられない。「権力に対する抵抗はウチナーンチュの誇りだ」

 県知事選は、沖縄の人々の誇りと尊厳をかけた闘いなのだ。

 差別に対する怒り、沖縄の誇りと尊厳が新基地建設を容認する保守の分裂を生み、「保革共闘」で翁長氏擁立に結びついたといえる。翁長氏は「沖縄のアイデンティティー」を大事にする政治家だ。翁長氏の勝利なくして、新基地建設反対の闘いの道は開けない。県知事選は、構造的差別を跳ね返し、沖縄の針路を自ら決定する機会となる。勝てば沖縄と日本の新たな展望を開くことができると思う。

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