アメリカと日本政府が沖縄・普天間基地に強行配備した米軍垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、墜落などの危険性は本土でもかなり知られているが、低周波音の健康被害はほとんど知られていない。6月20日、東京都中野区の沖縄意見広告運動東京事務所での学習会で、渡嘉敷健・琉球大学准教授がこの問題を報告した。
渡嘉敷さんは、オスプレイの低周波音問題の危険性について、データに基づいて告発してきた。普天間基地に隣接する普天間第2小学校、名護市辺野古の沖縄工業高等専門学校、宜野座村などで低周波音を計測。最近ではオスプレイの訓練が激化する伊江島にも測定器を設置してデータを収集、論文や講演で訴えている。
データの収集で、オスプレイが作り出す低周波音は、防衛省の環境影響評価の基準値を上回るという重大な事実を明らかにした。それまでの米軍ヘリとは比べ物にならない大きな被害をもたらす。
沖縄ではこれまでも、住民が日常的に被害を受けている米軍機の騒音はきわめて深刻な問題だ。そしてオスプレイの低周波音は、いわば沖縄の騒音被害の新たな局面つくりだした。そこで、オスプレイの低周波音・健康被害の問題について沖縄の新聞、テレビが何度も報じることとなったのだ。
渡嘉敷さんは報告の中で、実験装置やオスプレイの飛行録画で低周波音を再現した。実際のオスプレイの音とは違っても、参加者が「体にバクバクくる感じがする」というほどの威力がある。
低周波音はエネルギーが大きく、物を動かす力がある。昨年10月のオスプレイ強行配備後、沖縄の人たちは「心臓にひびく」とか「家屋が揺れる」といった被害を訴え続けている。
渡嘉敷さんの報告をきいた参加者の感想。
「(オスプレイの)騒音や低周波音の問題で大事なのは、渡嘉敷先生が数字を出して環境基準を超えている、悪影響があると指摘していること。すごく力になる」
「低周波音は、お子さんとか病気の方たちが一番影響されると感じた」
「オスプレイの被害はこれからもっと出てくると思うが、(本土の)マスコミはあまり取り上げない。沖縄がすべて我慢し、犠牲が続いていくのは問題だ」
航空機の低周波音の問題は日本政府はきわめて軽視し、沖縄県も重視しているとはいえない。普天間飛行場の日米「騒音防止協定」でも低周波音にはふれていない。
安倍政権は名護市辺野古にオスプレイ用の新基地建設を対米公約した。そのため、安倍政権は辺野古沖の埋め立て許可を仲井真沖縄県知事に申請した。仲井真知事は埋め立て申請書の告示・縦覧を経て可否の判断をする。
オスプレイの低周波音の問題を直視しないで、新基地建設を許すことがあってはならない。渡嘉敷さんはこれまで蓄積してきたデータをもとに、意見を提出するつもりでいる。
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「連帯・共同21」はこれまで、オスプレイ・低周波音問題について以下の記事で取り上げてきた。
安保由紀子:オスプレイの「低周波音による健康被害」について勉強しました
安保由紀子:伊江島にオスプレイ!でーじなとぅしが(大変になっているけど)
星英雄:オスプレイはつくられてはいけない兵器なのだ〈沖縄レポート④〉
星英雄:苦難と闘いの伊江島を知ってほしい〈沖縄レポート②〉
星英雄:基地はいらない 差別の自覚、尊厳をかけたたたかいに〈沖縄レポート①〉