【連帯・社会像】

星英雄:新国立競技場の次は、戦争法案だ

 安倍首相は17日、2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設計画を「白紙に戻す」と表明した。支持率のさらなる低下を恐れたからだという。だが、これに惑わされることなく、戦争法案にたいする反対世論をもっと大きくする必要がある。

  安倍政権はつい先日まで、計画は変えることはできない、と言ってきた。菅官房長官は連日の記者会見で、見直しを否定した。8日の記者会見では、デザインを「変更すればわが国の国際的な信用を失墜しかねない」といったばかりだ。安倍首相その人も、10日に国会で「時間が間に合わない」ことなどを理由に、見直しを拒否した。

 それが一変したのだ。当初の1300億円というそれだけでも巨額の工費が、さらに2倍に膨れ上がったことに対する世論の厳しい批判があったことは間違いない。

 だが、「敵は本能寺にあり」だ。安倍政権にとって、新国立競技場建設問題は戦争法案にかかわる。参院での戦争法案審議、成立の妨げにならないよう、これ以上の支持率の低下を少しでもくいとめたい、が本音であることは衆目の一致するところだ。

 6月4日の衆院憲法審査会で3人の憲法学者がそろって戦争法案を「憲法違反だ」と批判してから、明らかに潮の流れが変わった。自民党議員ら首相の支持者の「勉強会」がマスコミと沖縄を威嚇する言動で盛り上がり、世論の総スカンをくらった。戦争法案の強行採決はさらに厳しい世論の批判を浴びた。新国立競技場建設問題でも、世論の7割が反対している。

 政権発足以来はじめて、支持率が不支持率を下回ってきた。高い支持率を頼りに国民を軽んじてきた安倍政権が、危機感を覚えるようになってきたのだ。このままではどんどん支持率が下がっていき、戦争法案も政権運営も行き詰まるかもしれない・・・。

 今度の問題で大事なことは、安倍首相の思惑はそれとして、国民の怒りが、新国立競技場の白紙化に追い込んだことだ。「民意」を無視できなくなってきたことだ。数を頼んだ傲慢さ、決めるのは安倍政権と与党の自民・公明だ、国民はそれに従えという首相の考えをストレートには押し通しにくくなってきたということになる。

 安倍政権をさらに追い込もう。安倍首相は新国立競技場建設について「国民のみなさまの声に耳を傾けながら、万全の準備を進めていきたい」と語った。ところが戦争法案については、依然「国民の声に耳を傾ける」つもりはないようだ。戦争法案は憲法違反の法案だ。国民の生命と国の進路がかかっているのだから、なおさら国民の声に耳を傾けるべきではないか。

 そうでないなら、われわれ国民は主権者として、安倍政権に思い知らせなければならない。「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるもの」(日本国憲法前文)なのだから。

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