【連帯・社会像】

星英雄:福島の失敗をもう1回やるんですか

 ドキュメンタリー映画「日本と原発」(河合弘之監督)を見終わって、「福島の失敗をもう1回やるんですか」という問いかけが重い。この映画は、原発を考える市民たちが自主上映するなどして全国に静かに広がっているという。私は昨日、「原発はいらない西東京集会実行委員会」主催で、柳沢公民館で見た。

 3・11の巨大地震発生時、自分がどこで何をしていたかは鮮明に覚えている。映画の冒頭で、地震と直後に襲った大津波が、人や車や家々を押し流し飲み込んでいった場面を見せられて、思わず体が硬くなった。そして、東京電力福島第1原子力発電所の事故発生・・・。決して忘れてはいけない。

 アイゼンハワー米大統領の「Atoms for Peace」の演説からはじまり、安全神話でバラ色に描かれた日本の原発推進策が、国民に幸せをもらしたのか。原発差し止め訴訟で有名な河合弘之弁護士と海渡雄一弁護士が、被害者や専門家をインタビューして歩く。

 被災地の無残な情景、被災者の無念の思い。浪江町の女性は「原発のエントツをみると、これでいいのか・・・」と言葉を詰まらせた。

 河合弁護士らと専門家たちとのやりとりはその1つ1つが、東京電力福島第1原発事故がなかったかのように安倍政権が進める原発再稼働・原発温存路線の根拠にたいする反論となっている。たとえばコストの問題。このドキュメンタリー映画はまるで「脱原発教室」のようでもある。

 福島県では今も12万人が故郷を追われたままだ。地域も人間関係も人生も破壊された。原発事故は収束していない。放射能汚染が人を遮り、事故の原因究明さえできない。これが原発事故の恐ろしさなのだ。1度事故を起こせば取り返しがつかない。原発は人間と共存してはいけない存在であることを、あらためて痛感する。

 映画は最後に問いかける。「福島の失敗をもう1回やるんですか」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)