「損保9条の会」が9月8日、東京・中央区 月島で憲法改悪反対の講演会を開いた。今回で10回目の節目、安倍晋三首相の改憲策動とそれに反対する国民世論の対抗構図の中で、 五十嵐仁・法政大学大原社会問題研究所教授 が「自民党改憲草案と日本国憲法の意義」と題して講演した。
「損保9条の会」は、産業単位の「9条の会」のさきがけとして、損保産業に携わる従業員、代理店、OB・OGら有志の呼びかけで2005年6月に結成された。先日亡くなった品川正治・経済同友会終身幹事・全国革新懇代表世話人・元日本火災海上保険(現日本興亜損害保険)社長が1回目の結成記念講演をおこなっている。
五十嵐さんは、「自民党の改憲草案は、憲法の根本理念を変えるもので、改憲を名目にしたクーデター、反革命のようなものだ」と問題点を指摘した。
憲法の立憲主義は為政者を縛るものだが、自民党案の102条は「すべて国民は、この憲法を尊重しなければならない」と、逆に、国民を縛る条文になっている。改憲ルールを定めた96条の規定は、衆参の3分の2以上の賛成を、2分の1にハードルを下げる。国民主権や人類普遍の権利である基本的人権の否定。憲法前文と9条2項の書き換えで、国防軍を新設し、集団的自衛権の発動を可能にする。「緊急事態」の新設はナチスばりの「授権法」で、内閣は法律と同じものを勝手に制定できる、等々。
五十嵐さんは、しかし、日本は戦争ができない国でありつづけることが日本の存在価値を高め、武器をもたないことがかえって日本人の安全を保障している、と強調した。
最後に、改憲反対世論を大きくすることが決定的に重要だと、こう訴えた。
最近のマスコミはあてにならない。世論は1人1人の意見からなるので、世論を変えることは1人1人の意見を変えること。自分の意見をもって、周りにはたらきかけてほしい。
「はだしのゲン」の閲覧制限を、世論の批判の高まりが撤回させた。その結果、「はだしのゲン」は注目され増刷となり、「10倍返し」になった。
改憲論に対しても同じだ。若者と女性はエネルギーを発揮してほしい。高齢者は老後の楽しみのように、経験と知恵と持てる時間を生かして改憲のたくらみを打ち砕くために運動を大きく盛り上げてほしい。
五十嵐さんの講演は場内を沸かせ、参加者を励ました。
五十嵐さんの講演に先立って、損保9条の会の呼びかけ人の1人でもある歌手の太田真季さんが平和憲法と東日本大震災の被災者への思いを語り、そして熱唱した。語りも歌も参加者の心に染み入るようだった。
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当初の記事中、五十嵐仁・法政大学大原社会問題研究所所長としたのは、五十嵐仁・法政大学大原社会問題研究所教授の誤りでした。お詫びして訂正します。