みなさん、スラップ裁判をご存知でしょうか。SLAPP (スラップ )(Strategic Lawsuit Against Public Participation の略語)とは、直訳すれば、「市民参加に対する戦略的訴訟」。表現の自由・市民運動の自由に対する権力・資金力による弾圧を意味しています。一言で、恫喝訴訟ともいわれます。
この問題について当サイト「連帯・共同21」は6月に「鬼原悟:高江裁判で知るスラップ訴訟の危険」で報じています。本土では依然、あまり知られていないようですが、いま沖縄では大きな問題になっています。
この6月、福岡高裁那覇支部で「高江ヘリパッド訴訟」の控訴審判決がありました。沖縄県東村高江の米軍オスプレイ訓練用ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設に反対する住民に対し、国が「通行妨害」だと訴えた裁判で、住民の控訴を棄却する不当な判決でした。
住民側と弁護団は一貫して「反対運動を弾圧するために国が起こしたスラップ訴訟」だと、国と司法を厳しく批判。高江住民はすぐに最高裁に上告しました。
この裁判は、米軍のオスプレイも使用するヘリパッド建設に反対し、高江の住民らが座り込みなどをしたことが発端です。沖縄県最大の演習場で、ゲリラ戦の訓練などをする米軍北部訓練場がヘリパッドの建設予定地。高江の集落は6カ所のヘリパッドに取り囲まれてしまいます。そもそもは、日米両政府が合意した1996年SACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意に始まります。米軍北部訓練場の一部返還の条件とされたのが高江のヘリパッド建設なのです。
オスプレイは墜落事故を繰り返し、耐え難い大騒音と健康破壊の低周波音、爆風を巻き起こす。生活を守るために高江の住民は2007年7月から北部訓練場近くで座り込みを始めました。本来なら、ごく普通の非暴力的な基地建設反対運動です。憲法が保障する言論・表現活動の一環なのです。
ところが防衛省沖縄防衛局は、2008年11月に仮処分を申請し、2010年1月に高江の住民を被告として、那覇地裁に訴訟を起こしました。
実に異常な裁判です。昨年3月、1審判決について沖縄タイムスはこういいました。「住民が国を訴えたのではない。国が住民を訴えたのである。判決の中身をうんぬんする前に、そのことの異常さを指摘しておきたい」。
そしてこう続けています。「憲法21条で保障された『言論・表現の自由』とは、権力に対して異論を唱える自由、のことである。それが権力の乱用を防止し、民主主義社会を活性化する」。
6月の控訴審判決について琉球新報社説はこう批判しています。「今訴訟は、工事を加速したい国が、生活環境と自然を守る粘り強い住民運動をけん制する目的で強硬手段に出たと見るのが自然だ」。「基本的人権の尊重を重視する憲法への挑戦にほかならない」。
スラップ裁判は、アメリカでは多くの州で禁止する法律が作られています。日本で、政府のやることに反対することは許さないという国家権力の市民弾圧を野放しにしていいはずはありません。
高江住民の上告を受理するよう最高裁に求める署名活動にご協力をお願いします。