【連帯・社会像】

星英雄:東京と名護を結ぶもの 強権にたいする抵抗と住民自治

 東京都知事選がすぐそこに迫ってきた。すでに立候補を表明した前日弁連会長の宇都宮けんじ氏のほか、自民党政権の厚生労働相だった舛添要一氏、そして元首相の細川護熙氏の意向も取りざたされている。都知事選で何が問われるべきだろうか。

 都知事選の争点はまず、猪瀬前知事が徳洲会から無利子・無担保で5000万円借りた問題だ。東京電力病院を買収する思惑の徳洲会に猪瀬氏が便宜をはかったという、贈収賄の疑いが浮上している。市民団体が東京地検特捜部に「闇献金」を告発し、受理された。

 猪瀬「闇献金」問題はだれのための都政かを問う、都政の根本問題にほかならない。それは、徳洲会と猪瀬前知事との関係よりも、石原元都知事と徳洲会の関係が深いから、というだけではない。13年余の石原「独裁」都政の下で進行したのは、たった1メートルの道路に1億円かけるという東京外郭環状道路や首都圏中央連絡自動車道、羽田空港の国際化など、巨額の税金を投入したグローバル大企業のための大型開発である。自民党政治が金権・腐敗にまみれたのと同じ構造だ。石原都政は以前から「利権とカネまみれ」と指摘され、猪瀬「闇献金」問題は氷山の一角に過ぎないことをうかがわせる。

 大型開発を推進する一方で、寝たきり高齢者への福祉手当切り捨て、福祉施設の削減と福祉の市場化が進められた。特別養護老人ホームへの待機者は4万人を超える。都政版新自由主義が横行したのだ。

 いま都民は、貧困・格差・雇用の問題、福祉、防災まちづくり、脱原発、教育の問題等々に直面している。政策実現のために都民の税金を、何に、どう使うか。どの問題も根底にあるのは住民・都民参加の都政の実現、都政の民主化だ。政策の実現と都民の意向を切り離すことはできない。

 「都政を都民の手に取り戻そう、都政に民主主義を取り戻すためにいっしょに闘おう」。住民参加、都政の民主化を訴えるのは宇都宮氏1人だ。

 1967年に誕生した美濃部・革新都政もそうだった。美濃部氏は「都民不在の都政」から「都民のための都政」への転換を掲げ、当選後は都民との対話集会を重ねた。「社会的弱者を救済することは地方自治体の最大の責務」として、70歳以上の老人医療費無料化など福祉事業に力を注いだ。

 美濃部・革新都政以後の都政は一変した。自民党政権の意向に沿う都政が続き、都民の切実な声は無視されてきた。そしていま安倍政権が存在する。秘密保護法を強行成立させ、原発再稼動・原発輸出、国家主義的な教育を推進し、憲法改悪をねらう。「世界で一番企業が活動しやすい国」をめざすと宣言し、非正規雇用者は1964万人、過去最多を記録している(昨年11月統計)。

 自民党政権で大臣を務め自民党の支援で出馬する舛添氏に期待できないことは明白だ。東京佐川急便から1億円借り入れ疑惑にふたをしたまま退陣した元首相の細川氏。細川政権の「経済的規制は原則自由・例外規制、社会的規制も不断に見直す」という政策は、日本の新自由主義「改革」の先駆けであった。都民の代表にふさわしくないのはもちろんだ。

 美濃部都政以降、都民に背を向ける都政と政府に抗して、運動は拡がってきた。保育所の増設を求め、大型道路に反対し、環境保護を訴え、教育の国家主義的統制に反対する等々の運動がある。そして宇都宮氏が依拠する地域の人々の勝手連は都内に50を超える。

 沖縄──。名護市長選は12日告示、19日投開票、都知事選に先行する。名護市民には強権にたいする抵抗と闘いの歴史がある。「権力に対する抵抗はウチナーンチュの誇りだ」と稲嶺進名護市長は語る。

 米軍普天間基地の名護市辺野古への移設が浮上した直後の1997年12月、名護市民投票がおこなわれた。その結果、移設反対が勝利 した。しかし、日本政府は権力と札束で名護を抑圧、移設容認派の市長が3代つづいた。初めて移設に反対する稲嶺進市長が誕生したのは4年前、市民投票から12年も後のことである。

 だが、それでも日本政府は名護の民意を尊重しない。デモをテロと見なして、エジプトの軍事クーデター政権は市民を武力で弾圧している。安倍・自民党にも、デモをテロと見なす思想が脈打ち、沖縄・名護に敵対する。アメリカの顔色をうかがう安倍政権は、力ずくで辺野古に新基地をおしつけようとしている。安倍政権の尻馬に乗って、末松文信前県議は新基地推進の立場を鮮明にして立候補する。しかし、この「新しい琉球処分」ともいうべき、沖縄に対する差別と犠牲を名護市民は拒否している。

 いま、名護・沖縄の人々は「沖縄の自己決定権」を求めてやまない。

 1月8日、名護と東京の2つの集会は大いに沸いた。稲嶺氏は「名護市長選挙は、名護市だけの問題ではない。これからの日本の在り方をも問う」と訴え、宇都宮氏は「全国民が注視する名護市長選挙と東京都知事選挙は、日本の将来を決める戦いだ」と呼びかけた。2人は期せずして一致した。

 名護市長選も東京都知事選も、ゴールまではあとわずかしかない。決めるのは強権にあらがい、闘う主権者──名護市民・東京都民だ。

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