青木美穂さん(35)は、名護市に移り住んでとても喜んでいる。5歳の女の子を預けている保育園が気に入っているからだ。「先生たちは子どもの面倒をきちんと見てくれるし、すごくよかったと思っています」。夕方、娘を迎えにいっても「楽しいからまだ帰りたくない」といわれることもある。
青木さんはとくに、子どもをすぐに保育園に入れることができたことに感謝している。3年前の9月、夫の転勤で名護市に越してきて、すぐ、仕事も保育所も探した。母親が働こうとした場合、会社の面接で、子供が具合悪くなったとき、だれが子どもの世話をするかときかれる。保育所に子どもを預けようとすれば働いていることが条件になる。つまり、働き口も保育所も容易にはみつからない。都市部ではたくさんの待機児童がいて、順番待ちになる。ところが、名護市に引越してきた翌年の4月には子どもを「星のしずく保育園」に預けることができたのだ。
名護市の保育園事情はどうなっているのか。星のしずく保育園園長の宮城泉さん(40)は、こう話す。 「それまでの名護市では、待機児童はあまりにも多かったけれど、いまの稲嶺進市長になって待機児童問題の解決に積極的に取り組んできた。保育所も定員もずいぶんと増えてきました」
実際、名護市の保育所の定員はびっくりするほど増えている。稲嶺市政になってからことし4月までに577人増えた。保育所定員の伸び率は31%増。沖縄県内で1番の増加率だ。
県都那覇市と比べても、名護市の取り組みは抜群であることがわかる。那覇市は人口31万人、名護市は6万人。しかし、認可保育所に入る子どもたちの数は、名護市は那覇市の3倍もいる。当然、名護市の待機児童数は目に見えて減ってきた。
稲嶺市政の待機児童解消の取り組みの中で誕生したのが星のしずく保育園だ。宮城園長は当時をこう振り返る。「当初、稲嶺市長がどんな社会福祉を考えているかよくわからなかった。でも、待機児童を解消したいという市長の強い思いがあり、やはり何とかしないといけないと考えてきたわたしたちの思いと一致しました。そこで、新しい保育所をつくってはどうかと市長に提案し、実現したのが星のしずく保育園です。待機児童の解消は名護市としても新しい試みだったと思うけど、やるって決めたらやり通す。ぶれない人です、稲嶺市長は」
まだある。稲嶺市政は認可外(民間)保育所も増やした。そのための財政負担は年間23億円。決して小さな額ではない。やるかやらないか。市長の考えがはっきりと現れるところでもある。
市民の保育料の負担軽減にも取り組んでいる。2人目の子どもが、保育所に入る場合は保育料は半額に、3人目の子どもは無料にした。沖縄にはあまり例がなく、市としては名護市がはじめて導入したものだ。 保育所に入れない子どもたちは、これまではおじい、おばあに預かってもらった。それが今では様変わりといえるほどになった。
ただ、保育所の受け入れがひろがると、潜在的待機児童が表面化してくる。待機児童「0」は容易なことではないが、そこに向かって名護市は保育の量も質もいっそうの向上をめざしている。
名護市は、稲嶺市長になってから副市長を1人減らし、その予算を新しくつくった「こども夢基金」に積み立ててきた。「すべては子どもたちの未来のために すべては未来の名護市のために」という市長の考えが子ども政策に貫かれている。
宮城園長はこう話す。「名護市は子どもを生んで安心して育ててもらえるまちになってきていると思う」