学生時代からこれまでずっと、わたしにとってとても大切な先輩2人を「しのぶ会」に出席するため、札幌に行った。夜、着いたばかりのホテルから食事どころを探しに外に出ると、太鼓の音がきこえてきた。その音に誘われて近づいていくにつれ、「再稼動反対!」「泊もやめろ」「大間も中止、幌延もやめろ」の声が響いてきた。 「そうだ、金曜行動だ」。そのまま北海道庁前で、ほぼ2時間、老若男女の脱原発の訴えをきいた。
─何が安全か。福島はいまだに手がつけられない状況だ。海に汚染水を流し、海が吸収していっている。
─安倍首相の発言、行動は国民の求める回答になっていない。
福島の現状と政府への批判。そして北海道知事にたいしても厳しい批判が続く。
─知事の仕事は道民のいのちと健康を守ることではないか。(高橋知事は)失格だ。ならば、道民の力で泊原発を廃炉にしていく決心だ。
─知事が原発いらないというまであきらめない。声をあげつづけることが社会を変え、世界を変えることにつながる。
農業王国北海道に原発はいらない。「食料基地の北海道が汚染されたら日本はどうなる」。 最近起きた、北海道電力泊原発3号機の制御用地震計の停止事故についての調査報告もあった。 原発と秘密保全法のつながりを指摘する発言も。「秘密保全法は民主主義の破壊だ。反原発運動も情報も統制され、暗黒社会になる」。
インド人の男性が発言した。
事故が起きたが、自分の家族だけ連れてインドに帰ることはできなかった。福島の人たちを見過ごせない。子供たちが外で遊べない、故郷を失った人々の心がどれだけ痛むか知っている。子供と故郷のために、人間らしさのために、声をあげよう。
参加者に聞いてみた。勤めを終えた後に、今回が40回目くらいの参加だという川村敦子(42)さん。 「原発は福島の事故が起きる前は安全だと思っていたけど、事故が起きたら人間の手に負えないことがわかった。現状でオリンピックだなんて恥ずかしい」
「泊原発いらないっ しょ! 意 見広告の会」の井上敦子さん。「関心があっても家庭や仕事など日常のことがあって来られない方がたくさんいる。ここに参加している人の背後には原発反対の多くの市民がいるのです」
9月27日夜、反原発北海道連合と市民の65回目の反原発抗議行動は参加者が100人を超えた。いまや脱原発は、国民多数の声だ。しかし安倍政権はこれに逆行する。政治の場でも脱原発の多数派を形成するには、何が必要なのか。
冷え込む札幌の夜にそんなことを思った。