【福島・沖縄からの通信】

星英雄:慰霊の日にみた沖縄戦と米軍基地問題

 沖縄戦の組織的な戦闘が終わった日という6月23日、沖縄県立名護高校内の「南燈慰霊之塔」前広場で、慰霊祭が行われた。南燈慰霊之塔には、旧制県立第三中等学校、第三高等女学校の沖縄戦戦没者らがまつられている。

 慰霊祭は、「名護市に新たな基地建設の動きがある中で、あらためて南燈慰霊之塔に眠る御霊への追悼と同時に、戦争をおこさない平和の発信を強めねばなりません」という「開式の辞」ではじまった。1分間の黙祷と僧侶の読経に続いて南燈同窓会会長、名護高校校長、生徒会長の3人が追悼の辞を述べた。本土防衛の捨石にされたという沖縄戦の犠牲者を慰霊することと、平和を希求し、基地建設に反対することとが切り離せない問題であることがよくわかる。安倍首相が推進しようとしている日本の進路に強く異議を申し立てる内容だった。IMG_5881

 戦没者のご遺族が年を重ね、参列者の半数以上が名護高校生だった。式の前に、宮城仁校長が説明してくれた。慰霊祭にちなみ、毎年、特設ロング・ホームルームをやっている。去年は戦争体験者を招いて講演をきいた。ことしは「一番やりたかったこと」というテーマで、生徒が劇をつくった。若くして亡くなった先輩たちが、いまの子供たちの体を借りて学園生活を楽しむという設定。台本以外は、配役などすべて生徒が考えたという。「若い感覚がよくあらわれていて、感激した」。

 この日は糸満市摩文仁の平和祈念公園で県主催の沖縄全戦没者追悼式も開かれた。仲井間知事は「沖縄の基地負担を大幅に削減し・・・」と「平和宣言」を読み上げ、安倍首相は「基地の負担をあたうる限り軽くするため、沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら・・・」と発言した。実際は、名護市・辺野古に新しい米軍基地建設を強行しようとしているにもかかわらず。沖縄戦戦没者の慰霊と新基地建設がどのようにして両立できるのか。首相と知事の発言は、名護高校での追悼の辞とは対極にあり、「沖縄の心」とはまるで別物だ。

 南燈慰霊之塔慰霊祭の追悼の辞の一部を紹介したい。

 松田憲和・南燈同窓会会長

 昭和20年4月、米軍の沖縄本島上陸により沖縄は我が国唯一の地上戦が行われ、全県民が戦火に巻き込まれ、20万以上の尊い命が失われてしまいました。

 先輩たちは学業半ば、わずか2カ月の軍事訓練で、学徒隊として鉄血勤皇隊、通信隊、第3遊撃隊、従軍看護婦として前線へ繰り出されました。当時の学徒隊の年齢は、いまの中学1年生から高校1,2年生に該当します。

 戦後69年が経過した今日、戦争を知らない国民が増加しているいまこそ私たちは戦争の悲惨さ、残酷さを次世代に語り継がねばなりません。IMG_5892

 基地縮小問題、普天間飛行場の移設問題は県民の意思とは裏腹で、先島への自衛隊配備、普天間へのオスプレイ配備等、基地強化はますますエスカレートしています。文部科学省の教科書検定における集団自決削除問題、教育基本法の改正、国民投票法、平和憲法改正問題等きな臭い話ばかりで、いつか来た道に逆戻りするのではと不安が募ります。

 平和を希求する私たちは現状を肯定することなく、過去の過ちを2度と繰り返さないよう固く誓い、戦争反対を強く訴えます。それが無念の思いで亡くなった諸先輩方の御霊の供養だと思います。

宮城仁・名護高等学校校長

 われわれの平和への願いは踏みにじられたままです。2年前、沖縄が日本の施政権と切り離されたサンフランシスコ講和条約を締結した同じ日に、政府は主権回復の日として式典を開催。それにたいして沖縄では、屈辱の日沖縄大会を開催しました。政府式典に納得がいかない、がってぃんならぬの思いで政府に抗議しました。

 将来を期待されつつ短い生涯を余儀なくされた先輩に対し、われわれ教師の使命は、戦争のない恒久平和を願う若者を育てることであると考えます。本校では毎年6月は、慰霊の日を考える学習会をしています。慰霊の日を考える特設ロングホームルームを実施し、沖縄戦の歴史を振り返りました。

 戦争の悲惨さを決して風化させてはならず、語り継いでまいります。

兼城香帆・生徒会長

 いま集団的自衛権が大きな問題になっています。69年前の悲劇があったにもかかわらず、日本が戦争に巻き込まれてしまうか、心配です。

 いまの私たちに何ができるか。戦争を経験していないので、戦争をそのまま伝えることは難しいでしょう。しかし戦争に対してノーと、はっきり意思表示することはできます。少しでも戦争のことを深く理解し、次の世代に語り継いでいくこともできることだと思っています。

参列した名護高校の生徒たちは菊の花を献花した

参列した名護高校の生徒たちは菊の花を献花した

 名護高校にいるからこそ、沖縄戦のことを考えるようになりました。平和な世の中になるように努力したいと思います。

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