9月19日未明、本会議で安保関連法案が可決した後も、国会前の抗議デモは続いていた。「採決撤回!」「選挙へ行こうよ!」「賛成議員を落選させよう!」と叫んでいた。始発電車の時間まで続いたという。その映像を見ながら、戦前の童謡が浮かんだ。『あの町この町』(野口雨情作詞・中山晋平作曲)である。
1. あの町この町 日が暮れる 日が暮れる
今来たこの道 帰りゃんせ 帰りゃんせ
2. お空に夕べの星が出る 星が出る
今来たこの道 帰りゃんせ 帰りゃんせ
3. お家がだんだん 遠くなる 遠くなる
今来たこの道 帰りゃんせ 帰りゃんせ
昨年七月一日、解釈改憲の閣議決定がされる前後から、「九条の会」のメンバーほか、戦前の風を知る人たちから、“いつか来た道”を行くようだといった声が聞かれた。
ある日、噛み合わない国会答弁を思い返しながら家事をしていた時、偶然この歌がラジオから流れてきた。とっさに思いが飛躍した。この詞はデモ隊が歌ってもよいのではないかと。 たとえば“日が暮れる”は戦争法案が決まりつつある状況の表現、“お空に夕べの星が出る”戦争前夜のはじまり、“お家” は平時の社会の象徴と読める。
シルバーウィーク中もあちこちでデモ行進があったという。分野を超えた学者たちの抗議声明が発表されたり、法案の違憲訴訟の用意もあるようだ。共産党が他の野党に選挙協力を呼びかけたとのニュースもあった。
“いつか来た道”を引き返さなければならないという思いが世論調査の底流にあることは確かなのだ。立憲主義や民主主義破壊が強行された現実を忘れない、その替え歌もできそうだ。