【連帯・社会像】

星英雄:沖縄は怒っている 「本土」は対岸の火事でいいのか

 沖縄は怒っている。女も男も、みんな怒っている。女性に対する性的暴行は、人権と尊厳を踏みにじる凶悪犯罪だ。許すわけにはいかない。またも米兵による女性暴行事件が13日、県都那覇で起きた。「本土」ではほとんど知られていないようだが、沖縄以外で暮らすからといって、われわれにとって「対岸の火事」であってはいけない。

 「基地の県内移設を許さない県民会議」が主催して21日、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前で「海軍兵による性暴力を許さない緊急抗議集会」を開いた。市民らが毎日、辺野古新基地建設阻止のため座り込みを続けている場所だ。2500人が参加した抗議集会は、「何度も繰り返される米兵による凶悪事件に県民の怒りは頂点に達している」と沖縄の怒りを表明し、事件・事故は基地があるが故に起こるとして、「抜本的対策は米兵の沖縄からの撤退と基地の撤去以外にない」と決議した。抗議集会を報じる琉球新報号外

 沖縄の怒りは広がっている。「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」は高里鈴代・糸数慶子共同代表らが記者会見し、抗議声明を発表した。1米兵の問題ではなく「駐留する軍隊による構造的暴力だ」と指摘する。

 那覇市議会も事件に対する抗議決議と意見書を全会一致で可決した。県議会も決議する予定だ。沖縄のどの抗議も、暴行事件と米軍基地の存在を一体のものとみていることで共通する。

 ニコルソン在沖米軍四軍調整官に直接抗議した翁長雄志知事も米軍基地をやり玉にあげた。「(米軍は)良き隣人」を口にするニコルソン氏に対し翁長知事は「良き隣人と言う言葉が、実行された試しがない」「この問題の根本は戦後70年で日本の面積のたった0・6%に73・8%の米軍専用施設がずっと置かれていることだ」と、怒りをあらわにした。

 沖縄以外の地域ではどうか。私の周りでは、事件の発生自体をほとんどの人が知らなかった。全国的に見ても、ほとんどの人は知らないのではないか。メディアの取り上げ方がまるで違うからだ。

琉球新報3月15日1面(14日は休刊日で、新聞は発行されてない。)

琉球新報3月15日1面(14日は休刊日で、新聞は発行されてない。)

 

毎日新聞東京本社発行13版社会面。トップは「劇団員殺害」事件。

毎日新聞東京本社発行13版社会面。トップは「劇団員殺害」事件。

朝日新聞東京本社発行13版第2社会面。1日遅れ、第2社会面の最下段に。

朝日新聞東京本社発行13版第2社会面。1日遅れ、第2社会面の最下段に。

 

 沖縄と「本土」の新聞をみてほしい。事件の発生を報じた15日付の琉球新報(14日付は休刊のため発行されていない)は、1面のほぼすべてをこの問題に割いている。その他、2、3、5、34、35面を使って怒りを表明している。その後も連日のように報じている。沖縄タイムスも同様だ。

 「本土」については、東京本社発行の各紙をみてみた。
 
 14日付けで報じたのは毎日新聞、日本経済新聞、東京新聞、産経新聞の4紙。朝日新聞は15日付で小さく報じたが、日本最大の発行部数といわれる読売新聞はまるっきり無視した。
 
 東京新聞は15日付で第2社会面トップで「沖縄米軍トップに知事抗議」と報じ、17日付け社会面で「沖縄米軍トップが謝罪」と報じた。毎日も17日付で小さく「米兵の外泊を禁止」と報じた。社説でこの事件を取り上げた新聞は1紙もない。

 2004年8月、米海兵隊のヘリコプターが沖縄国際大学に墜落・爆発・炎上し、一歩間違えば大惨事になった事件。米軍が事故現場を統制し、消防・警察が検証さえできない日米同盟の実態があらわになったとき、「本土」のメディアのあまりにも小さな扱いに沖縄は驚愕したと聞いた。メディアのギャップはいまも変わらない。

 辺野古新基地建設に反対する「オール沖縄」の発端は、1995年9月、在沖米海兵隊員による少女暴行事件に対する抗議の8万5000人の県民大会だったといわれる。しかし、事件は後を絶たず、繰り返される。「米軍が駐留する限り事件は起きる」(糸数慶子・「女たちの会」共同代表)のだ。

 女性の人権・尊厳を守ることと米軍基地は両立できない。辺野古新基地建設反対と安保関連法(戦争法)廃止を求めることは、安倍政権に対する共通の闘いだ。

 「本土」のわれわれが今度の事件に無関心であっていいはずがない。

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