安倍晋三首相がやっと陳謝した。首相を支持する自民党議員らが「勉強会」と称して報道機関に圧力をかけ、沖縄県民を侮蔑した問題で、自民党総裁でもある自身の責任を認めた。問題は、本当に反省したのか、だ。
安倍首相は3日の衆院平和安全法制特別委員会でこういった。「勉強会の発言は極めて不適切だった。国民に対しても申し訳ない気持ちで、沖縄のみなさまの気持ちを傷つけるとすれば申し訳ない」
問題の勉強会では、「マスコミを懲らしめろ」、「沖縄の2つの新聞社はつぶさないと」「もともと普天間基地は田んぼの中にあった」等々の暴言が続出した。安倍首相自身、昨年総選挙の直前に出演したTBS系の「NEWS23」で、街頭の声がアベノミクスに否定的だったことから、TBSを攻撃した。安倍政権下では、自民党がテレビ局の幹部を呼びつけるなど、マスコミに対する介入・威圧の例が顕著である。勉強会のマスコミ威圧も、いわば、首相譲りといえる。
勉強会での暴言に対し、批判は噴出した。攻撃の矢面に立たされた沖縄の2紙は編集局長名の「共同抗議声明」で安倍・自民党を痛烈に批判した。東京の朝日、毎日、東京などに加え、安倍政権よりの読売新聞も続いた。日本外国特派員協会も会長名の声明で、「『報道の自由』を脅かすような発言について、深い憂慮を表明します」と批判した。
沖縄県民が激しく怒ったのも当然だ。県議会は今月2日、発言の撤回と県民への謝罪を求める決議を可決した。
辺野古新基地建設反対の翁長氏が知事選で圧勝した沖縄の怒りの前に、新基地建設を強行する目論見はうまく進んでいない。衆参両院で数を頼みに憲法違反の安保関連法案・戦争法案を押し切ろうとした思惑も、6月4日の衆院憲法審査会で憲法学者3人がそろって「憲法違反」と言い切ったところから潮目が変わった。
国民世論とマスコミの批判は高まる一方だったのだ。今回の謝罪は安倍首相が、辺野古新基地建設の推進や戦争法案の審議への影響を小さくしたいとの思惑で、収集を図ったとみて間違いないと思う。
しかし、国会の議席数が変化したわけではない。戦争法案がとん挫する事態は安倍政権の存立にかかわるので、死に物狂いで成立を図ろうとしている。これに対抗する世論をさらに大きくしなければいけないと思う。
安倍首相が陳謝して、「安倍政権を厳しく非難する報道機関であろうとも、言論を守ることが私たちの義務だ」といった意味は小さくない。マスコミ、とくにテレビは政府・自民党におびえるな、といいたい。マスコミもミニコミも、そして1人1人の国民が、「報道の自由」「言論の自由」「表現の自由」を武器に、安倍政権に追い討ちをかけよう。