参院選は昨年総選挙につづいて自民党が圧勝した。その結果、自民党は衆院で295議席、参院で115議席、「1強体制」といわれる存在になった。安倍政権の長期化、同時に憲法改悪が政治日程に上ってくる可能性は否定できない。
自民党は選挙公約で、憲法9条を変えて自衛隊を国防軍にすることや、96条の憲法改正の発議要件を衆参の3分の2から過半数に緩和すること、「原発の再稼働」も盛り込んだ。 ただ、実際の選挙では、安倍首相らが争点化を避けて、ほとんど触れることはなかった。消費増税、負担増も語らず、ひたすら「アベノミクス」による「景気回復」の幻想を振りまいて選挙を乗り切ったのが実態だ。
投票率は、戦後3番目に低い52・61%。自民党は比例区で1846万票を獲得したが、日本の有権者総数のわずか18%にすぎない。今度の選挙結果をもって改憲や原発再稼動が容認されたとはとてもいえるものではない。
しかしそうではあっても、今回の参院選、昨年の衆院選の獲得議席が、政治を動かしていくのが現実だ。アメリカとともに海外で武力行使を可能にする集団的自衛権の解釈変更、96条をはじめとする憲法改悪が狙われることになる。
改憲に積極的な自民党、日本維新の会、みんなの党は、衆院では3分の2を占めているものの、参院では3分の2には届かなかった。今後、安倍政権の「政治力」とともに、公明党の動向は要注意だ。公明党は自衛隊を「合憲」とする改憲には応じる姿勢をみせている。
2つの国政選挙は、巨大改憲勢力を作り出した。それは憲法のことだけではない。このままでは、脱原発、格差是正、反TPP、普天間基地撤去など多くの国民の思いは届かない。対抗する、社会変革の大きな運動をつくりだしていくことが必要になっていると思う。
東北の被災地は、経済復興には程遠く、人々の生活再建はなお遠い。とりわけ福島では、東京電力福島第1原発事故でいまも15万人以上の人々が故郷を追われたままでいる。3・11後、原発に依存しない、新しい社会を求める気運がみなぎっていたように思う。
他者を犠牲にしない経済・社会のあり方は、TPP、格差、沖縄の基地問題にも共通する。日本国憲法がうたう基本的人権、平和に生きる権利の実現でもある。しかし、安倍政権は成長戦略に「原発の活用」を盛り込んで、「新たな日本社会」に敵対している。
残念なことに「護憲」、「脱原発」をかかげる政党は勢力が小さい。それぞれが生き残りをかけて自己の正当性を主張するのもわからないことではない。が、たとえば「さようなら原発1000万署名」のように、脱原発運動の勢いをそいだことは否めない。
だが、「自民党批判の受け皿」を競う”季節”は終わった。国政選挙はしばらくはなさそうだ。日本社会の基盤そのものを変える、社会を変革する大きな運動をつくり出さなければいけない。そのために市民と政党の連帯のあり方を、政党間の連帯の方法を模索、追求するときではないだろうか。