【特集:国民的共同をめざして】

五十嵐仁:安倍政権と対決し打倒するためには力を合わせるしかない

 最近、『対決 安倍政権―暴走阻止のために』という新しい本を書き、学習の友社から出版しました。その中で「国民的共同」について触れた個所があります。拙著では沖縄での経験を踏まえて「一点共闘」としていますが、その趣旨や内容は「国民的共同」にほかなりません。私は、拙著111頁で、「『一点共闘』から統一戦線へ」という見出しの下に、次のように書きました。

  「一点共闘」とは、特定の要求課題で足並みをそろえて共同行動をとることです。共に戦うから「共闘」です。「一点」を強調するのは他の課題や政策では共同できないことを前提にしているからで、もともと異なった政治的立場や潮流間での「共闘」を目標としています。

 安倍首相は多くの懸案事項を一挙に解決しようとしているため、重要課題が増えて戦線が拡大しました。それぞれの課題をめぐって国民の要求との矛盾も増大しています。与党の攻勢を阻むことが必要になっていますが、「一強体制」と言われるような力関係ですから、野党がバラバラでは効果がありません。そこで、力を合わせるための方策として「一点共闘」が重要になります。

 「共闘」と言っても、狭く捉える必要はありません。互いに支持を表明しあったり、政策への賛同を明らかにしたり、共同声明に署名をしたりというレベルでも良いでしょう。それが、具体的な課題の実現を求めるデモや集会に結びつけば、なおけっこうです。改憲や集団的自衛権行使容認に反対する運動では、このような新しい動きが始まりました。

 この文章に続いて、「新しい動き」として紹介しているのは「戦争をさせない1000人委員会」「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」「戦争をさせない!憲法を守りいかす共同センター」の三団体による共闘組織「戦争をさせない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の結成です。本書では「大規模な共同行動に取り組もうとしています」と書きましたが、これは5月3日の憲法記念日に予定されている集会に結実しました。

 また、私は昨年の11月29日に予定されていた大集会・大行動の呼びかけ人になり、そのための文書も書きました。その直後に国会が解散されて総選挙になったため、残念ながら、この集会は延期されました。現在、同じような趣旨の大集会・大行動を6月13日に開催することをめざして準備が始まっています。この集会も、「国民的共同」を発展させる重要な結節点となることを願っています。

 このような「共同」の進展は、集会などだけではありません。選挙でも、党派的な境界を踏み越えた新しい共同が発展してきました。言うまでもなく、沖縄での新基地反対の「建白書」を掲げた「オール沖縄」の動きがあります。佐賀県知事選挙での非自民党候補の当選がありました。一斉地方選挙では、北海道知事選挙が注目されています。与党が推す現職知事に対して、野党が共同して対立候補を擁立することになったからです。

 このような「共同」の動きと並行する形で、安倍首相の「戦争する国」づくりへの懸念や反対の動きも広がりを見せてきました。これについては、拙著の中でも115頁で次のように紹介しました。

 このような新たな状況の誕生は沖縄だけに限りません。この間の様々な運動でも生まれてきています。民意を無視した強権的な政治運営は国民の危機感と反発、ときには強い怒りを引き出し、保守勢力との事実上の「共同の輪」が形作られてきました。 そのような「輪」に、古賀誠さん、加藤紘一さん、野中広務さんなどの自民党幹事長OB、第一次安倍内閣での法制局長官だった宮崎礼壱さんや小泉政権での法制局長官だった阪田雅裕さん、防衛庁長官官房長などの旧防衛官僚だった柳沢協二元内閣官房副長官補、『戦後史の正体』というベストセラーの作者で外務省国際情報局長や防衛大学校教授を歴任した旧外務官僚の孫崎享さん、改憲派として知られていた小林節慶応大学名誉教授、二見伸明元公明党副委員長などが続々と加わってきたのです。

 さらに、自民党の河野洋平元総裁や山崎拓元副総裁なども、安倍政権の右傾化や集団的自衛権の行使容認について、懸念や批判を明らかにしています。安倍政権が進める危険な方向を憂慮したり、懸念したり、不安を抱いている国民や有識者は多いと思います。それらの人々の思いや願いを結集し、安倍政権の暴走をストップさせることが必要です。

 日本は戦後最大の危機を迎えています。自民党は改憲を党是としてきましたが、自らの政権でそれを実行することを表明し、そのための政治日程を明らかにした首相はいませんでした。この点で、安倍政権は戦後初めての「改憲政権」であると言えます。

 安倍首相の野望を阻み、「海外で戦争する国」造りを許さず、平和国家としての日本のあり方を守るためにも、安倍政権と対決し、打倒しなければなりません。国民的共同はそのために唯一可能にして強力な手段であり、その成否こそが日本の将来を決めるものとなるでしょう。

 国民的共同の発展のために力を尽くそうではありませんか。強力な敵を倒すには、力を合わせるしかないのですから……。(元法政大学教授)

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