私は埼玉県川口市に住んでいます。新聞の埼玉版には「川口署は○○日、無職女性(75歳)が現金800万円をだまし取られる被害にあったと発表した。同署によると…」などの記事がこれまでに何度も掲載されました。いわゆるオレオレ詐欺などの特殊詐欺に騙される側の金額の大きさや騙す側の巧妙な手口に驚いてしまうことが何度かありました。
私は一昨年に定年退職し、自宅の固定電話を受けることが数多くなりました。たまたま私が電話口に出た事例ですが、「他県に住む長男の居住都市と名前を告げ、『その日突然に喉の調子がおかしくなり、近所の医院に行ったところ、大病院での精査が必要と言われた。明日は大学の病院に行って診てもらうが、喉の手術になるかも知れない』と言うのです。ここまで私は電話の内容をすっかり信用していました。電話の声は長男のいつもの声とは全く異なっていたのですが、『喉の手術になるかもしれない』とのフレーズに騙されてしまったのです。
私は心配になり、長男の共働きの嫁の名前を出し、翌日の手術の付き添いは大丈夫なのかと尋ねました。その途端に電話は一方的に切られてしまいました。不審に思って息子の携帯電話に連絡したところ、『風邪気味で喉の調子は悪いが、病院に行くほどのことではない』と大笑いされてしまいました。私は消費者団体で働いていた経過もあり、『特殊詐欺に騙されることはないだろう』と思っていたのですが、実際のところは電話口で簡単に騙されてしまいました。この時はたまたま実被害にいたらなかったのですが、オレオレ詐欺などの特殊詐欺は身の回りにいとも簡単に登場することを実感しました。
警視庁のまとめでは、日本国の特殊詐欺の総額は2013年度分で487億円になり、そのうちオレオレ詐欺は約170億円にもなっています。これまでの10年間では最高額の被害金額だった2004年当時の水準に並んでいます。また、埼玉県警のまとめでは、私の住む埼玉県の2013年度のオレオレ詐欺被害は596件約16億円となり、全国被害金額の約9%を占めています。この596件から詐欺未遂の76件を除いた520件の平均被害額が計算上は308万円となります。私の様に公的年金を受ける身になるとこの数字は実に大きいのです。埼玉県のオレオレ詐欺被害者は2013年度の場合に60歳以上が93.7%、そのうち女性が4人中3人を占めるとのことです。
手を替え品を替え高齢者に押し寄せるこの卑劣な犯罪を、何としても減らす必要があります。住民として県行政や県警のしっかりした対応を求めることと併せて、消費者として騙されないための経験や方策を共有化する必要があります。そのために消費者庁の働きぶりにも期待したいと思います。また、私の場合は身近な存在として「埼玉消費者被害をなくす会」の取組にも協力していきたいと思います。