【特集:国民的共同をめざして】

小森陽一:いまだかつてない国民的共同をめざして─第3次安倍晋三政権を打倒し、戦争法制を廃案にする大運動の成功のために

1、7月15日夜、国会を10万人が包囲

 「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」は、衆院特別委員会での戦争法制強行採決を許さないための座り込みを約200人で、2015年7月15日午前9時から、炎天下で始めた。刻一刻と参加者が増えていく。民主党の近藤昭一衆議院議員、吉田忠智社民党党首が挨拶をする。

 12時から昼の集会が行われ、「総がかり行動実行委員会」を構成する「戦争をさせない1000人委員会」の内田雅敏弁護士の、「強行採決は議会多数派による憲法破壊のクーデター」だという発言の途中で、採決が行われそうだという情報が入る。「強行採決は許さない」のコールが一斉に行われていく。

 12時25分、衆院安保法制特別委員会で強行採決。数千人が国会前で「強行採決糾弾」の声をあげた。「総がかり行動実行委員会」を構成する「憲法共同センター」と「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」から、強行採決を糾弾し、さらに運動を強めていく決意表明がなされた。民主党の枝野幸男幹事長が「今日を安倍政権の終わりの始まりの日にしよう」と呼びかけた。

 6時半から「総がかり行動実行委員会」の抗議集会では野党各党の決意表明の後、政治学者の山口二郎法政大学教授が、「強行採決は、安倍晋三の弱さともろさの現れ。60年安保闘争で岸を打倒したように、孫の安倍を退陣に追い込もう」と呼びかけた。

 当初2万5千人だった参加者は6万人となり、ついに規制を解除させて国会前の車道に出て、10万人となった。この夜初めて、「戦争させない・9条壊すな!総がかり実行委員会」と学生グループ「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動─Students Emergency Action for Liberal Democracy – s)」が共催した国会前行動となったのである。

2、新たな共同の可能性の追求

 翌7月16日、衆院本会議で戦争法案が、自民、公明、次世代の党によって強行採決された。民主、維新、共産、社民、生活の野党5党は、安全保障政策について大きな政策的な違いがあるにもかかわらず、憲法調査会で与党推薦の憲法学者も含め、3人全員が「違憲」と判断した法案に対し、採決に応じなかった。このとき、安倍政権による戦争法案は、「違憲立法」であることが、多くの国民に明確になったのである。

 論戦は参議院に移されたのだが、ここでもこの新しい「共同」を維持していくことが出来るかどうかが重要なのである。現在進みつつある運動を、持続し発展させていくためにも、新しい「共同」の性格を、正確に認識しておく必要がある。

 「総がかり行動実行委員会」の結成によって、ことしの憲法集会が初めての「平和といのちと人権を!戦争・原発・貧困・差別を許さない」統一集会となり、この統一を維持することで、国会内での政党間の統一をも、形成しているのが実際のところだと私は判断している。「この統一」を信頼して、今まで運動に参加することを迷い、決心をつけかね、ためらって来た多くの人たちが、「参加する」という決心をすることによって、戦争法案を廃案にする運動の地殻変動が起きたのだ。

 私は今学期金曜日の4限(14時55分から16時40分)授業で、宮澤賢治の『注文の多い料理店』に収録されている9つの物語を精読する授業をしていた。受講生から「安全保障関連法案に反対する学者の会」の結成について「クールですね」という付け文を授業のはじめにもらう。そのことを紹介すると、授業参加者数人と共に国会正門前の「SEALDs」の行動に参加することになる。

 その中の1人と、学生と教職員と一緒の集会やろうかという話になり、わずか2週間の準備で、7月10日の集会を成功させ、新聞報道までされてしまう…。そして全国の大学で同じような運動が一気に広がっていく…。

 党派にとらわれていない、1人ひとりの自覚的判断に基づく行動なのだ、という信頼感があったからこその運動の広がりだと判断する。運動が党派と結びついていた、という戦後日本の状況を、誰がどのように総括するかが、改めて問われている。この総括が正確にかつ責任を伴うかたちで、しかるべき形で行われていないことの責任を負っている政治的責任者は、あらためて、毎日の国会前行動が、どのような考えのもとに行われているかに、想像力を延ばして欲しい。

 私自身は、今日(8月14日)、「立憲デモクラシーの会」の1人として、民主党の岡田克也代表、枝野幹事長、福山哲郎参議院議員と会い、戦争法制を廃案にするために、院内と院外の運動が、どのような協力関係をつくっていけばよいのかをうかがってきた。

 8月10日付「毎日新聞」世論調査では、安倍晋三政権支持は32%、支持しないは49%であった。ここを下げ止まりにせず、一気に20%代に落とせる地域の草の根運動が大切である。

 この間の運動の大きな質的転換は、「立憲主義」を破壊する安倍政権は許せない、という一致点が出来たことにある。学生も高校生も、あらゆる老若男女が、自分が憲法によって、行政権力である安倍政権、立法権力である国会、司法権力である裁判所を、本気で縛るのだという認識と決意の一致である。

 戦争法制廃案まで、全力を尽しましょう。

小森陽一:いまだかつてない国民的共同をめざして─第3次安倍晋三政権を打倒し、戦争法制を廃案にする大運動の成功のために” への1件のコメント

  1. 『オール沖縄』から『オール日本』へと「戦争する国造り」STOPの闘いを!              杉浦公昭
     2014年12月、「オール沖縄」が政治戦線で全面勝利したのを見て、これを『オール日本』へ発展させたいと思いました。
     2007年から、沖縄の辺野古と高江の新基地建設反対の座り込みに春秋それぞれ一週間ずつ参加してきました。
     5月17日の「辺野古新基地建設!沖縄県民大会」に参加し、呉屋会長から「オール沖縄の闘いがオールジャパンの闘いに発展している」とか稲嶺進名護市長の「オール日本で支持が広がりつつある」等の声を聴き、我が意を得たりと感動しました。
     5月31日北浦和で行われた9条こわすな・戦争させない!!オール埼玉総行動は1万370人の参加で大成功しました。
     6月27日には、第9次「9条守れ、米軍基地撤去!!!『沖縄県民連帯・川越行動』」の集会とパレードを実施しました。
     もともと、辺野古の闘いも、戦争法案の粉砕闘争も、本質は、日米安保条約に基づく不平等な地位協定の恒久化と日米同盟強化を許すか、それとも安保条約をやめて日米友好条約に切り替えるかの闘いであり、わが国が真の独立を勝ち取るための日本民族の闘いでもあります。
     そこで全国通津浦々の「戦争する国造り」反対の運動で、思想信条、政治的立場を超えて「オール日本」に結集して闘えば、小選挙区制の悪弊ものり越えて、戦争勢力を政権から追い出すことが可能な情勢を迎えていると考えます。
     国民の皆さん、日本国憲法を守り、世界の平和、日本の真の独立、民主主義のために「小異を尊重して、大同団結」し、「オール日本」として力一杯闘おうではありませんか?
        (日本科学者会議埼玉支部代表幹事)

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