沖縄と安倍政権の歴史的な闘いの幕が上がった。１２月２日、政府が米軍普天間基地を移設先とする名護市辺野古沖の埋め立て承認を翁長沖縄県知事が取り消したことに対し、その撤回を求めた代執行訴訟の第１回口頭弁論が福岡高裁那覇支部で開かれた。翁長知事は法廷で、「日本の民主主義、安全保障について国民全体が真剣に考えるきっかけになってほしい」と陳述した。
安倍政権との全面対決という新たな段階を迎え、沖縄は辺野古新基地建設反対闘争に勝利するための統一的な組織「オール沖縄会議」結成大会を１４日、宜野湾市で開く。知事を支え、法廷闘争、各種選挙、現場の闘争の、主に３つの分野の連携を強め、あらゆる事態に対応できるようにしたいという考えだ。
島ぐるみ会議や市民団体、政党、労組、経済・企業体など辺野古新基地建設反対の幅広い組織、個人を結集する。
「オール沖縄会議」の最初の準備会合は１０月２４日、知事公舎で開かれた。会合の冒頭、翁長知事はこう発言したという。「行政と運動体は違うが、方向性は同じだ。それぞれの立場で頑張ろう。裁判等に一喜一憂せず、現場の闘いを大きくしてほしい」
県民の辺野古新基地反対運動に支えられているという自覚、運動を重視している知事の考えがうかがえる。正義の旗が沖縄にあるにせよ、国家権力を相手に裁判闘争で勝利する保証はない。弱者の沖縄が国家権力を相手に闘うには、県民の闘いを強くし、国民のなかに味方を増やすのが翁長知事の基本戦略なのだ。
１１月７日、辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前に翁長知事の妻・樹子さんが現れた。マイクを握ってこう話した。「（夫は）何が何でも辺野古に基地は造らせない。万策尽きたら夫婦で一緒に座り込むことを約束している」。そして「まだまだ万策は尽きていない」とも語った。座り込みを続けている男性は「知事にそんなことをさせるわけにはいかない。現場の闘いで新基地はつくらせない、というのがみんなの思いだ」と現場の様子を話してくれた。
直面する最大の課題は宜野湾市長選挙だ。「ここで負けると知事が片足を失うようなものだ。勝たなければ」と知事に近い経済人はいった。安倍政権に辺野古新基地建設の口実を与えてはいけない。結成大会で、シムラ恵一郎宜野湾市長選候補があいさつする。
２日の法廷で翁長知事は戦後の沖縄の苦難の歴史を語った。沖縄の米軍基地は、住民が収容所に入れられているときに強制的に奪われた。「銃剣とブルドーザー」で奪われた。沖縄が自ら進んで土地を提供したことは１度もない──。
沖縄の基地問題の原点はここにある。
一方、菅官房長官は１日、首相官邸で佐喜真宜野湾市長らと会談した。佐喜真市長は「これ以上の普天間基地の負担は限界だ」と訴え、菅官房長官は「１日も早い普天間基地の危険除去にむけて全力で頑張りたい」と応じた。辺野古新基地建設が唯一の解決策だ、というものだ。だがこれは、沖縄県民と日本国民をミスリードすることに他ならない。
普天間基地移設を打ち出した日米両政府によるＳＡＣＯ（沖縄に関する特別行動委員会）設置の発端となったのは、１９９５年９月の米兵による少女暴行事件だった。直後の１０月には８万５０００人の県民が、県民大会で怒りを爆発させた。日米両政府は、沖縄の米軍基地全体への波及と日米安保体制が揺らぐことを恐れてＳＡＣＯを設置した。
ＳＡＣＯは１９９６年４月の「中間報告」でも、同年１２月の「最終報告」でも、その冒頭で強調していることは「沖縄県民の負担を軽減」することだ。「普天間の負担」（宜野湾市の負担）軽減のためでもなく、「普天間の危険除去」のためでもない。日米両政府にとっても本来の出発点は沖縄県民の「負担の軽減」なのだ。
安倍政権が強行する辺野古新基地とはどういうものなのか。普天間基地では１本の滑走路なのが、新基地は１８００メートルの滑走路２本に。そして、４万トンの強襲揚陸艦が接岸できる、耐用年数２００年の巨大基地だ。建設費は１兆円といわれる。
国民の税金で、治外法権の米軍基地を提供し、沖縄県民の生活と安全を脅かすことが負担の軽減になるはずがない。沖縄が基地のたらいまわしを拒否するのは当然のことなのだ。
安全保障政策は、人間の安全保障政策でなければならない。戦後７０年を経て、アメリカは未だに沖縄を戦利品のごとく扱い、そのアメリカに追従することが日本の進むべき道であるかのように振る舞う安倍政権。沖縄の人々の生命と人権を踏みにじらなければ成り立たない日米同盟・日米安保体制とは何なのか。
辺野古新基地建設を許さない沖縄の闘いは、日米両政府と日本国民にそのことを問うている。