【連帯・社会像】

福山真劫:頑張れば安倍・自公政権に勝てる 市民の力と野党共闘の力で参院選を

 「戦争法廃止」、「野党は共闘」を求める市民運動が、日本の政治と社会に大きなインパクトを与えています。小田川義和・全労連議長につづいて、福山真劫・フォーラム平和・人権・環境共同代表(戦争をさせない1000人委員会呼びかけ人)に話を聞きました。〈文責・星英雄〉

──総がかり行動実行委員会の「2000万」署名と野党の選挙協力が進展しはじめています。

 こういう署名が送られてくるんです。(統一署名用紙を持ってきて)Wさん99歳、新潟のケアハウスで生活している男性です。「5人兄弟ですが、長男、次男、4男、5男はみな戦争で亡くなった。自分だけが生きている。また日本が戦争するかもしれないという危機感で、署名しました。戦争で亡くなった兄弟たちの名前も書きました。」と書いてあるんです。

 こんな署名を受け取るのははじめてですよ。運動に取り組んできた人たちだけでなく、安倍政権の暴走に対する危機感がかなり広範な人々に広がっていることの表れだと思います。戦争法の廃止を求める2000万人統一署名」はすでに400万人を超える皆さんが署名してくれました。2000万人を確実に達成するよう頑張っています。

 総がかり行動実行員会は、戦争させない1000人委員会、解釈で9条壊すな!実行委員会、戦争する国ストップ!憲法を守り・生かす共同センターの3団体が中心になって運動を進めてきました。従来の日本の平和運動の3つの潮流、旧総評系の市民団体の平和運動、中立系の市民団体による平和運動、日本共産党系の市民団体の平和運動、この3つがいっしょに運動を展開してきたのです。3団体が統一してやっていることが、運動の広がり、そして政党などに強い影響を与えていることは間違いありません。この運動は戦後史のなかで、特筆されるべきことだと思います。

 去年の「戦争法案廃案!安倍政権退陣!8・30大行動」は、 国会周辺に12万人、全国では1000カ所以上で行動し、画期的な成功だったと思います。実感としては国会周辺は12万人どころではない、次から次へと人が湧き出してくる感じで集まってきました。シールズ、ママの会、学者の会などが参加したことも大きい。そしてやはり、3団体が統一して闘ったことが運動を大きくし、国民はひょっとしたら戦争法案を廃案にできるかもしれないという、可能性を感じたと思います。

 2月19日、民主、共産、社民、生活、維新の5つの野党が「戦争法廃止、安倍政権打倒、国政選挙での協力など」4項目で合意したことも、統一行動、共同の運動がもたらしたと思います。もちろん大歓迎ですが、やっと階段を1段上ったな、という感じもします。IMG_9513

 いままでなら、共産党に投票しても多数派になれない。一方、民主党は政権に失敗したことに対する信頼が回復していない。国民は投票することに、希望を持てなかったと思います。しかし今度は野党の選挙協力で、主権者国民は希望を持って参院選にかかわることができるのではないでしょうか。情勢は厳しいものがありますが、改憲勢力の3分の2獲得を阻止することがまず、第1歩です。そして次に与野党逆転したら憲法改悪の流れは止められる。戦争法の具体化も難しくなる。自分の1票で安倍政権の暴走を止めることができる。そんな選挙区を全国的にどれだけつくりだしていけるか。市民運動の側も政党の側も、国民の期待にこたえることが求められています。

──市民が政党を動かしはじめているということですね。

 私の感覚でいうと、もともと市民運動、平和運動が政党を動かしてきたと思います。いまはその運動がより強い影響を与えるようになったのではないか。民主党は、党内に集団的自衛権行使は合憲だという人たちもいます。それが、戦争法案廃案を求める市民の運動にかかわる中で、戦争法案は憲法違反だ、修正案などありえないと変わってきました。いまでは、共産党と連携できないといっていた人たちが民主党の中で少数派になったのです。野党は共闘しないと自民党に勝てないではないかという主権者の声に、政党自身が市民運動と一緒に闘うことで、変化してきたのだと思うのです。

 共産党も総がかり運動を高く評価して、この運動の流れの中で頑張るようになりました。
はっきりしていることは、野党共闘で闘わなければ参議院選挙も衆参同時選挙も勝てないということです。

──昨年、「革新懇ニュース」で、戦後の平和運動の分岐と分裂を乗り越えて、共同することが大事だと発言されました。その思いをきかせてください。

 先日、三重で木之本高校の同窓会がありました。同じクラスだった女性が、革新懇ニュースを読んだ娘さんと、そのことを話題にしたと話してくれました。

 なぜ共同に踏み込んだのか。

 戦後「憲法擁護」を掲げてきた平和団体、市民団体は、部分的勝利はありましたが、後退戦を強いられてきました。今回の「集団的自衛権の行使合憲化」は、「自衛隊の創設」以来の2度目の立憲主義を踏みにじる大解釈改憲です。日本がアメリカの軍事戦略の下で「戦争する国」になることです。そして次は憲法9条の改悪であり、安倍のいう「戦後レジームからの脱却」・軍事大国となるのです。そういう意味で、戦後最大の平和と民主主義の危機であり、憲法の危機です。

 あのアジア太平洋戦争の敗戦、300万人の日本人犠牲者、また加害者として、朝鮮半島から中国大陸、東南アジアへと侵略をかさね、2000万人を超える犠牲者をつくりだしたあの侵略戦争の上に築き上げた平和と憲法の危機です。現在を生きる平和団体、憲法擁護団体、市民団体、市民の責任が問われています。安倍自公政権の暴走を止めるための我々の武器は団結・連帯しか、ありません。

 安倍の暴走を止めるために本気になればなるほど、共産党がどうのとか、全労連がどうのとか言ってられません。「戦争法廃案・安倍政権は退陣」の旗の下にすべての勢力を結集させるしかありません。そうしないと勝てないのです。勝つためには、それこそ「総がかり」の闘いが求められていると思います。

 東京電力福島第1原発事故が発生したことに、私は痛恨の思いです。脱原発運動は原水禁(原水爆禁止日本国民会議)のメインの取り組みでした。私も原水禁代表を務め、長く脱原発運動をやってきましたが、結局あの事故を防げなかったことを思うと、胸が痛みます。運動のありようの総括が求められています。「さようなら原発」に結集しての取り組みが大きく高揚しています。しかし放射能は垂れ流しのまま、廃炉へのめどもたたない。それでもまた川内原発や高浜原発で再稼動です。日本は崩壊へ向かって突き進んでいるとしか思えません。

──民主党や連合にどんなことを期待しますか。

 民主党は野党第1党なので、日本の平和、民主主義、憲法に責任を持つべきです。責任を持てないなら野党面をするな、というのが私の考えです。私は民主党内の平和、民主主義、憲法を守り、脱原発を目指す諸集団を支持するし、多数派になってほしいと思っています。その流れが強くなっているから、戦争法廃止法案を野党共同で国会に提出できたし、選挙協力も可能になったと思います。

 連合はナショナルセンターだから果たすべき役割は大きいと考えています。日本社会で貧困・格差の問題は深刻です。さらに、非正規労働者は働く者の38%にもなっていて、社会保障制度も貧困な状態のままです。連合はぜひ、そのエリアでがんばってほしい。国民の大多数は憲法擁護、そして平和を求めているわけだから、連合も戦争法廃止、参院選で野党が共闘して勝利するために闘ってくれることを期待しています。

──沖縄の辺野古新基地建設阻止闘争を孤立させないためにも「本土」の闘いが重要ですね。

 私はあちこちでいっているのですが、安倍政権が辺野古の新基地建設をやめようとしないのは、東京・本土での私たちの闘いがまだ弱いからだ、何もしないのは共犯だ、と。翁長知事の『戦う民意』を読んでも、並々ならぬ決意が伝わってきます。自分は何をしているのだろうと、思わざるをえません。私たちはどれだけ沖縄に犠牲を強い続けるのだろう。

 総がかり行動実行委員会は、沖縄の新基地建設阻止闘争と連携して闘うことを掲げています。先日は、2万8000人が参加した辺野古新基地建設反対の2・21国会大包囲行動に、共催団体となって取り組みました。

 安倍政権は沖縄の分断を図っています。私たちも沖縄と連帯する「本土」の闘いを強化しなければならないと強く思います。

 ことしは戦争法廃止、辺野古新基地建設阻止、脱原発闘争を軸に、2015年を上回る大きな運動をつくりあげたい。2000万署名に取り組みながら、3月、4月、5月と運動を強化していく。2000万署名をやりきって、6月には野党総結集で昨年の8・30を上回る大集会を東京で行い、その力で参院選を戦いたい。

 野党共闘で勝利する絵を描き切ることが大事です。そのために、連合を巻き込むことなどに取り組むことも重要です。そして、頑張れば、安倍自公政権に勝てるという展望をもてるように。「共同」の力で、運動をそこまで高めていきたいと思っています。安倍の日本を崩壊に導く暴走を止め、平和・民主主義・脱原発の社会を築くため、今を生きるものとしての責任を果たしたい。

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