昨年の世相を表す漢字として選ばれたのは「税」であった。清水寺の貫主が大きなキャンパスに大書した「税」の一字を思い出す人も多いだろう。しかし実は今年こそビッグな「税」の年なのである。抜け穴だらけの税のルールを書き換える年なのである。
貧困や格差など現代の諸問題を突き詰めると、結局のところ税の問題に行き着く。公正な税を取り戻すことなしに、これらの問題を解決することができない。そんな思いが多くの人を捉え、関心の焦点を税に向かわせつつあるのではないだろうか。
近年、格差への関心を一気に広めたのは、フランスの経済学者トマ・ピケティの「21世紀の資本」である。ピケティは数百年にわたる資本主義の歴史を検証した結果をもとに、近年の著しい所得と富の格差の拡大は19世紀以来のものであり、このまま放置すると格差拡大はとどまるところを知らず、資本主義が存続しえないレベルにまで達する。ピケティが格差拡大を食い止めるために提唱するのはグローバル富裕税である。
正解である。負担する能力のあるものが応分の負担をする。これは税の世界の鉄則である。しかしそれは実際には簡単なことではない。富裕者は税を逃れる知恵と財力を持っている。せっかく税を課してもタックスヘイブンの闇の中に消えたのでは意味がない。格差拡大や貧困問題の解決のために何よりも必要なことは、抜け穴のない公正な税のシステムを作り上げることである。
オックスファムという団体がある。イギリスで生まれ、貧困と飢餓をなくすために、世界の約100か国で活動しているNPOである。そのオックスファムがこのほど「世界税サミット」の開催を呼びかけた。
オックスファムのビヤニマ事務局長は今年1月、ダボスで開かれた世界経済フォーラムの共同議長の一人であった。フォーラムに先立って、ビヤニマ氏は世界の貧富の格差の拡大は急速であり、このまま推移すれば来年には、世界で最も豊かな1%の富裕者が保有する富が、残りの99%の保有する富を上回るという、驚くべき報告書を発表した。
オックスファムは呼びかける。
各国の首脳たちは盛んに不平等や格差の拡大を口にする。しかし今求められているのは言葉を行動に移すことである。不平等に取り組もうとするのであれば、まず税を公正なものに作り変えなけなければならない。
オックスファムはとりわけ法人税の改革に焦点を当てている。なぜなら企業が税を逃れると利益が増えるが、増えた利益は最も富裕な1%、10%のふところに転がり込む。他方減った税収は市民や小企業が代わって負担しなければならず、福祉や教育のために予算は削られるからである。
オックスファムはさらに主張する。
現行の抜け穴だらけの国際的な課税システムは時代遅れである。グローバルな税のルールは書き換えられなければならない。いまOECDを舞台に取り組まれている改革は歓迎されるが、巨大企業が改革プロセスに影響を与え、ルクセンブルクのような事実上のタックスヘイブンが交渉の席についている一方、途上国の発言の場はない。現行の税のシステムのもとで、もっとも不利な扱いを受けている途上国にこそ、新しい税のルールを書き換える議論の場に、同等の発言権が与えられなければならない。
オックスファムが「世界税サミット」の開催を提唱するのはこのような理由からである。オックスファムによれば「世界税サミット」にはすべての国が招かれ、より公正な国際的な税のルールを作るための議論が行われる。巨大企業の利益よりも市民の権利と必要が優先される。今年7月、国連の開発資金会議(於エチオピア)と並行して開催される予定となっている。
このエチオピア会議は今年9月の国連総会で決定される予定の、ポスト2015のミレニアム目標の内容を固める重要な国際会議である。「世界税サミット」は国連にも影響を与えようとしているのである。
ちょうど時を同じくしてわが国でも、元日弁連会長の宇都宮健児氏らの呼び掛けで、「公正な税制を求める市民連絡会」(仮称)が設立されることになっており、また志賀櫻氏(「タックヘイブン」の著者)ら専門家も加わる「民間税調」の設立も近く予定されている。これらの動きが互いに協力し合い、「世界税サミット」など世界の運動と連帯することができれば、2015年は税のルールを新しく書き換える記念すべき年になることは間違いない。
オックスファムの取り組みが素晴らしい! 国連の開発資金会議と並行して世界税サミットを行うということは、「国連さんよ、あんた今まで何やってきたの?」というメッセージです。「何も拉致があかないから、もう待ってはいられない、こっちがサッサとやりまっせ!」という意思表示ですね。た〜のもし〜い!
国際通貨基金も世界銀行も、国連と共に世界の不平等や貧困を撲滅することを一応旗印に抱えてはいるものの、結果は世界の現状を見ての通り。
辺野古の基地建設費が地元ではなく大成建設に吸い取られていくのと同じ理屈で、日本が今回の首相の外遊でばら撒いた援助がそっくり日本の大企業に吸い取られます。
同じ理屈を地球規模でずっと続けた結果が今問題になってる1パーセント対99パーセント。
今だからこそ「微力でも無力ではない」の気持ちで99パーセントが国境や、人種や文化の壁を越えて団結する時なのだと思います。
そして今だからこそ、既成勢力は99パーセントをあらゆる方法で分断しようとしています。ヘイトスピーチは異人種や異文化で分断し、育児関連のサポートの減少は性別で分断し、介護法の見直しは年齢で分断し、教育費の高騰は経済力で分断し、などなど数え上げたらきりがありません。暮らしていくのがやっとで、思いやる気持ちや市民運動に注ぐエネルギーを削がれてしまいます。それが1パーセントの思うツボなのでしょう。
何が何でも戦争したいような、世の中を強引にコントロールしたい人たちの勢いに歯止めをかけようという切実な願いが、このオックスファムの「世界税金サミット」に込められていると感じました。
宜しかったらサイトを覗いてみてください: http://www.oxfam.org