「フクシマを忘れない!さようなら原発3.15脱原発集会」の参加者5500人(主催者)が15日、東京・日比谷野外音楽堂を埋め尽くし、あふれた。会場でのスピーチ(要旨)をお届けしたい。(星英雄)
武藤類子さん(ハイロアクション福島)
福島もいま、雪解けの季節です。楽しみだった山菜も今年は食べることができるかどうか。ささやかな喜びが悲しみに変わって3年の月日が流れました。原発事故の収束はほど遠く、被害は形を変えながら拡大しています。今でも空へ海へ放射性物質は大量に流れ出ています。4号機の燃料取り出し作業現場は、毎時90マイクロシーベルト。作業員の被曝と賃金搾取が深刻な問題になっています。
除染で出た放射性廃棄物は大きな袋に詰められ、田畑に道沿いに山積みにされています。18歳以下の子どもたちの甲状腺検査は26万人中75人が甲状腺ガンまたはガンの疑いです。学校給食は多くの自治体で地産地消に戻されています。帰還政策のなかで、学校も元の場所に戻されています。先の見えない仮設住宅では、ストレスを溜め込み、抑うつ状態が蔓延しています。福島県の災害関連死は津波の犠牲者を上回りました。
切実な声はなかなか報道されず、被害は無視され、矮小化され、必要な救済は行われません。学校で新たな放射能の安全キャンペーンが流布されていきます。国と東電の責任を問う告訴、告発は全員不起訴になりました。人々は疲れ果て、あきらめ、ものいわぬ民にされていきます。これが福島の現実です。3・11は決して記念日ではなく、いまも続いています。
忘れたい、忘れるものか、のせめぎあいのなかで、理不尽な被害者であることを思い起こさなければなりません。いま福島で起きている人権侵害は日本のどこでも起こりうると思います。原発事故から3年、いま私たちに問われているものはなんだろう・・・
大江健三郎さん(作家)
原子力規制委員会が川内原発の再稼動を決定して安倍首相は力を得ているそうです。しかし首相ではなく、その土地の人たちが決めることです。
安倍首相は責任という言葉が好きですが、責任の取り方は2つの意味があります。1つは、自分がやろうとした計画がうまくいかなかったから責任を取る、やめることです。もう1つは、成功するかどうかではなく、非常に困難だがどうしても責任を取らなければ、次の世代の子どもたちに申しわけが立たないと考えています。
次の責任を取るねらいが成功するかどうかわからないが、いま現在その運動をつづけ、あきらめないで、残りの人生を全うしたいと思っています。
澤地久枝さん(作家)
安倍内閣は、私たちみんなの気持ちと反対のことを次々に出してくるのはどういうことか。なによりも腹が立つのは、福島をこの3年間、完全に見放して忘れようとしていることです。
この国の総理大臣はオリンピックを決める国際会議で、汚染水は完全なコントロール下にあると、真っ赤なうそをつきました。福島を救えないで、なぜ東京オリンピックがあるのか。この国は世直しをしないとだめだ、原発をただちにやめなければだめだという人が増えていけば世の中は変わるし、変わらないと福島を救えない。
いまの若い人たちはだめだだめだといってきたけれど、若い人たちはユニークな試みで、いまの政治はおかしい、原発はもうだめだと言い出しているじゃありませんか。みんな世代を超えて、男と女の違いを超えて、原発をやめよう。再稼動ではなく、原発を捨てるといえばいいんです。
秋山豊寛さん(元宇宙飛行士・有機農業者)
福島で18年ほど椎茸農家をやっていました。もう福島では椎茸はできません。原木には放射性物質が濃縮されて入っているんです。福島は、忘れないではなく、現在進行形です。東京も関東もとても危険な地域になりつつあるんです。
福島の問題でだれが責任をとったんですか。私たちが責任をとることは、未来に対して何ができるかです。先日、70代の仲間で古希の会をつくりました。もう先がないのだから、どういう生き方をするか、このことによって未来に何か貢献できるかもしれない。そんな思いを誓い合いました。
原発の再稼動を進める人たちに思い知らせ、恐怖させよう。与党の幹事長はデモなどをテロだといいました。彼らが政策でやっていることこそ、テロ以外の何ものでもない。そういう社会を変えましょう。つぶやきを声に、声を行動にしましょう。
なすびさん(被ばく労働を考えるネットワーク)
収束作業や除染作業は、被曝を前提とした労働であることが最大の問題です。被曝労働は労働者がある割合で死ぬことを前提にした労働です。これを非人間的労働といわずしてなんというのか。
私たちはそういう人たちを犠牲にする社会を選びとったのです。ですから、収束作業を急げとか、廃炉作業を加速しろとか、もれた汚染水をすぐに回収しろとかいわないでほしい。労働者の安全を第1として、慎重に回収しろ、作業しろと要求してほしい。
収束作業と除染作業の7割は福島の人です。原発事故で故郷をうばわれ、財産を奪われ、家族を失った福島の人たちにこういう仕事を押し付けているのが私たちの社会の現実です。
脱原発は再稼動させない、すべての原発を即時廃炉にするだけでありません。誰かを犠牲にして経済や社会が発展していく社会を私たちは拒否する。それが脱原発の運動ではないでしょうか。
松下照幸さん(原子力発電に反対する福井県民会議幹事)
再稼動は立地地域の経済そのものです。本音はみんな、脱原発なんです。原発は怖いということはみんな知っています。しかし、なくなったらどうなるという2つの思いで揺れているんです。
ぼくらは経済の問題を意識しています。美浜町は変わりつつあります。美浜町でも再生可能エネルギーに取り組みはじめました。美浜町は脱原発といわなくても、脱原発せざるをえない状況にあります。改正原子炉等規制法により、原則40年でとめることが決まっているからです。美浜1、2号機は40年を超え、3号機は38年になる。美浜町は脱原発をどうするかがいま問われる状況になっています。
鎌田慧さん(ルポライター)
いま日本は戦争状態にあるといって過言ではないと思います。避難、帰還、訓練という言葉が飛び交っています。かつて防空演習がありました。戦争をするから防空演習がある。
原発が再稼動しなければ避難訓練をしなくていいし、避難道路もなくていい。いま福島は空襲を受けていると同じじゃないですか。16万人が逃げ回っている。これからどういう被曝するかわからない。被曝労働者が火を消していると同じです。安倍首相はそういう戦争状態にしています。再稼動は戦争状態と同じです。
細川首相、小泉首相、鳩山首相、菅首相、それから野田首相も最後は脱原発になりました。5人の首相がもうやめようといっています。これは厭戦気分です。戦争やめようというのと同じです。そういう時代に入っています。それは私たちの反対の声が強かったからです。私たちはこの3年間、徹底的に闘ってきました。
保守層にも脱原発の声が広がり、産業界にも新しいエネルギーを求める動きがはじまっています。世の中は変わってきました。命よりカネでなく、カネより命という価値観をつくってきました。
3月28日前後に原子力規制委員会は川内原発を認めようとしています。このときは国会周辺に集まってください。もうやめよう、本当にやめようという声を広げていきましょう。