【福島・沖縄からの通信】

稲嶺進:すべては子どもたちの未来のために、すべては未来の名護市のために ウチナーンチュの誇りが新しいまちづくりを進める

 

 来年1月19日投開票の名護市長選挙は米軍普天間基地移設問題を左右するといわれている。1997年12月の市民投票で基地建設に「ノー」の意思表示をした名護市民は,前回2010年の市長選挙ではじめて、基地建設にきっぱりと反対する稲嶺進市長を誕生させた。「辺野古の海にも陸にも新たな基地は造らせない」と新基地建設に強く反対し、基地にたよらないまちづくりを進めてきた稲嶺市長は「まだやり残したことがある」と来年の市長選に立候補することを表明した。稲嶺市長は多忙ななかの11月11日、「連帯・共同21」のインタビューに応じ、新基地建設反対の思いや子どもたちの未来のためのまちづくりなどについて語った。(文責:星英雄)

新基地は生活、人権問題だ

━━稲嶺市長が誕生してほぼ4年。最初に、どのような思いで基地問題に向き合ってこられたのか、お話しください。

 普天間飛行場の移設先が名護に決定され、推進されようとしてきた中で、反対するのは革新、賛成するのは保守とよくいわれました。しかし、われわれ名護市民、沖縄県民にとっては政治的課題というより、そこに住んでいるものとして生活に直接かかわる問題なのです。

 辺野古に座り込みをしているおじい、おばあたちは「自分たちは保守だから、革新だからと反対しているわけではない。新聞に出る政党の議論は自分たちの頭の上でされている。生活をみてくれていない感じがする」と話していたのです。それを聞くにつけ、基地問題は生活や自然を守ること、人権の問題だという思いを強くしました。「辺野古の海にも陸にも新たな基地は造らせない」というわたしの言葉はそういうところから出てきたものです。

「いまの小中学生が大人になったころの名護市について考えないと」と話す稲嶺進市長(名護市長室で)

「いまの小中学生が大人になったころの名護市について考えないと」と話す稲嶺進市長(名護市長室で)

「振興策の恩恵」は幻だった

━━「海にも陸にも新たな基地は造らせない」といってきた市長の姿勢が、普天間基地の辺野古への移設反対で、沖縄全体をさらに結束させたと評価されています。名護市民の意識の変化、支えも大きいのではないでしょうか。

 わたしたちの生活の中に、自治体財政の中に構造的な差別が組み込まれている中で、市民の一部には基地に頼らないとやっていけないという思いがあったのかもしれません。日本政府は閉塞感の打破とか、基地とはリンクしないなどといって、北部振興策をふくめ相当な国費を投入してきた。名護だけでも600億円の関係予算が投入された。

 しかし、市民生活は向上したのかと問えば、実感できるという方はごく1部に過ぎないでしょう。 大きい工事は本土のゼネコンがとり、下請けになると中部や南部に流れる。名護の小さなところまでは回ってこない。国からのカネは利権がらみで1部の人たちにしか流れていかない。市民生活には還元されないことがわかってきたのです。

 結局、普通の市民にとっては、基地という負の遺産だけを背負わされる危険がある。政府の「振興策の恩恵」というのは幻で、実体はなかった。この問題は、市民が基地にたいする考えを変えるきっかけになったと思います。

4年の到達点 名護市の頑張り、ウチナーンチュの誇り

 市民投票後に3代続いた市長の基地容認の政策は、国の大きな圧力の下ですすめられてきたものです。しかし、普天間飛行場の辺野古への移設を拒否する私が市長に就任し、名護市という小さな自治体の頑張りが国の普天間移設を止めている。まだゼロ(撤回)になったわけではないが、止めている。

 そのことが、県内すべての自治体が反対決議をし、オール沖縄が移設断念を求める「建白書」につながったと思う。権力がどんなに力を振りかざしてきても、それに抵抗するウチナーンチュの誇りが、いやなものはいやだと明確に打ち出すことが、止めたのです。これが、この4年間の流れであり到達点だと思います。024  トリミング 2

子育て、教育環境を整備

━━辺野古への移設に反対し、基地に頼らないまちづくりを打ち出したことがさまざまなアイディアを生み、それが名護市の施策となって実施されるようになっているのだと思います。

 米軍再編交付金とか、かなりの国の予算が投入されてきたが、それはハード(箱物)に消えて、子どもたちの未来のための予算には回されてこなかった。 わたしは子育て、教育環境の整備に力を入れてきましたが、かなりの改善、前進があったと思う。

 まず無駄を省く、そして職員に知恵を出してくれ、財源も捻出してくれと注文し、みんなで工夫を重ねてきた。職員を刺激する意味で「ガチンコ市長塾」、政策研究チームをスタートさせ、職員たちに考えてもらう。役所の内側から変わっていこうとすることを示してきたつもりです。それがいい結果につながっていると思います。

未来のためにいまできること

━━待機児童解消策、こども夢基金の創設など、「子どもの未来」のための政策を積極的にすすめていることに市民は共感しているようです。

 これから10年、20年後、いまの小中学生が大人になったころの名護市はどういう名護市になっているだろうかと思うとき、いまできることは何かということから考えはじめないといけない。

 辺野古の問題もそうです。保障金はいつまでもあるわけではない。限られた時間、限られた人、つまり、保障金を受け取るのはいまの大人たちで、実際に基地ができて被害を受けたり負担するのはいまの子どもたちです。

 子どもたちがたくましく1人前の社会人として成長していくためには、環境をしっかり整え、夢とか挑戦とか感動とか、子どもたち自身が体感できるようにする。「頑張ってよかった、また頑張ろう」につながる施策を考えていかないといけないと思います。あらゆる施策は「すべては子どもたちの未来のために すべては未来の名護市のために」という考えに基づいています。

健全な財政運営で予算を増やす

━━政府は名護市を屈服させようとして米軍再編交付金を削ったわけですが、健全な財政運営で市民のための施策は従来に増して進められているということですね。

  市の行財政改革も大きいと思います。再編交付金を削られても、逆に予算総額は増やすことができた。それに伴って建設事業費も増やすことができました。財政調整基金とか公共施設整備基金とか基金を積み上げて、3倍に増えた。それをバックに、新しい事業を展開できることになったのです。それが予算が増える仕組みにもなっています。

━━本日はご多忙にもかかわらず、貴重な時間を割いていただいてありがとうございました。

 

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