【福島・沖縄からの通信】

星英雄:辺野古新基地建設は現場の民衆の「力」で止める〈2015沖縄レポート⑥〉

 名護市辺野古、米軍キャンプ・シュワブのゲート前。工事を止めようと、沖縄県内外から連日、人々が座り込みにやってくる。この非暴力の市民の抵抗こそ、辺野古新基地建設の安倍政権に立ち向かう確かな力なのだ。

 クリスマス・イブの24日午前、サンタクロースの格好をした人が現れたほど、ゲート前は喜びで盛り上がった。基地内に出入りする工事用車両が、なかったからだ。ここ数日つづく変化だ。

 ゲート前の座り込みのリーダーの1人は、こういった。「いまは水曜日だけの大行動を、年明けから水、木の2回にすることを検討している」。現場の闘いで阻止したいという意気込みが表れている。

 つづいて、安倍政権が強行する辺野古新基地建設をめぐる情勢について、説明してくれた。
 ──新基地建設が計画されている辺野古の海岸で見つかった土器などを沖縄県教育委員会が文化財と認定した。調査には数年かかる。

 ──沖縄防衛局は15トンブロックを船に積んだままで、海中に投下できずにいる。

 ──来年は法廷闘争が本格化し、面白い展開になりそうだ。

 ──埋め立て本体工事に着手しようとすれば、美謝川の計画変更が必要となり、県は承認しない。翁長知事は自信をもってきている。

 ──ゲート前から警視庁機動隊が引き揚げた。ただし、去年の県知事選のときもそうだったが、宜野湾市長選への悪影響を避けるためとみたほうがいい。

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         ◇    ◇

 宜野湾市、米軍普天間基地大山ゲート前。ここを訪れたのは10月下旬だった。

 「マーリンズ アウト!」
 
 叫びとともに赤い棒を振り下ろす。「命(ぬち)どぅ宝・さらばんじぬ会」が
オスプレイ強行配備に反対して2012年10月から続けている抗議行動だ。

 米兵は毎朝、市民の抗議を浴びながら、基地に入っていかざるを得ない。普天間基地撤去を求める沖縄県民の非暴力の持続的な抗議行動を通して、米軍関係者は沖縄の民意をいやでも知ることになる。

 抗議行動をする女性の1人は9月に「止めよう! 辺野古埋立て」の東京・国会包囲行動に参加した。辺野古ブルーが目立ち、本土と沖縄の連帯が広がっていることを実感したという。「私たちも福島・原発のことを知らなくては。安倍政権に歯向かうには、連帯の力だと思います」と話してくれた。

 宮平光一さんは抗議活動をつづける「命どぅ宝・さらばんじぬ会」の中心人物だ。宮平さんも他の参加者も、辺野古新基地建設には強く反対している。宮平さんは「基地を沖縄でたらいまわしすることは許されない。普天間は撤去しかない。新基地建設を止めるのは現場の闘いだ」と話す。

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 参加者の多くは、その足で辺野古に向かった。

 大山ゲート前の抗議行動も、反対勢力の妨害にあうことでは、キャンプ・シュワブのゲート前と同じだ。つい最近、米軍基地を肯定するオスプレイファンクラブのメンバーが宜野湾市に働き掛け、抗議行動参加者が利用していた駐車スペースが利用できなくなったという。

 「ノーベース!」「ノーウォー!」「ノーマーリンズ」。米軍普天間基地・大山ゲート前の頑張りが、そしてまた米軍普天間基地・野嵩ゲート前の頑張りが、米軍キャンプ・シュワブのゲート前の頑張りを呼ぶ。人々の連帯が辺野古新基地建設を阻止する力だ。

         ◇    ◇

 名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前。ブルーのテントの下に座り込みを続けている人たちがいる。辺野古ブルーの前で、ギターを演奏し、歌っている人がいる。「〽ケサラ ケサラ ケサラ ぼくたちの人生は・・・」と、女性の歌声がきこえてきた。

 この10年間、障害者運動に取り組んでいる川口真由美さんだ。京都から辺野古に通っている。

 「ここは沖縄のことだけではないんです。原発再稼働反対や安保法制つぶせとか、福祉のことに金をつかえとか、みんながいろんなことをスピーチしている。私も辺野古の新基地を止めることが自分たちの生活、子どもたちの将来にかかわっていることが分かってきました。人のつながりもすごく大事です。積み重ねて、積み重ねて、相手を思いやる心があれば、平和につながると思います」IMG_9106-1

 この場には、政治家や学者、歌手らさまざまな人たちがやってくる。さまざまな人たちがスピーチ・挨拶する。歌も踊りもある。「同時代に生きる人間としての相互に強い連帯感と人間愛をはぐくみ、確認される場所」と、元裁判官の仲宗根勇さんはいう。

 仲宗根さんは週3日、うるま市の自宅から座り込みに通っている。座り込みにくるたびに現場指揮者の求めでスピーチし、それを1冊の本にした。『聞け! オキナワの声』。那覇市のジュンク堂書店でサインセールをしたのは10月下旬。こんな1コマがあった。IMG_8915

 沖縄の反復帰闘争の論客として知られる人物がこういった。「闘いを法廷内に閉じ込めると市民運動は尻すぼみになる。政党に乗っ取られた運動ではいけない」

 仲宗根さんはこう応答した。「沖縄の闘いはあくまで民衆運動だ。政党色を出さない普通の市民としてやっている。だから、オール沖縄になった。戦後の沖縄の闘いは、民衆が作り上げている」。

 ゲート前の「新しい民衆運動」が、安倍政権の前に立ちはだかっている。それが沖縄の辺野古新基地建設阻止闘争の中核なのだ。

星英雄:辺野古新基地建設は現場の民衆の「力」で止める〈2015沖縄レポート⑥〉” への2件のコメント

  1. 仲宗根勇教授の同級生です。彼の変わらぬ闘争心に学んで名古屋から声援を送っています。
     翁長さんの冒頭の意見書及び陳述書には感動しました。

  2. 仲宗根先生とはうるま市島ぐるみ会議のメンバーとして活動させていただいています。元裁判官を経験した地位にある方が民衆と共に闘争現場で、炎天下の熱い日も、凍え冷える厳しい冬の日も先頭に立ち行動される姿に感動し、その人間性に敬意を表し、仲宗根先生を尊敬しています。これからも先生ご専門の法律家の立場から民衆が誤った方向に突き進まないよう導き、助言していただきたいと思っています。今後とも健康には留意なされて現場のリーダーとしてご活躍されること、心より念願しております。

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