「半端じゃないね、この大きさは」。他の船の女性が、叫んだ。オレンジ色のブイの下に、白っぽい大きな物体がみえる。物体に近づくと、防衛省が浮具(フロート)を固定するとして海中に沈めている巨大なコンクリートの塊だとわかる。安倍晋三・自公政権が強行する埋め立て工事の一環だ。
コンクリートの塊は、「1辺が2メートル以上、20トンはある」との声が上がる。ここは、米軍基地キャンプシュワブのすぐ前の大浦湾。辺野古・沖縄の人々が強く反対する埋め立て・新基地建設の現場だ。
1月31日(土)午前7時40分、4隻の抗議船が汀間漁港を出発した。私は地元紙の記者たちとともに、平和丸に乗せてもらった。船長の仲本興真さんは「大浦湾はアオサンゴ、ハマサンゴが生息し、ジュゴンも餌を食べにくる。潜ったら竜宮城だよ」とこの海の素晴らしさをたたえる。「ここは沖縄県が保護したい、1番目の自然なんだ」
目の前には大浦湾とそれに接して広がる米軍キャンプシュワブ・海兵隊の基地がある。弾薬庫も見える。さらにその背後には、久志岳、辺野古岳。遠くの久志岳は、山肌が茶色になって露出しているのがわかる。
仲本船長がいった。「水陸両用の強襲揚陸演習、実弾射撃訓練、パラシュート降下訓練が行われている」。要は、アメリカ海兵隊はこの陸でも海でもやりたい放題なのだ。久志岳の茶色の山肌は、実弾射撃訓練でえぐりとられた跡だ。
途中から、埋め立て・新基地建設に強く抗議する18艇のカヌーが現れた。「立ち入り禁止区域です。速やかに退却してください。」と、防衛省の雇われ船がしきりにアナウンスするようになった。この日は埋め立て作業は1時休止。いつもは海上保安庁の暴力が襲いかかるところだが、いまのところ姿は見えない。防衛省に雇われたという民間人が、船やボートで監視・警戒に当たっている。1人の日当は5万円~7万円とか。埋め立てを推進する安倍政権の買収策といえる。
カヌーの1人は「海保は大丈夫ですか、といって首を絞める」といった。普段の海上保安庁は「警備」に名を借りて、その実、暴力で人々の抗議行動を圧殺しているのだ。
いつもは近づけない大型クレーン船に接近した。何十という巨大なコンクリートの塊が台上に用意されている。さきほどみた海中の塊よりはるかに巨大な45トンのコンクリートの塊がある。ほかにも、20トン、15トンの巨大なコンクリートの塊が並べられている。
安倍政権はこれらを次々に海中に沈めていこうとしている。すでに、沖縄防衛局が浮具固定のために設置したアンカーがサンゴを損傷したことなどが明らかになっている。翁長雄志知事が海上作業の中止を要請したにもかかわらず、安倍政権は強硬姿勢を変えない。辺野古・大浦湾の自然を破壊してその責任をとれるはずもない。沖縄の民意をどこまで踏みにじるのか。
この日、キャンプシュワブのゲート前では、抗議する人々を機動隊が強制排除した。一方、名護さくら祭りが開幕した。稲嶺進名護市長は「日本の春の始まりを楽しんでほしい」とあいさつした。2日(月)からは再び、海上でも緊迫した闘いがつづく。辺野古・沖縄と全国の連帯による新基地建設反対の闘いは、平和と民主主義の最前線の闘いだ。