6月23日は慰霊の日だ。沖縄では、アジア・太平洋戦争で唯一、一般住民を巻き込んだ激しい地上戦が戦われ、住民9万人以上を含む20万人が戦死したといわれる。その沖縄戦でなくなった人々を慰霊し、平和を祈る日として沖縄県は23日を休日に指定している。
慰霊の日の前日の22日、那覇市から北へ85kmの今帰仁村(なきじんそん)で、地元の青年たちが中心になって「第5回平和と音楽の集い」を開いた。「戦没者のご冥福を祈るとともに」「平和について考える機会としたい」(藤原大気・実行委員長)というものだ。子どもたちの歌やオカリナの演奏もあれば、憲法についての講演もある。小さい子どもたちや若い男女の「楽しむ」自由な雰囲気もよかった。
会場となった村の中央公民館屋内は、沖縄戦や米軍基地に関する展示があった。「せんそうは 人のいのちを うばうんだ」と、小学生の「平和の俳句」の数々がならんでいる。切り絵も張られている。「みんなの平和はみんなが決める」とこれも小学生。どの切り絵にも、小学生のそれぞれの平和への思いが書かれている。
與那嶺幸人村長がふらりと会場にやってきて参加者を喜ばせた。沖縄戦の展示パネルに見入っている與那嶺村長にたずねたら、即座に答えてくれた。「本当は村がやるべきこと。平和について考えるみなさんががんばっていることを応援したい」
炎天下の屋外で、参加者のスピーチが始まった。コーヒー店を営む女性は、オスプレイの配備をきっかけに、自分の中で眠り続けていた平和の意識が動いたと話した。新しい基地はいらない。カネでウチナーンチュの魂を売ってはならない、と訴えた女性はニュー・ウェーブ・トゥ・ホープの一員だ。
沖縄の大学を休学し、本土を講演行脚して沖縄の「犠牲」を訴えている知念優幸さんのメッセージも紹介された。大学生の1人は、映画「標的の村」に衝撃を受けた、沖縄の現実をみんなに知ってもらいたい、と語った。オスプレイの着陸帯建設に反対する高江の住民は、1人1人が自分たちのやり方でアクションを起こすことが解決につながっていく、と話した。
大学生たちが朗読劇で、世界の憲法誕生の歴史を説き、齋藤祐介弁護士が憲法について講演した。立憲主義は人権を保障するために権力・政府をしばるもの。政府や国会を縛っている憲法を変えずに法律でやろうとするのは立憲主義に反するクーデターだと、解釈改憲で集団的自衛権を行使しようとする安倍首相らを批判した。
参加者から質問や意見があいついだ。安倍首相がやってることの後片付けをしなければいけない世代という若い女性は、それをやめさせるにはどうしたらいいかと。齋藤弁護士は選挙権をしっかり行使すること、自分の考えで選ぶこと、と回答。参加者各人、自分の言葉で思いして会場は沸いた。実行委員会の藤原教子さんが私にいった。「政治は生活のなかにあるんだよう」と。
少し驚いたことがある。村長の来訪もそうだが、スーパー、建設会社、植木店、自動車学校等々の14の企業などが協賛の形で支えている。集いはまだ住民の小さな営みだが、この村で着実に存在感を増している。沖縄戦に思いを馳せ、これからの平和について考える、確かな「運動の広がり」がここ今帰仁村にあると思った。