【福島・沖縄からの通信】

星英雄:海兵隊は撤退せよ 沖縄の怒りは日米両政府に向かっている

 これが沖縄の怒りだ。炎天下、6万5000人の人々が一堂に会し、「海兵隊の撤退」を要求した。その背後には、会場には来られなくとも怒りを共有するほとんどすべての沖縄県民がいる。19日、米軍属の女性暴行殺人事件に抗議する「元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾! 被害者を追悼し、海兵隊の撤退を求める県民大会」(主催・辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議)が那覇市で開かれた。米軍統治下でも、日本復帰後の日本国憲法下でも、そして今も。基地あるがゆえに沖縄の人々の命と人権、人間としての尊厳が破壊され続けている。このことに対する沖縄の怒りを、だれもが共有したい。この日、沖縄に連帯する集会が41都道府県61か所で開かれた。東京では国会周辺に1万人が集まった。沖縄問題は日本問題だ。
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  県民大会で採択された決議は、繰り返される米軍関係の犯罪や事故に対し「県民の怒りと悲しみは限界を超えた」として、「県民の人権と命を守るためには、米軍基地の大幅な整理縮小、なかでも海兵隊の撤退は急務である」と訴える。そのうえで、日本国首相や米国大統領らに3点、要求した。
1、日米両政府は、遺族及び県民に対して改めて謝罪し完全な補償を行うこと。
2、在沖海兵隊の撤退及び米軍基地の大幅な整理・縮小、県内移設によらない普天間飛行場の閉鎖・撤去を行うこと。
3、日米地位協定の抜本的改定を行うこと。

 日米両政府に矛先を向け、海兵隊の撤退を要求したところに、沖縄県民の怒りの強まりがある。

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 県民大会は被害者への黙とうの後、被害者の父親のメッセージ」を紹介した。「次の被害者を出さないためにも『全基地撤去』『辺野古新基地建設に反対』、県民が一つになれば可能だと思っています。県民・名護市民として強く願っています」と訴えた。遺族の願いがストレートに伝わってきた。IMG_9916

 主催者の「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」の4人の共同代表=稲嶺進名護市長、呉屋守将金秀グループ会長、高里鈴代島ぐるみ会議共同代表、シールズ琉球の玉城愛さんがあいさつした。

 呉屋さんはこういった。「静かに被害者の冥福を祈ることが追悼ではない。彼女を最後の犠牲者とするべく、具体的な有効策を講じることがわれわれに託された責務だと思います」

 玉城さんは、声を詰まらせ涙ぐみ、スピーチした。

 「安倍晋三さん、日本本土にお住いの皆さん、今回の事件の第2の加害者は誰ですか。あなたたちです。しっかり沖縄に向き合っていただけませんか」「パトカーを増やし、護身術を学べば私たちの命は安全になるんでしょうか。ばかにしないでください。軍隊の本質は人間の命を奪うことです」

 「バラク・オバマさん。アメリカから日本を解放してください。私たちは奴隷ではなく、あなたや米国市民と同じ人間です。オバマさん、米国市民の皆さん、被害者に謝ってください」

 「同じ世代の女性の命が奪われる。もしかしたら私だったかもしれない。私の友人だったかもしれない。生きる尊厳と生きる時間が軍隊によって否定される。命を奪うことが正当化される。こんなばかばかしい社会をだれがつくったんですか」

「命には深くて誇るべき価値があるという沖縄の精神を、声高々とあげていきましょう」

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 玉城さんにつづいて、4人のお若者たちが「変わらない過去 変えていこう未来」と題するメッセージを発した。沖縄差別を告発し、沖縄と日本の将来を思い、事件と向き合う自分自身を語った。

 ──男子学生「日本の安全保障とはいったい何なのでしょうか。一番の脅威は、私たち隣人を襲う米軍、米兵の存在ではないでしょうか」「日本政府がいう国民に沖縄の人は含まれているのか。憲法がうたう国民に沖縄の人はふくまれているのか。私たちに平和に幸せに生きる権利はあるのか」

 「沖縄、この島に住む人は、何もおびえることなくウォーキングをしたいだけなのです」「この島に住む人は何の心配もなく、いってらっしゃいと、息子、娘、恋人を送り出したいだけなのです」「この島に住む人は、なんの不安もなく家族が恋人が待つ家庭に帰りたいだけなのです。私たちはただ、普通にこの島で生きていきたいだけなのです」

 ──女子学生「県外出身の私は長年、米軍基地による被害を沖縄の人たちに押し付けてきた『加害者』として、今回の事件、沖縄の苦しみの歴史に、自分自身が加担しているのではないかと、自分を責め続ける日々でした」

 「しかし、繰り返されるべきでない事件が起き、尊い命が奪われ、尊厳が傷つけられているいま、沖縄の悲しみ、怒りを自分自身の悲しみ、怒りにしてこの事件に向き合おうとしています」

 ──男子学生「ぼくの大好きな沖縄が、温かい優しい、争いを一番嫌う沖縄の人が、いったい何をしたというのでしょうか。なぜ、いまだに米軍基地に悩まされるのでしょうか」「多数の人の安全を保障するために、少数の沖縄県民は犠牲になり続けています。いまの民主主義に沖縄の人はふくまれていません」

「ぼくと同い年の女性の命が奪われました。沖縄からすべての基地をなくしてほしいというのは、わがままなのでしょうか。私たちも夢をみたい」
「いまここにいる私たちが、武力に頼らない平和の築き方を発信していくカギとなる1人1人です。日本の民主主義革命は沖縄から起こります」DSC01052

 ──詩で表現した女子学生「ぐるぐるとした気持ち。事件の受け止め方がわからなかった。どうしてこんなことが起きたのか。怖さ、悲しさ。たくさんのはてな(?)が出てきた。簡単に命が奪われる現実が怖かった」

 「基地があるゆえの事件だと思いつつ、そうだとは言えない気持ちがあった。命の重み、どうしたら守れるのかわからなかった」

 「事件を政治に使うなという意味が、分かるようで分からなかった。おなじようなことは2度と起きてほしくない」

 翁長雄志知事は、こうあいさつした。「21年前、あの痛ましい事件を受けた県民大会で2度とこのような事件を繰り返さないと誓いながら、政治の仕組みを変えることができなかったことは、政治家として、知事として痛恨の極みです」DSC01077

 「政府は県民の怒りが限界に達しつつあることを理解すべきです」「このような事件が2度と起きないよう、日米地位協定の抜本的見直し、海兵隊の撤退、削減を含む基地の整理縮小、新辺野古基地建設阻止に不退転の決意をここに表明します」

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 県民大会は、沖縄の代表的な歌手の1人、古謝美佐子さんが「童神」を歌って幕を開けた。
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 大会前には、こんな一幕があった。在日米国大使館は在日アメリカ人に対し、県民大会会場周辺に近づくなと呼びかけた。非暴力の県民大会を「暴力に発展する」かのように描く問題はあるにしても、沖縄県民の怒りをアメリカがどれほど恐れているか、その表れでもある。

 日米両政府が日米同盟強化を叫ぶとき、沖縄が犠牲にされる。しかし、「辺野古新基地建設ノー」は沖縄の揺るがぬ総意である。米軍犯罪の根を断ちたいという沖縄の積年の思いが今日、全基地撤去の県民世論をかつてなく高めている。沖縄が怒れば、日米軍事同盟が揺らぐ。県民大会の「海兵隊撤退」要求ははきわめて抑制された要求であることを日米両政府は知らなければならない。

          ◇      ◇

        県民大会決議

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