【福島・沖縄からの通信】

星英雄:復興の希望を託す桜まつり 全村避難の飯舘村で

 飯舘村に遅い春がやって来た。村民の1人は桜の開花をみて、「また春が来たと、特別な感慨に浸る」という。4月17日、いつもは人気のない伊丹沢の集落に村民やボランティアの人たちが集まってきた。「第4回復興さくらまつり」だ。東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きてから全村避難を続ける飯舘村。復興への希望が「ここだけだ」というほどの集いになった。飲み、食べ、話し、宴は盛り上がった。

 この辺りの桜は2700本もあるというが、この日満開を迎えた。植えたのは会田征男・ツタ枝さん夫妻。ボランティアの人たちの植樹もある。「来年は3000本に仕上げたい」と征男さん。思いは村民の「絆」だ。

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 あいにくの雨と強風で、祭りの宴は会田宅が会場になった。会田さんのあいさつで宴ははじまった。「桜の愛は素晴らしい。来年帰村という話だが、私は戻って花咲か爺さんになってやっていきたい。毎年、立派に咲かせます。末永いお付き合いを」

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 桜の植樹や草刈りなどのボランティア活動をしてきた「ちば・とうほくボランティアバス」のアマチュアバンドが歌と演奏を披露した。征男さん作詞・作曲の「飯舘復興の桜」や「川の流れのように」などなど。メンバーの1人は、「会田さんの歌のように地元の人でないと歌えない歌を僕らも一緒に歌っていきたい。きょうは僕らが植えた桜を見ながらいっしょに楽しめたらいいな」と話してくれた。

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 宴が最高潮に達したのは、桜色の法被を着たツタ枝さんら女性たちが征男さんの歌に合わせ「飯舘復興の桜の踊り」を踊ったときだった。

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 宴を前後して、「帰村」について聞いてみた。来年3月、飯舘村は「帰村宣言」をして村民に帰村を促すことになっている。

 同じテーブルを囲んでいる40代から90代の女性13人に聞いた。1人は「戻らない」。他の12人は帰村する。しかし、帰村する人たちの中で、子供や孫が一緒だという人は1人誰もいなかった。「安心だから帰るんじゃない。帰れというから帰るしかない」「収入がない」「わずかな年金だけだ」などと、理由を話してくれた。

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 別のテーブルを囲んでいた、かあちゃんプロジェクトのキムチづくりで知られている高橋トク子さんは「戻らない」。征男さんは「自分は戻るが、戻んない人が多いんです」といった。

 元副村長の長正増夫さんはこう話した。「飯舘は根底からばらばらにされた。戻れない人もいるが私は戻るつもりだ。村が再生することは人口その他、放射線があっては難しい。でも、この地で自分の人生を満足したい」
 戻る人にも戻らない人にも、原発事故は残酷だ。

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