沖縄の翁長雄志知事は13日、米軍普天間基地の移設予定地とされている名護市辺野古の埋め立て承認を取り消した。これから辺野古新基地建設を強行する安倍政権との全面的な対決の局面に入る。われわれ「連帯・共同21」は翁長知事の決断を心から歓迎し、沖縄の側に立って沖縄の人々とともに闘う。
「今後も辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む」と翁長知事は記者会見で語った。東京で、インターネットによる記者会見の中継をみていて、これまでぶれることのなかった翁長知事の思い、「辺野古新基地建設阻止」の不退転の思いが伝わってきた。
だが、この間の安倍政権との集中協議では、翁長知事には戦後の沖縄の苦難の歴史、人々の思いを話せば、安倍政権といえども少しはわかってくれるのではないか、わかってほしいという気持ちがあったように思う。しかし、安倍首相も菅官房長官も沖縄の訴えを聞く耳はもっていなかった。「沖縄県民に寄り添って県民の心を大切にしながら、問題を解決していきたいというような気持ちが、集中協議の中にもなかった」と知事は振り返った。
翁長知事が国連で、沖縄の人々は「人権がないがしろにされている」と訴えたことにも、知事の不退転の決意をみた。この問題の背景を、知事はその後の記者会見で語った。「米軍統治時代は少女暴行や小学校へのジェット機墜落、ひき逃げ死亡事故などがあっても、犯人が米軍人ならば無罪になる時代を過ごした。復帰後もダイオキシンなどの環境汚染があっても私たちの調査権が及ばない。米軍機の飛行も制限できず、人権がないがしろにされている」
米軍基地が人権侵害の根源であることは誰の眼にも明らかだ。ところが、米軍基地が人権問題であると訴えることに反対してきたのが沖縄の自民党県連、そして安倍政権だ。「人権」は、沖縄と安倍政権の重要な対決点となっている。
米軍基地の存在を人権問題ととらえれば、振興策とはもちろん、他のどんなものとも置き換えることはできない。人権は至高のものなのだ。
1948年の国連総会で採択された「世界人権宣言」はその第1条で、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」、第3条で「すべての人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する」とうたっている。人間社会を構成するすべての人々にとって不可侵の権利なのだ。
日本国憲法も第11条、第97条で、基本的人権は「侵すことのできない永久の権利」であると宣言している。本来、人権を尊重し擁護することなしに、どんな政権も国政を担うことはできないはずである。
那覇の弁護士はこういった。「革新の側は戦後、基地問題は人権問題だとずっと指摘してきた。知事の国連での訴えは戦後70年間の沖縄の基地闘争の反映であるし、翁長知事の確たる意志の表明でもあると受け止めている」
アメリカが他国に本格的に軍事基地をつくるのは、第2次大戦後のことだ。戦勝国として、敗戦国のイタリア、ドイツ、日本でそうした。沖縄の米軍基地はまぎれもなく敗戦と米軍占領下の産物だ。しかし、イタリア、ドイツで戦後70年を経た現在、新基地を建設してアメリカに提供するとは聞かない。
いま安倍政権が新たに辺野古の海を埋め立て、新基地をつくってアメリカに提供することは、なにを意味するだろうか。
沖縄の今ある基地は米軍の力による強制でつくられた。しかしこんどは、日本政府が向こう200年は存続するという人権侵害の基地を、国民の税金で提供しようというのだ。戦後70年、沖縄は拒否し、国民が賛成するという図式になる。どんな理屈で正当化できるだろうか。
翁長知事は安倍首相にいったという。「日本の独立は神話だと言われないようにしてください」
辺野古新基地建設阻止の闘いはこれから本格的になる。承認取り消しで辺野古埋め立ての法的根拠を失った安倍政権は対抗措置として、行政不服審査法に基づく不服審査請求を行う方針だ。しかし、国民の権利保護を本来の目的とする行政不服審査法を利用して、防衛省が国土交通相に不服審査請求するのは身内(安倍政権内)の出来レースにほかならない。厳しい批判が必要だ。
これから先は誰にとっても「未体験ゾーン」への突入になる。これから進行するであろう法廷闘争で沖縄が勝利する保証はない。県民の闘いとさらに大きな国民世論の支えと政治的な包囲が必要不可欠だ。
安倍政権と本格的に闘っていくうえで知事が依拠すべきは沖縄県民だ。だが、キャンプ・シュワブの前の座り込みの現場からは「知事は現場の声が聞こえているのか」といった批判が伝わっても来た。これからは現場と知事の一層緊密な意思疎通は欠かせない。
戦後の日本は沖縄の犠牲の上になりたっているといって過言ではない。日本本土防衛の捨て石とされ、県民の多大な死傷者を出した沖縄戦、米軍占頷下の土地の強制接収と基地建設、日本の「独立」と引き換えに米軍支配下に置かれ続けた。憲法9条についても、半面、沖縄の米軍基地によって成り立つ日米安保条約のことを考えざるをえない。
1996年、日米両政府による辺野古新基地建設構想が浮上してから19年間、沖縄は反対の意志を絶えず表明してきた。「ヘリポート建設阻止協議会(命を守る会)」を結成し、辺野古の浜で座り込みをはじめ、辺野古沖ボーリング調査に体を張って抗議・阻止し、オスプレイ配備に普天間基地を封鎖して抵抗し、それらがいま米軍キャンプ・シュワブ前の座り込みに結実している。昨年は、名護市長選、沖縄県知事選、衆院選で辺野古新基地建設阻止の沖縄県民の圧倒的民意を示した。
県民の誇りと尊厳をかけた歴史的大闘争だ。負けるわけにはいかない。「連帯・共同21」は沖縄の側に立ち、沖縄とともに闘うことを宣言する。