特定秘密保護法が今日施行された。国民の知る権利をないがしろにする秘密保護法は、この総選挙で、安倍・自公政権に対する審判を下すうえで、重要な判断材料だ。
秘密保護法は、特に秘匿が必要な安全保障に関する情報を「特定秘密」とするもので、秘密を洩らした公務員らには最高で10年の懲役刑を科する。何が秘密かさえ国民は知らされず、秘密の対象もきわめて広範囲、内部告発も抑制される仕組みになっている。
日本がどんな国になるのか、先行するアメリカの例が参考になる。米中央情報局(CIA)の元職員、スノーデン氏の暴露によれば、情報機関の米国家安全保障局(NSA)は世界中の電話やメールを極秘に傍受し、個人の行動を監視していた。ドイツのメルケル首相の私用携帯電話も盗聴されていた。
本来許されない盗聴活動はテロ対策の一環としてブッシュ政権で始まり、オバマ政権で加速した。米政権の電子通信傍受・盗聴は手が付けられないほどに横行しているという。スノーデン氏は「米政府が世界中の人々のプライバシーやインターネット上の自由、基本的な権利を極秘の調査で侵害することを良心が許さなかった」と暴露の動機を語っている。
国民に隠れた情報活動・国民監視と政府の情報を国民に隠すことは表裏一体だ。米政府はテロ対策(対テロ戦争)を口実にすれば、どんなことでも機密扱いにできるようになったという。米政府の指定で国家安全保障関係の最高機密(トップシークレット)は否応なく増えてきた。
その結果、対テロ予算、安全保障関連予算は青天井で増え続け、しかも「機密指定」されているから外部からはわからない。機密の増大に連れ、政府の関連部局も増大し、その周りに民間企業が群がる。そんなアメリカの実態は、米国人記者らによる『トップシークレット・アメリカ 最高機密に覆われる国家』(草思社、2013年)に詳しい。
安倍政権が実施を開始した特定秘密保護法は、アメリカとの情報共有・秘密保持のためとされている。政府の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を可能にする7月1日の閣議決定も、アメリカの対テロ戦争に参戦するためのものだ。対テロ戦争を「大義名分」にするアメリカの実態が参考にならないはずはないと思う。
「秘密に覆われた」政府は、国民に隠れて行動するようになる。国民の民主的コントロールの下にない政府はきわめて危険である。
安倍政権は特定秘密保護法や集団的自衛権行使容認の閣議決定のほかに、消費増税8%を実施、TPP交渉に参加、原発再稼働を着々と進めいている。アベノミクスの破たんで先送りはしたものの、2017年4月に消費税10%への増税を選挙公約している。沖縄県知事選で、辺野古新基地建設反対の県民の意志がはっきりと示されたにもかかわらず、新基地建設を強行しようとしている。どれもこれも民意に背くことだ。しかし、政権が民意に背いて勝手な行動をすることは許されない。
民主主義と憲法を破壊する安倍政権に「ノー」の審判を下す選挙にしたい。それだけでなく、自民・公明政権に代わる国民的共同の民主的な政権を展望できるような総選挙にしたいと願う。