全国注目の沖縄県知事選は激戦の末、辺野古新基地反対を訴えた玉城デニー氏が当選した。得票数は沖縄県知事選史上最多の39万6632票、相手候補に8万票以上の大差をつける圧勝だった。沖縄の民意は4年前に続き「辺野古新基地ノー」を鮮明にした。この選挙結果の意義は大きく、重い。新基地建設に反対して闘い続けてきた沖縄の人々、そして連帯して闘い続けてきた全国の人々の勝利だ。安倍政権はこの選挙結果を受け入れて、辺野古新基地建設を断念するべきである。
開票をまつ1室は支持者と報道陣であふれていた。社民、共産、社大3党と会派おきなわの県政与党の支援を受けた「オール沖縄」の候補、玉城デニー氏の当確が出て、集まった人々は喜びを爆発させた。デニー氏は人々とともに万歳をし、若者たちとカチャーシーを踊り、拍手と指笛につつまれた。花束が贈られ、喜びの乾杯をした。
デニー新知事はインタビューに答えるなどして、つぎのように話した。
「県民が認められない最たるものが辺野古新基地。県民の思いを政府に突きつけていきたい」。辺野古新基地建設は「われわれの民意に沿って政府が判断すればいいと思う」。「いま止めることが、未来の子どもたちにたいする責任世代の行動。体を張って、主張していく」
呉屋守將・ひやみかちうまんちゅの会会長はこう言った。「これからが勝負だ。団結してがんばろう」
選挙戦の最大の争点は、辺野古新基地の是非だった。出口調査の結果も、琉球新報、沖縄タイムスの選挙中の報道も、そのことをはっきりと示している。埋立承認撤回にたいする県民の支持も大きかった。デニー氏は「辺野古に新基地は絶対に造らせない」と正面から訴え、「戦争で奪われた土地は沖縄に返すべきだ」と沖縄の米軍基地全体に踏み込んだ。
一方佐喜真氏は、辺野古新基地建設への賛否は語らないままだった。安倍官邸と国政与党の組織的・全面的な支援を受け組織選を展開すれば、勝てるという計算だった。名護市長選のやり方そのままに、期日前投票に有権者を動員し、「携帯電話料金の引き下げ」など擬餌鉤(ぎじばり)で若ものをだます手法をとった。そもそも基地と共存して県民生活が豊かになるなら、全国自治体間で誘致合戦が起きているはずではないか。欺瞞的な「県民の暮らし最優先」も、審判を受けたことは明白だ。
前回知事選とは様変わりした今回の知事選だった。前回自主投票の公明党、独自候補を立てた維新の党が佐喜真氏を推薦した。公明党は10万票の集票力といわれ、維新は前回知事選で7万票弱を得た。この変化こそ、安倍政権・佐喜真陣営の最大のよりどころだったのだ。
オール沖縄の側も変化した。経済界の一部が脱落し、保革の確執も生じた。だが、翁長知事の影響もさることながら辺野古新基地建設反対の闘いは変わらずつづいたことが、結束を促した。
米軍基地の存在は新たな運動を生み出す。
9月、宜野湾市の緑ヶ丘保育園に米軍普天間基地のヘリから部品が落下した問題で、母親らが記者会見を開いて米軍基地を告発した。落下地点が1メートルほどずれていたら、子どもたちを直撃したかもしれない事態に、衝撃をうけた。米軍いいなりの日本政府に憤った。それ以前は基地を当然視していた母親たちの意識が変わった。「基地は命の危険と隣り合わせだ」と。辺野古新基地に反対して名護市民と交流した。
翁長知事は、よく言えば「孤高の知事」だった。必ずしも、県民に寄り添ってばかりいたわけではない。しかし、埋立承認撤回を表明し、辺野古新基地建設反対を全うしたことは間違いない。そうさせたのは、「撤回」を求めて県民広場前で座り込んだ市民をはじめとする、辺野古新基地建設反対を闘い抜く県民の運動の力である。3458票差で敗北した2月の名護市長選。その名護市でデニー氏は相手候補に1783票の差をつけた。差し引き、5241票の変化もそのことを物語っている。
つまり、名護市長選と沖縄県知事選の間には、埋め立て承認撤回があった。沖縄県政が戦う姿勢を見せ、現に工事は止まっている。このことが県民を鼓舞し、希望を抱かせ、新基地建設に反対する根強い民意を掘り起こした。ひろがりつつあった「あきらめ感」を一定程度払拭させることができた。その結果としての県知事選だったのだ。
このことを抜きに、今回の県知事選を理解することはできない。
「勝負はこれからだ」と呉屋氏は言った。たしかに、安倍政権には手痛い敗北に違いない。しかし「辺野古唯一」を変える気配もない。他方、安倍政権は終わりが約束された政権でもある。政権の前途は多難なのだ。
デニー新知事を誕生させたのが沖縄県民なら、安倍・自公政権を支えているのは「本土」の世論だ。「本土」の我々こそが、辺野古新基地建設反対の世論を広げよう。可能な人は、ゲート前で座り込もう。
玉城デニー新知事に聞いてほしい。「喜びも悲しみも、進むも退くも県民とともに」──そんな知事になってほしい。知事が県民とともに闘ってこそ、道は開けると思う。<初出・「沖縄を考える」http://kangaeru.okinawa>