70年ぶりに選挙権年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられた。
なぜ18歳選挙権か。
1つには、世界の流れでした。国連で採択され、日本でも批准された「子どもの権利条約」では子どもとは18歳未満と定義されている。つまり、18歳以上は「大人」です。
世界的に見ると18歳までに選挙権が認められている国は、全体の約92%です。だから、日本の18歳選挙権は世界の流れに沿ったものなのです。
2つには、日本国内の事情がある。2007年の憲法改正国民投票法で(2014年から)投票権は18歳以上になった。選挙権は20歳・国民投票権は18歳という矛盾です。
国会の付帯決議で「2年以内で選挙権年齢を18歳に」となった。
公職選挙法が改正され「選挙権を18歳とする」で2016年6月施行になった。
その初めての18歳以上選挙が今度の参議院選挙です。
今年3月高校を卒業した卒業生に、卒業直後
「いよいよ選挙権も得たし、一人前の大人になってきたね。」とたずねると、
「そう言われても、わかんないよ。」「テキストが配られたけど、よく分かんない。」と答えが返ってきた。
「社会の授業で、政治の学習もしたでしょう?」と聞いても、「したかなあ?」と返ってきた。
高校の現場で教壇に立っている先生に聞いてみると次のような声があった。
「高校生は、学校内でも学校外でも政治活動を禁止されていたんです。なにが政治活動なのかははっきりとしていなかったので、生徒も教員も神経質ではあった。教員に対しては政治的中立という名の下に自主規制しているところがあった。」
多くの卒業生が「なんか分かんない。」「よく知らない。」と言うのは何となく納得できる。
1969年の文部省通達により、高校生の学校内外の政治活動が禁止された。「通達」は法律ではないが、法律以上に学校現場では具体的に適用されている。
「高校生の政治活動が禁止」は憲法に保障された集会結社の自由・表現の自由などの権利侵害であるにもかかわらず、不問にされてきた。さらに国会で批准された「子どもの権利条約」(意見表明権・表現、情報の自由・思想、良心、宗教の自由・結社、集会の自由が含まれる)にも違反している。
多くの高校生は、政治・経済について(テストのための)知識として知っている。授業があるし、テストだってある。
しかし、自分の学校生活や身の回りのことと政治・経済とがどのように結びついているか具体的には知らされていない。
だからといって政治的なことに無関心だとはいえない。
今年の2月、埼玉県志木市において映画の上映会をした。映画は、福島の原発事故と向き合う高校生たちの姿を描いたドキュメンタリー映画である。高校生にも見てもらいたいと地元の高校門前でチラシを配ったとき、多くの生徒が興味を示して言葉を交わした。原発に賛成だという生徒もいた。また、安保法制についても「おれは賛成だ」という生徒もいた。チラシを配るときに言葉を交わして、生徒たちは必ずしも政治的に無関心ではないと感じた。
18歳選挙権になり、総務省と文科省は高校生に副教材として「私たちが拓く日本の未来:有権者として求められる力を身につけるために」を配布した。実際授業も行われている。
高校生に政治活動を禁止しておいて、「有権者として求められる力」とはおかしな話だが。
副読本では、選挙の仕組み・議員の役割や今の若者の投票率が低いことを知らせている。学校において選挙のための準備として情報の集め方や他の友だちと意見交換することを授業ですることになっている。模擬選挙もするという例も記載されている。
実際に選挙で投票行動をするためには、自分自身の意志がなければならない。
明るい選挙推進協会の調査によると(2015年7月調査、15歳~24歳)
小中高で児童会生徒会の選挙があったかどうか
小学校 30.2%
中学校 73 %
高校 55 %
実際の選挙の模擬選挙・投票をするという授業も否定は出来ないが、実際に自分の考えで候補者を見て判断するという経験が少ない。文科省は学習指導要領で小中学校の学習内容を細かく決めて、その通りにすすめること学校に求めている。
特別活動に関しては、児童会や生徒会選挙実施を求めているわけではない。
若者に小中高での児童会・生徒会選挙の経験は意味あるものだと思う。自分たちが選んだ児童会・生徒会役員には関心を持ってみている。その経験がないので「選挙って何?」という若者がいても不思議はない。だから選挙によって選ばれた議員によって政治が行われるという実感がないのかもしれない。
同上の明るい選挙推進協会の調査で
政治や経済に関するニュースを何から得ていますか。
テレビ 55.9%
新聞 8.5%
インターネット 22.9%
NHKの調査によると(2015年11月調査、18,19歳の国民)
選挙で投票に行くか
必ず行く 22%
行くつもり 38%
今の政治に
大いに関心 11%
ある程度 42%
今の政治に
大いに満足 1%
ある程度 23%
あまり満足せず56%
全く満足せず 18%
政治が変わってほしいか
大きく 27%
ある程度 61%
私の近くの高校生の意識と調査での若者の意識を重ね合わせてみると、若者は社会の政治・経済についてはかなり関心を持っているし、不満もあり、変えていきたいと思っていることが分かる。その意識が選挙の投票行動になっていないことは若者の投票率からわかる。
選挙を通して社会を変えられるという仕組みが分かっていないから投票行動にならないだろう。選挙で多数を獲得した勢力が政治の中心をになっているということがよく分からないのだと思う。
2014年衆議院選挙の投票率を見ると、60歳代は68.28%、20歳代は32.58%投票数で1240万票と420万票である。比較すると若者の声が政治に反映しずらいことになる。
人口は2014年時で60歳代は約1800万人、20歳代は約1300万人だ。
若者の投票が60歳代なみに上がれば投票数が890万票になり、若者の声が政治に反映すると言える。
若者が様々な社会問題について真剣考え、自らの意見や主張を発信することが出来るならば社会を大きく変える力になっていくだろう。
今回の参議院選挙の時だけでなく、これからの高校をはじめ学校教育で正しい政治教育をやり、子どもたちの政治活動の自由を十分に保障することができたら、若者たちの政治離れ、低投票率を防ぐことが出来る。
そうすることで社会を大きく変えることが出来る力となる。