沖縄県名護市安部(あぶ)の浅瀬に米軍機オスプレイが墜落したのは13日夜。翁長沖縄県知事や稲嶺名護市長らが厳しく抗議し、県民の怒りは収まらない。欠陥機オスプレイの配備に沖縄は、10万人余の県民大会を開くなどして当初から強く反対してきた。名護市議会は16日、オスプレイ配備撤回、辺野古新基地建設の中止・撤回を求める決議を可決した。オスプレイはいらない、米軍基地は撤去せよ、が沖縄県民の声だ。名護市で暮らす2人に聞いた。〈文責・星英雄〉
久志常春:オスプレイは「不時着」ではなく墜落だ
オスプレイの墜落現場は私の家から1キロメートルという近さだ。13日(火曜日)の夜9時半ごろ、自宅の上空で米軍ヘリの超低空の旋回飛行がはじまった。サーチライトを下に向けた2機編隊だった。1機は左回り、もう1機は右回りの超低空飛行だ。真っ暗な海をサーチライトで照らす。その時はまだ、米軍機の墜落は知らずにいたが、これは何かあったなとピンときた。
安部の部落の真ん中に私の家がある。国道331号線に、米軍車両、機動隊のバスが次々に到着した。30台ほどあったと思う。高江に行っていた機動隊のバスも全部集結したようだった。国道は一方通行にされ、米軍、警察車両はさらに増え、パニック状態だった。米軍ヘリの超低空旋回は夜中の0時ころまで続いた。
オスプレイは、「不時着」ではなく墜落だと思う。私は7年前に定年を迎えて、よく海に出ている。ベトナム戦争や湾岸戦争などに投入されたコブラという戦闘ヘリが超低空でこちらに向かってきて手を振ることもあった。射撃の標的にされていると感じた。
私はこれまで、米軍機が砂浜に不時着したのを4、5回見ている。普天間基地から飛びたった米軍機はキャンプ・シュワブの前を通り、安部王留島(あぶおーるじま)の上空を飛び、高江に向かう。米軍機はいざというとき、砂浜に不時着することになっているのだと思う。
しかし今回のオスプレイは安部の部落に約800メートルまで近づき、落ちた場所は、大きな岩がごろごろある浅瀬だった。オスプレイをコントロールできない、「不時着」でないからこそ、砂浜ではないこんな危険な場所に降りてしまったのだと思う。現に、オスプレイは大破してバラバラになってしまった。
ニコルソン4軍調整官の発言は軍人、指揮官としては当然だと思うが、名護市民、沖縄県民の命と人権とは相いれない。ニコルソンにそう発言させているのは、日本の政府、安倍首相だと思う。国会の多数をいいことに、高江のオスプレイパッドを強行し、辺野古新基地も工事を再開しようとしている。日本政府が、米軍をより横暴にさせている。
オスプレイの墜落事故は起こるべくして起きたと思う。基地がある限り、不安は尽きない。私の周りでは、基地や米軍に無関心だった人たちが今度の墜落事故を契機に、「怖い」というようになった。ここの海は海産物の宝庫だ。沖縄に基地はいらない。
松田藤子:私たち市民は辺野古新基地建設を許さない
今朝(15日)、現場を見てきました。本当にびっくりしました。部落まで5、600メートルかそこらしか離れていない。1歩間違ったら、オスプレイが部落に落ちて、大惨事になるところだったのよくがわかりました。米軍基地がある限り、常に危険と隣り合わせです。安心して暮らせません。いつまでこういう空の下で暮らさなければならないのか。怒りが募ってきました。
オスプレイ自体、欠陥機です。人為的ミスとかいっているが、原因はなんであれ、被害を受けるのは私たち住民です。それなのに、アメリカの4軍調整官は事故を美化しています。「県民や住宅への被害がなかったことは感謝されるべきだ」などという、あの言葉が許せません。逆でしょう、なにいってるのこの人は。
謝罪はしない。威張って、高飛車で、沖縄県民をなんだと思っているのですか。
日本政府も米軍と口裏を合わせるようにして「不時着」といってるが、オスプレイはあれだけ機体がバラバラになったではありませんか。私たちは墜落と言いたい。米軍も日本政府も、できるだけ事故を軽く見せたいというのが、みえみえです。
現場は2重に封鎖されていました。規制線を張って、立ち入り禁止区域をつくったのです。私たちは外側のところで止められました。稲嶺進名護市長も現場に近づけませんでした。どういうことですか。まるで、事故現場が米軍基地内であるかのように、市長も住民も現場から締め出されました。私たちの土地なのに、生活の場なのに、市長も入れない。
2004年、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落しましたが、その時も米軍に日本の関係者が締め出されました。沖縄はまるで植民地です。悲しい、悔しい。
同じ日に別のオスプレイが、普天間基地に胴体着陸する事故が起きました。オスプレイは本当に危険です。そんなオスプレイがこの辺りをいつも飛んでいます。窓ガラスはガタガタ、家が揺れ、寝られないという訴えもききます。
宜野座村城原区ではオスプレイが毎日物体を吊り下げて民家の上空で訓練しています。オスプレイが墜落した安部の現場の海は、住民たちがもずくや貝を採る海、生活の場です。近くにはカヌチャというリゾートホテルもあります。どうしてオスプレイが必要でしょうか。
名護の高校を卒業した若い女性が元海兵隊員に殺されて、沖縄では全基地撤去の声が高まっています。私たち名護市民は辺野古の新基地建設を許しません。(辺野古・大浦湾に新基地をつくらせない住民の会会長)
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稲嶺進名護市長は沖縄防衛局長に対し、オスプレイの配備撤回と辺野古新基地建設の中止・撤回をもとめ、抗議した。(クリックすると全文が現れます)