玄間太郎著『起たんかね、おまんた─天明 越後柿崎一揆』(本の泉社、1400円+税)は、いまからさかのぼること230年前の江戸時代、 天明3年(1783年)にいまの新潟県上越市におきた「柿崎騒動」を掘り起こして小説にした。「おまんた」とは、「あなたたち」という意味だ。
物語は、東日本大震災が発生した2011年夏、東京の大集会、一揆の子孫たちがむしろ旗を立てて行進しているところから始まる。そして舞台は一転、柿崎一揆の現場へとタイムスリップ・・・。
東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県は日本有数のコメの産地として知られていた。しかし、大震災が浮かび上がらせたのは過疎、高齢化、疲弊した農業・農村だった。根底には、コメや農業では“飯が食えない”という日本社会の構造問題がある。 戦後、アメリカに追随して大資本、大都市中心の経済成長をはかってきた日本では、農業や漁業、東北地方はそれらへの労働力、食料供給地として差別と犠牲を強いられてきた。復興過程も、被災者の窮状に付け込む形で、漁業や農業の規制緩和を進めようという資本の論理が横行する。
柿崎の百姓たちは凶作つづきで、木の葉まで食べた。それでもお上は年貢の取立てをようしゃしない。一揆の首謀者は打ち首を覚悟しなければならない時代である。一揆の参画者たちは、家族の今後を案じ、恋人を思う。だが、困窮にあえぐ百姓たちを見捨てるわけにはいかない。彼らの思いが胸にしみる。
事が落着し、若い農民が言った。やがて、民、百姓の世の中がくる・・・と。あれから230年。今の世に、彼らの思いはどれだけ届いたのだろうか。まさに、「起たんかね、おまんた」なのだ。
気づくのが遅すぎました。
素敵な紹介、ありがとうございました。
ひきつづき次作歴史小説の準備に入っています。
星さんのご健闘を祈ります。