【福島・沖縄からの通信】

沖縄発:普天間基地も海兵隊もいらない

 早稲田大学アジア研究機構の主催で「沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事件から10年ー普天間基地は今」というシンポジウムが18日、早稲田大学でおこなわれた。沖縄国際大学の照屋寛之教授と佐藤学教授、2人の「沖縄からの報告」をきいた。(星英雄)

10年経っても変わらない危険な米軍基地─照屋寛之

 本土に復帰して基地はなくなると思ったが、変わらない。10年前のヘリ墜落事件は、起こるべくして起こった。日本の国土のわずか0.6%の小さな沖縄に米軍基地の74%が集中している。宜野湾市のど真ん中に、市の面積の3分の1を占める米軍普天間基地がある。沖縄国際大学の建物を直撃した米軍ヘリは、炎上し、大学関係者や報道関係者も現場から締め出され、米軍に占領されたと同じだった。米軍ヘリのローターは壁を削り、コンクリートの破片が近くのアパートの窓を突き破り、赤ん坊が寝ていた部屋を直撃した。IMG_6425

 事件を風化させないために大学に「米軍ヘリ墜落事件関係資料コーナー」を設置、授業のテーマ科目に基地問題を設定するなどした。

 本土の新聞・テレビの沖縄の基地問題の扱いはきわめて小さい。小泉元首相の秘書官だった飯島勲氏は、「基地ができた後に日本政府の思いやり予算などがあって、基地に受益を求めて回りに人家が建った」と、事実とは逆のことをふりまいている。基地問題の沖縄と本土の温度差は大きい。

 諸悪の根源は、日本政府に沖縄の基地問題を解決する意思がないことだ。

オスプレイは尖閣には飛べない─佐藤学

 地政学的に沖縄に海兵隊は必要か。朝鮮半島有事に対応するには、沖縄は遠い。尖閣をとりにくる中国にたいして沖縄に海兵隊やオスプレイがいると安心だという声もあるが、それは米軍の軍事戦略上、できない。去年12月、オスプレイが南スーダンに米人を救出しにいって、反乱軍に機関銃で撃たれて退却した。海兵隊は空軍、海軍が制圧した後に陸軍と一緒に占領する役割。相手が上陸した尖閣にオスプレイ・海兵隊がいって戦うことはできない。

 辺野古にオスプレイがいるから、というのはおとぎ話。アメリカは尖閣をめぐって中国と戦争するつもりはない。沖縄に米軍基地がいる意味は何か。アメリカは軍事費を減らし、海兵隊も予算を維持できない。沖縄での既得権を維持するために、日本政府に金を出させているのが実態だ。中国への抑止力としては嘉手納基地がある。

民家の上を我が物顔で飛ぶオスプレイだが南スーダンでは機関銃に撃退された(2枚とも宜野座村・泉忠信さん提供)

民家の上を我が物顔で飛ぶオスプレイだが南スーダンでは機関銃に撃退された(2枚とも宜野座村・泉忠信さん提供)

オスプレイ2

 アメリカでは、元大統領候補のマケインら有力な上院議員が辺野古は無理だといっている。沖縄では、保守の立場だった60代、70代の政治家、経済人が辺野古反対の声を上げるようになった。

 2人の話には、戦後の沖縄に基地がつくられた歴史を知らない若者が増えているという少し驚くようなことや、沖縄に基地がありつづけているのは差別構造があるからだ、という訴えもあった。

 安倍政権が集団的自衛権の行使を容認することは沖縄にとってどんな意味があるのか、という会場からの質問に佐藤教授がこたえた。

 集団的自衛権の行使はアメリカの戦争に日本が参加する話。アメリカの戦争に巻き込まれるのは以前からそうなので、沖縄の米軍基地の役割は変わらない。むしろ、安倍政権の集団的自衛権は、アメリカを尖閣の紛争に巻き込む保障、担保にしたいというねらい。アメリカは中国と戦争しないと思うが、尖閣で米中が衝突したら次の日から沖縄の観光客はゼロになる。

 政府が新基地建設を強行することについての質問に照屋教授がこたえた。

 名護市長権限で止められるのはいくつもある。官房長官は、国の権限で決めるというが、なんのために地方自治に与えられている権限を奪うのか。日本政府はアメリカに貢献していると、絶えず示したいのだ。日本に民主主義はあるのか。(新基地建設を強行するなら)血を流すような反対運動、島ぐるみ闘争が起きるだろう。

 1995年の米兵による少女暴行事件、2004年沖縄国際大学に米軍ヘリ墜落、2013年9月の普天間基地へのオスプレイ配備、そして基地から日常的に発生するさまざまな人権侵害にたいする怒り、闘いが、沖縄の新たな局面を開きつつある。

 沖縄の声にきちんと耳を傾けたい。真摯に沖縄と向き合える主権者でありたいと思う。

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