【福島・沖縄からの通信】

平良朝敬:経済的軍事的環境は変わった 堂々と基地撤去をいえる時代がきた

 「観光は平和産業」「基地反対」の旗印をかかげて行動する沖縄の経済人、平良朝敬・かりゆしグループCEOにこのほど那覇市のかりゆしグループ本社でインタビューしました。沖縄でリゾートホテルを経営する平良氏は、かつては普天間基地の辺野古への移設を容認していましたが、1月の名護市長選で「海にも陸にも基地は造らせない」という稲嶺進市長を応援。11月の沖縄県知事選でも、辺野古の新基地建設反対をつらぬく新しい沖縄のリーダーの擁立を模索しています。(文責:星英雄)

 ──何が、CEOを基地反対の行動に駆り立てているのでしょうか

 歴史をさかのぼってみると一目瞭然です。この地域にはかつて琉球王国があり、それとともに沖縄の人々の歴史がある。その歴史を無視すると文化も、親兄弟もなくなってしまう。そのことをわれわれの中にしっかり据える必要がある。そんなウチナーンチュ(沖縄県民)のアイデンティティーを考えると、いったい沖縄はいつまで米軍に占領されているのか、という思いに至ります。

 同じ日本国民であれば同じ権利、人権があるはずなのに、日本政府あるいは本土の人たちが、自分たちだけよければいい、南の果てはどうでもいいんだというのは許し難い。国防は日本全体で考えていかなければならない問題だと思います。

 「沖縄差別」といいますが、もっとひどい扱いを受けています。沖縄は「無視」されている。これほどの屈辱はありません。昨年1月、「オール沖縄」の意思として、東京で安倍首相に「建白書」を手渡しました。「建白書」は日米両政府に、オスプレイの配備撤回、普天間基地の閉鎖、県内移設断念を求めています。しかし、受け取っただけでまるっきり無視ですよ。われわれ沖縄の人間を日本人とは思っていない。名護市辺野古に基地を造ることは、そういうことじゃないですか。

 私は日米同盟のなかで日本が発展したと思うが、なぜ、辺野古に新しく基地を造らないといけないのか。絶対に造らせてはいけなということから、私の行動ははじまっています。

「かりゆし」とは沖縄の言葉で「幸せ」「幸多かれ」という意味。基地をなくすことが経済発展、沖縄の人々の幸せにつながると話す平良朝敬・かりゆしグループCEO

「かりゆし」とは沖縄の言葉で「幸せ」「幸多かれ」という意味。基地をなくすことが経済発展、沖縄の人々の幸せにつながると話す平良朝敬・かりゆしグループCEO

 ──かつては辺野古への移設を容認していたそうですが、なぜ反対に変わったのですか

 経済的にも軍事的にも環境が変わったのです。基地はいらないと、堂々といえる時代が来たと思っています。

 私自身は、沖縄に基地はいらないと、物心ついたときから思っています。おじい、おばあ、両親から戦争体験を踏まえた話を聞いて育っています。しかし、現実には生活・経済の問題がありますね。うちの親父もおふくろも、仕事がないから軍作業に入った。あの時代はそれしかなかったのです。しかし、いつまでも軍作業をして奴隷になってはいけない、アメリカに使われてはいかん。われわれは日本人だから自立しないといけないと思って、やがてホテル経営をやるようになった。

 16年前の知事選で、閉塞感に陥った経済を立て直そうと稲嶺惠一さんを推しました。辺野古移設は軍民共用、15年の期限付きで容認しました。しかし政府は、容認した1本の滑走路から、うやむやのうちにV字型滑走路にするなど、もう我が物顔でやってしまう。このときから政府への不信感が出てきました。

 いまは逆に、基地こそが沖縄の経済と発展を阻害していることが実例でわかってきました。米軍基地を返還させてできた那覇市の新都心地域や北谷町の美浜アメリカンビレッジ地域の発展は、基地時代に比べて雇用も経済効果も100倍以上にもなっている。基地をなくしたほうが雇用も増え、沖縄経済も発展するのです。ほとんどの経済人が「辺野古に基地を造ってはいけない」と思っているのが実情です。

 観光は平和産業です。私はキャンプ・シュワブを全面返還させ、夢のような楽園をつくりませんかといっている。名護市のキャンプ・シュワブ(海兵隊基地)の地代収入は年間25億円、雇用もわずか240人です。シュワブの658万坪が返還され、利用できればどうなるか。ホテルは1000ルームで2000人の従業員を必要とする。計算上、シュワブの跡地には1000ルーム規模が200建つことになる。ホテルが10棟建ったとしても2万人の雇用を生むのです。普天間でもその他の基地でも、基地の返還でこそ、沖縄は発展することになると思います。

 人は夢が広がるとうれしい。しかし新基地建設で要塞ができると、いつ攻撃されるかというおびえの中で暮らすことになる。それで、何が幸せですか。

 米軍の軍事プロセスも変わったと思います。海兵隊は抑止力じゃない。沖縄の地理的優位性もない、ということがわかってきたから海兵隊はいらないという結論に達したのです。

 沖縄の基地の75%は海兵隊が使っています。海兵隊はローテーションで世界を回っているので、沖縄にいるのはせいぜい3か月ぐらいです。沖縄という小さな島で、軍の訓練をすること自体、非常に無理がある。

 海兵隊は朝鮮戦争をきっかけに、岐阜県と山梨県に配備されたけど、反対運動に追い出されて沖縄にきた。1956年です。海兵隊はわれわれ沖縄が受け入れたわけではない。アメリカの軍政下にあったから、われわれに有無をいわせずやってきたのです。

 「基地の整理縮小」ってなんですか。日米両政府は基地の整理縮小といいながら代替基地を要求する。結局、基地が強化されることになるのです。だからわれわれは具体的に、海兵隊は沖縄から出そう、といわないといけない。われわれが正面切って「米軍出て行け」といえる環境になったのが今日なのです。

 ──平良氏は翁長・那覇市長を知事に擁立する考えですが、翁長氏が仲井真知事のように裏切らないか、不安の声があります

 不安はわかります。日米安保条約やその他のこともありますが、いま何が一番大切かというと、新しい基地を作らせないことだと思う。そのために、新しい基地を作らせないリーダーを選んだほうがいい、と私は考えています。それが「建白書」を実現することにつながると思います。

 前回2010年知事選のとき、翁長市長が仲井真知事の選対本部長を引き受けたのは、辺野古移設はだめだという約束があったからです。ところが、仲井真知事は去年の12月27日、政府の埋め立て申請を承認しました。これは絶対に許せない。

 翁長市長と親交がある私からみて、翁長さんは沖縄のアイデンティティーに強いこだわりを持っていて、辺野古移設に「ノー」をつらぬくと思います。「辺野古はだめ」といい続け、県民の心を1つにまとめあげる知事を誕生させたい。そのために、「オナガ雄志知事を実現する同志会」を立ち上げたのです。

 政府や自民党は「基地を誘致して振興・雇用」というが、時代の変化がわかっていない。カネには釣られないと、沖縄はいっているんです。

 ──安倍政権は中国脅威論を利用して、辺野古に新基地建設を強要しようとしています

 沖縄は中国・アジアとの交流があります。沖縄を拠点に全国からその日集まったものが、航空貨物で香港やシンガポールなどに翌朝の7時に届いています。人と物の交流がこの間、まるっきり変わったが、ここに将来の可能性がある。アジアは元気です。以前は工場、今は市場になっている。市場に出すのが人、モノですね。

 日本がアジアの中でどう生きていくかを考えるとき、過去の侵略の歴史を否定することは国民が不幸になることです。

 中国を脅威に感じる人は沖縄には1人もいないと思います。中国は沖縄の隣人です。何百年もの間、沖縄には中国から冊封使が来たように、歴史的にこれほどの隣人はいない。みんなそう思っていますよ。

【インタビューを終えて:「環境が変わった」と、平良CEOが何度も強調されたことが強く印象に残った。だから、自分たちの生活、子どもたちの未来のために、もう基地はいらないと胸を張っていおうよ。そんな平良氏のメッセージは、いまでは沖縄の多くの人が共感できると思う。このインタビューの直前に、沖縄を代表する歌手の1人といわれる古謝美佐子さんが「もう口にテープを貼るのはやめよう」と、公然と基地反対を語りはじめた場面に遭遇した。その前には、座喜味彪好・元副知事・元沖縄電力社長が基地撤去を主張するのを沖縄の新聞で知った。「時代の変化」を感じる。11月知事選後に現れるであろう新たな沖縄を、みてみたいと思う。星英雄】

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