【特集:国民的共同をめざして】

星英雄:「オール沖縄」に学んで「国民的共同」をめざそう

 「護憲の1点で選挙を戦えないか」「国政レベルでもオール沖縄のように」という声は少なくない。私も同感だ。「オール沖縄」を「国民的共同」へと発展させることが、安倍政治に対抗し、国政の変革へと進む道だと思う。

 私は、衆参の国政選挙をふくめて、昨年11月の沖縄県知事選ほど意義のある選挙は近年ほかになかったと理解している。なぜなら、辺野古新基地建設反対を使命とする翁長県政が誕生したことで、安倍政権と日米安保体制に一定の打撃を与えていること。そして何よりも、諸勢力の共同こそが、選挙の勝利をもたらし、県民(国民)の期待にこたえることができるという方法論を示したからにほかならない。

 沖縄ではなぜオール沖縄(共同)ができ、全国・国政レベルでは実現しないのか。基地被害の深刻さはもちろんだが、沖縄には知事選などで革新勢力が共闘する伝統がある。具体的な場として、候補者選考委員会があることが大きい。

 沖縄では、いわゆる「本土」とは違って、革新側では社民党が第1党、県議会で8議席を占めている。共産党は4議席、社会大衆党は2議席だ。

 選考委員会の動きは例年になく早かった。2013年12月、仲井真知事(当時)が辺野古埋め立て承認を表明した翌日、非公式の会合を持った。「今回は枠を広げたい」と責任者の新里米吉・社民党県連委員長が呼びかけた。従来からの革新3党に、日米安保条約を認める生活の党と、県議会の無所属会派「県民ネット」を選考委に加えることが話し合われた。「新基地建設を阻止するには、なんとしても県知事選に勝たなければいけない」。こうして、革新プラス中道の選考委員会が発足し、保革共同「オール沖縄」で翁長氏擁立、知事選勝利に結実した。

 選考委員会がぎくしゃくしなかったわけではない。生活の党を加えたり、翁長氏を候補者に決める過程で多少の相違はあったが、選考委員会という場が、議論を交わし、批判をし、団結を深める場になったことは間違いない。

 オール沖縄の枠組みは、沖縄の革新政党の相互理解も促進したといわれる。沖縄の共産党関係者は「もう社共の対立はほとんど心配なくなった。反共主義は払しょくされたと思う」と語った。

 こんな出来事が心に響いたという。「共産党の赤嶺候補が危ういかもしれないという情勢に、辺野古のキャンプ・シュワブゲート前で座り込みの陣頭指揮をしていた山城博治氏らが座り込みを解いて、那覇にきて赤嶺当選のために奮闘してくれた」

 山城氏は2013年参院選で社民党公認候補だった人物だ。彼が共産党候補の当選のために働いたことがどんな意味を持つか、多言はいらないと思う。

 沖縄では日米安保条約を肯定する人々をふくめて、辺野古新基地建設反対の大きな世論をつくりあげ、全国の世論形成に大きな影響を与えている。共同の力による1歩前進の意義は大きい。

 「本土」ではどうか。「沖縄では、新基地反対で保革もいっしょに『オール沖縄』なのに、本土では社民党と共産党さえいっしょになって戦えない」と、沖縄県会議員の1人は嘆いた。

 共産党は「戦争する国づくり反対」といい、社民党は「戦争のできる国反対」と主張している。日本のあり方が根本から変えられようとしていることに対する危機認識は共通していると思う。安倍政権は憲法違反である集団的自衛権行使容認の閣議決定を具体化する安保法制を8月のお盆までには成立させる方針だ。辺野古新基地建設と一体の問題でもある。国民が知るべき情報を隠ぺいする特定秘密保護法は施行され、マスメディアに対する圧力も露骨だ。原発再稼働は「粛々と進める」(菅官房長官)といってはばからない。すべては、自公両党が、衆参で多数議席を握っているからこその言動にほかならない。

 沖縄の知識人はこう指摘し、期待する。「日本本土の野党勢力が党利党略に走らず、候補者調整などによって〈反自民〉の有権者意思を結集できれば、安倍自民党を過半数割れに追い込み、野党の連立政権樹立も不可能ではない」(仲宗根勇『未来』2015冬)

 国民のために何をして何をしないかは、国会の多数派が決める。それが冷厳な現実だ。安倍政権の憲法改悪・戦争国家に反対する政党は、どのような展望をもって国民に語りかけるのか。

 共同の力で安倍政権に対抗し、国政の変革をめざそう。そのための議論を起こそう。

【付記】

 上記の私の記事は誤解を招くとの指摘があったので、多少説明を加えます。

 私が耳にする「護憲の1点で」という言説は、「護憲」で一致すればそれだけで国政選挙や国政の運営ができるという意味ではありません。「護憲」という重要で差し迫った課題で共同する意志があれば、その他の政策的違いは乗り越えることができる。つまり、「小異を残して大同につこう」という精神だと理解しています。

 オール沖縄の翁長県政も、辺野古新基地建設反対だけで成立しているわけではありません。沖縄の社民党、共産党、社大党、生活の党、県民ネットと翁長氏が交わした「沖縄県知事選挙に臨む基本姿勢および組織協定」は辺野古新基地建設反対のほか、TPPと消費税増税に反対、社会保障制度の拡充や賃金格差是正、非正規雇用の改善、県立病院の存続、などを約束しています。もちろん、憲法9条を守ることがうたわれています。「新基地はつくらせない」という「重要で差し迫った課題で共同する意志」が、「基本姿勢」をまとめさせたのだと思います。

 たとえば憲法改悪反対の諸勢力が、まずは議論のテーブルに着けば、「オール沖縄」のような国民的共同が可能になるのではないか、と思うのです。(2015年4月27日 星英雄)

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