【沖縄とともに】

星英雄:嘉手納基地を撤去せよ〈2017沖縄レポート①〉

 「アメリカファースト」を売りにするトランプ米大統領に、辺野古新基地建設反対の沖縄の立場を理解してもらうのは、無理がある。安倍政権が辺野古新基地建設工事を再開し、反対運動は重大な局面を迎えている。心強いのは、沖縄県民や本土の人々が抗議行動をつづける現場の反対運動が意気盛んなことだ。1月下旬、嘉手納、伊江島、辺野古を取材して見たこと、感じたことを分けて、報告します。

 1月27日、まだ暗闇の午前6:16。那覇市、第1天久のバス停から名護行きのバスに乗って嘉手納基地第1ゲートに向かった。車中、那覇で今週取材した新基地建設をめぐるいくつかの問題を、思い出していた。県政与党は大丈夫か。

 辺野古新基地建設反対闘争は、県民の強い意志と運動ではじまった。翁長県政の誕生も、県民の闘いの中で実現したことだ。しかしいま、翁長県政と辺野古新基地反対運動の現場との間に、隙間風が吹いているように感じた。沖縄の有力な市民運動団体「沖縄平和市民連絡会」が辺野古埋め立て承認の「撤回」を知事に要請した。「撤回」が決め手になるわけではないが、翁長知事は黙殺した。

 安慶田前副知事口利き問題が明るみに出た。あちこちの食堂でも、現場活動家の間でも、そしてタクシー運転手も「これは響きますね」と異口同音に語った。

 ところが、与党の県会議員たちに危機感はまるでないようで、驚いた。自分の取材でも、地元紙の琉球新報、沖縄タイムスをみても、県政与党が安慶田問題で知事に直言した痕跡は見当たらない。現場サイドからは「県議たちは知事にものが言えない」との声が相次いで聞こえてきた。安慶田問題がどれほど翁長県政、新基地建設反対運動に否定的な影響を与えるか。このような局面できちんと直言できてこそ政治家ではないか。

 県政与党とは逆に、危機感をもらした人物がいた。翁長知事が心を許す数少ない相談相手の1人といわれる。「翁長は甘い。安慶田をかばいすぎだ。このままでは県民が萎えないか、それが一番心配だ」。

 翁長知事への信頼は現場でも揺るがない。私も、翁長知事が「辺野古新基地建設反対」の立場を変えるとは思わない。ただ、翁長知事が誠意を尽くしても、安倍政権の例をみない凶暴な工事推進は変わらない。トランプ政権も「辺野古唯一」だ。対政府交渉の黒子役、安慶田前副知事は失脚した。政府交渉は仕切り直しの好機を迎えていると思う。県政と現場の運動が一体となって闘ってこそ、辺野古新基地建設阻止の道筋が見えるのではないか。

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 第1ゲート前のバス停、「航空隊入り口」で下車したのは7時少し前。ようやく空がわずかに明るさを見せてきた。すでに米軍嘉手納基地第1ゲート前では数人の人たちが抗議行動に取り組んでいた。静かに語りかける男性の声がきこえてきた。

 「ここは昔は農業地帯、のんびりした北谷町でした。米軍がフェンスを張り巡らして飛行場にしたのが72年前、今では毎日、爆音の中での生活、恐怖の中での生活を余儀なくされています。理不尽です」

 「ここから米軍機は世界の紛争地帯に飛び立っていっています。1刻も早く米軍をアメリカに帰らせないと、安寧な市民生活はできません。平和的生存権は憲法で保障されています。平和で静かな生活を取り戻したい」

 マイクを握っていたのは喜友名稔さん。毎週金曜日、嘉手納基地の撤去を求める「嘉手納ピース・アクション」だ。基地に入っていく米軍関係者に「カデナ アウト」「ノー ヘノコ」「ノー タカエ」「ノー オスプレイ」などとシュプレヒコールをし、「沖縄を返せ」の合唱が響いた。

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 米軍嘉手納基地は、嘉手納町のほか沖縄市、北谷町の1市、2町にまたがる極東最大の米軍基地。3689メートルの2本の滑走路を持ち、東京ドームの425倍の広さを有する。

 嘉手納基地は朝鮮戦争を控えて拡張された。元は同じ北谷村だった地域が分断され、北谷村と嘉手納村に分かれることを余儀なくされた。2つの村は今では町となって存続している。

 同じく「嘉手納ピース・アクション」が行われている第5ゲートに回ってみた。「琉球の自己決定権」「脱植民地」の幟が目に飛び込んできた。「CLOSE KADENABASE」「CLOSE ALL BASES」等々のプラカードを持つ人々が基地に向かって拳を突き上げた。

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 世話人の伊波義安さん(75)は「嘉手納は危険な基地だ」と話す。「私が中学2年のとき、女の子が拉致・強姦され、殺されたという由美子ちゃん事件が起きた。エイサーの夜だった。女の子がいないので、私の父親が探しに行った。翌日発見されたが、草を片手に握り、唇をかんでいた。その後も、米兵によるレイプ事件は絶えない。昨年は嘉手納基地に勤務している軍属の男が20歳の女性を殺した。私の体には怒りがしみこんでいる」

 嘉手納基地所属の米軍機の事故も絶えない。1959年6月、F100ジェット戦闘機が石川市宮森小学校に墜落した。児童を含む17人が死亡、重軽傷者210人の大惨事となった。嘉手納町発行のパンフは、復帰後も沖縄で頻発する米軍航空機関連事故を告発している。そのうち、「92・2%が嘉手納飛行場で発生しており、町民は常に危険と隣り合わせの状況下にある」と指摘している。

 昨年12月、名護市安部の海岸に墜落したオスプレイに給油していたのは嘉手納基地のMC130だった。

〈嘉手納基地から発進するF15C戦闘機=1月27日撮影〉

〈嘉手納基地から発進するF15C戦闘機=1月27日撮影〉

 

〈嘉手納基地から飛び立つMC-130特殊作戦機=1月27日撮影〉

〈嘉手納基地から飛び立つMC-130特殊作戦機=1月27日撮影〉

〈EP-3E電子偵察機=1月27日撮影〉

〈EP-3E電子偵察機=1月27日撮影〉

 米軍嘉手納基地にはF15戦闘機など8種類の米軍機が常駐し、MV22Bオスプレイやハリアー攻撃機などが飛来する。まさに、世界の紛争地への出撃拠点なのだ。

 伊波さんは「ピース・アクション」の狙いについてこう話す。「米軍が一番怖がっているのは嘉手納基地の撤去だ。嘉手納はアメリカの侵略戦争の発進基地だ。嘉手納を閉鎖・撤去しない限り、沖縄は平和にならない。これを契機に、全基地撤去につなげたい」

 第5ゲートのピースアクションは元裁判官の仲宗根勇さんや伊波さんが、不当に逮捕・勾留されている山城博治・沖縄平和運動センター議長の釈放を求める地裁前集会への参加を呼びかけて、この日の抗議行動を終えた。

星英雄:嘉手納基地を撤去せよ〈2017沖縄レポート①〉” への2件のコメント

  1. オール沖縄は自民公明の一部と革新政党の妥協の産物だ。知事の安保容認も副知事の悪事も、所詮自民だからと思い無視している。反政府的知事を継続して誕生させたことのメリットは大きい。だから黙って支持している。新基地を造らせないという民意が大同団結を支えていると考えられる。二大政党制なら常勝沖縄だ。これが沖縄から日本を変えていこう!の真意である。

  2. ニュースが少し遅れている。知事への撤回要請は平和市民連絡会は4番手5番手である。1月13日に2団体がすでに知事公室長らと会見大きく報道もされた。この時の状態を共同通信が配信していた。

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