【福島・沖縄からの通信】

池宮城紀夫:山城博治らを解放せよ 沖縄は闘い続ける

 辺野古に新基地を建設してアメリカに提供するためには手段を選ばない。そんな安倍政権のやり方を象徴する山城博治氏らの逮捕・拘留劇だ。これに対し、沖縄はもちろん、日本全国、世界から、安倍政権批判の声があがる。山城氏らの解放を求めて活動する沖縄の池宮城紀夫弁護士に聞いた。〈文責・星英雄〉

 高江や辺野古での警察の横暴は、復帰前の米軍施政下よりひどい。いまの安倍政権のやり方は、辺野古に新基地を建設するうえで障害となっている沖縄平和運動センター議長の山城博治氏らを不当に逮捕・拘留する、明らかな政治弾圧だ。安倍政権は、ただちに山城氏らを解放すべきだ。
 
 山城氏は辺野古新基地建設に反対する運動の現場のリーダーだ。彼ががんばって中心的役割を果たし、みんなが同じ気持ちで現場にはせ参じて非暴力の闘い、座り込みの闘いを展開している。そのため、新基地建設工事は大幅に遅れ、安倍政権の思惑に狂いが生じている。
 
 現場の闘いが安倍政権の障害になっている。安倍首相はオバマ前大統領・アメリカに誓約した手前、工事を1日も早く完成させないといけないが、約束を果たすためには、現場の縄県民の闘いを挫かなくてはならない。山城氏らをつぎつぎ逮捕し、長期に拘留するのは、そういう狙いがあるのだ。弾圧で、リーダーを不在にし、県民の闘いを弱めようという狙いは非常にはっきりしている。
 
 かつて米軍の軍政下で、ブルドーザーと銃剣で土地を接収された。それに対して農民、住民が座り込みの抵抗・抗議をしたが、しかし逮捕することはなかった。
 
 たとえば、いまの宜野湾市の伊佐浜だ。米軍は農家の住宅を銃剣とブルドーザーでおしつぶし、美しい水田を取り上げ、米軍基地をつくっていった。農民たちの抵抗は伊佐浜の土地闘争として知られるが、米軍は抵抗した農民や住民を蹴散らしはしたが、逮捕することはしなかった。
 
 米軍と比べても、辺野古、高江にたいする安倍政権の横暴さがわかると思う。東京の警視庁や大阪などから屈強な警察官を選んで、非暴力の抵抗、坐りこみ闘争をする老若男女に襲いかかる。海上でも、抗議している人々を船からひきずり降ろし、海中に沈め、窒息するかもしれないような弾圧を、海上保安庁がやっている。
 
 60年安保の時の機動隊の弾圧もすごかったが、いまの辺野古、高江に対する弾圧は、私の記憶では、それ以上だ。憲法上の表現の自由など、まったく歯牙にもかけない暴力的弾圧だ。
 
 弁護団は、山城氏らの保釈を強く要求してきたが、そのつど裁判所に却下されてきた。そして現在も拘留されている。証拠隠滅のおそれがあるというが、そんなことが十分予測されるかといえばそうではない。
 
 山城氏らの行為はそもそも何なのか。山城氏らは工事用車両が米軍基地(キャンプ・シュワブ)に入るのを阻止したい。ゲート前に工事用車両が自由に出入りできないようにしようと、ブロックを積んだ。辺野古・大浦湾の埋め立て行為そのものが、沖縄県民の意志を無視した違法、不当な行為で、自分たちのやっていることは正当な抗議運動だ、何が悪いのかと。
 
 辺野古新基地建設反対を公約にして、翁長知事も当選した。国も沖縄の民意に従って、新基地建設を中止することが民主主義のあり方、国のあり方ではないか。それなのに、安倍政権こそ違法な工事をするからそれに抵抗しているのだ、ということだ。
 
 警察は暴力をふるい、検察は一方的な主張で起訴し、裁判所もそれを追認している。彼らは安倍政権の意向に従ってやっている。
 
 しかし、同じような事件で逮捕、起訴された仲間は釈放されていることをみても、山城氏ら3人が長期拘留されていることは、政治的弾圧であることは明らかだ。
 
 公務執行妨害というが、どんな公務を妨害しているというのか。これもこじつけ
以外のなにものでもない。実態は、政府に対する正当な抗議行動だ。
 
 昨年1月の事件はこういうことだ。山城氏らがブロックを積み、それを機動隊が取り除いて、3日間の攻防だった。公務執行妨害というなら、その時に現行犯で逮捕できたはずだ。ところが去年の暮れになって、威力業務妨害で逮捕したのだ。本当に威力業務妨害なら、機動隊の目の前で現行犯逮捕できたはずだ。
 
 辺野古新基地建設をめぐり、沖縄と安倍政権の攻防は熾烈になっている。現場に山城氏らを戻せば、運動はますます強くなるだろう。安倍政権としては、何が何でも次々罪名をつくり、逮捕、拘留をつづけて現場に戻さないことが必要になる。露骨な政治弾圧なのだ。
 
 安倍政権をみていると、1879年、明治政府が琉球を力づくで併合したことを思い出す。その前段で、明治政府は軍事力で首里城を制圧した。その時とよく似ていると思う。安倍政権は沖縄を実力部隊で弾圧し、沖縄を従わせようとしている。
 
 第1次安倍政権が、軍艦を派遣して辺野古新基地建設の調査をはじめ、いま警察を動員して力ずくで反対運動を弾圧し、抑え込もうとしている。憲法もなにもない、あるのは凶暴なむき出しの権力だ。
 
 本土の皆さんに考えてほしい。安倍政権といえども、原発は知事が同意しないと再稼働はできない。どこかの県に原発を持っていこうにも、知事がノーといえば押し切ることはできない。
 
 しかし、辺野古新基地建設はどうか、沖縄に対してはどうか。沖縄の民意「辺野古新基地ノー」を歯牙にもかけないではないか。
 
 日本はアメリカの属国なのか。沖縄は日米安保のゴミ捨て場か。憲法の番外地か。沖縄差別は許されるのか。
 
 しかしいま、いろんなところで、山城氏らの不当逮捕に対する抗議行動が起きている。東京でも国会内で抗議集会を開いた。アメリカの知識人たちも批判の声をあげている。
 
 沖縄県民はなおさらだ。県民の辺野古新基地建設に反対する運動は、安倍政権につぶされるどころか、ますます怒りがふくれあがっている。私たち沖縄は、こんな政権の無法・凶暴なやり方に負けるわけにはいかない。沖縄の闘いは正義の闘いだ。

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