【連帯・社会像】

星英雄:「格差も貧困もノー」を合言葉に日本社会を変えよう

 2月19日、東京・日比谷野外音楽堂で、「格差・貧困にノー!! みんなが尊重される社会を!」テーマに、「2・19総がかり行動」が行われた。会場の外まであふれる4000人の人々が、集会後、「格差社会、貧困社会はもういやだ!」とコールし、銀座までパレードした。「格差・貧困」をテーマにした総がかり行動は初めてだ。運動を若い世代に引き継ぎ、さらに大きくして安倍政権打倒につなげたいという思いが込められている。

 野外音楽堂では、「戦争をさせない1000人委員会」の藤本泰成さんが主催者あいさつ、東京大学教授の本田由紀さん、民進、共産、社民、自由の各党、貧困・格差の問題に取り組む人たちもあいさつした。ここでは、本田由紀さんと筑波大大学院の諏訪原健さんのスピーチ(概略)を紹介します。DSC05849

本田由紀:若い新しい世代のためにも

 いまの日本がどんな国、どんな社会になっているか。人々の収入の中で消費支出の割合は上がり、食品の占めるエンゲル係数すら上昇しています。資産の一極集中が強まり、一方では貯金ゼロの世帯が増加、他方では高額の資産を持つ人が増えています。

 労働市場は人手不足は強まっているが、不安定で賃金の安い非正規ばかりが増えています。生活保護や奨学金の受給者が増えているが、生活保護はひどい侮辱にさらされ、奨学金は返済地獄が待ち構えています。90年代の経済や労働市場の低迷のもとで、有効な政策が打たれなかったために、団塊ジュニア世代のベビーブームは政策的につぶされました。その結果、日本はすごい勢いで少子高齢化を遂げています。DSC05853

 日本は世界の先進諸国のなかでも悪い値は最高水準。よい値は最低水準です。悪い値が非常に高いのは長時間労働、高等教育の学費の自己負担額、相対的貧困率、自殺率など。逆に、よいほうが望ましい値は非常に低い。社会保障、教育、労働市場政策への財政支出、最低賃金額、生活保護の捕捉率、生活満足度、幸福感、政府や企業への信頼感などです。

 女性が教育や経済、政治の場に進出できるチャンスは、世界の中でもあきれるほど低い。難民や移民の受け入れも、あきれるほど冷酷な国です。研修生や留学生という名目で、外国から来た人たちを奴隷のようにこき使っています。

 近隣国や在日の人々に対しても、反吐がでそうなヘイトスピーチをまき散らすデモが、反ヘイト法成立後も行われています。なんだこれは。いったいこの社会はどうなってしまったのか。

 敗戦後、大半の時期に政権についていたのは自民党です。60年代は、アメリカの庇護を受けて、経済さえ成長させておけば、家族には賃金が回り、賃金から子供の教育費などを支払うことができる。だから政府は財政支出を抑えることができる仕組みが機能していました。

しかし、バブル経済崩壊後のより明確な社会構造のはたんを経ても自民党は従来の仕組みの見直しを怠ってきました。90年代以降、経済の長引く不況で、雇用や賃金が崩れていったとき、政府はむしろ非正規雇用を増やしたり、社会保障を削減したりすることで、人々の苦しい状況を悪化させる方向で動いてきたのです。現在の首相は背後にある超保守的な団体とともに、人々を国家に対してよりいっそう服従させるための法律や政策のために邁進しています。

 あのアメリカ大統領におもねり、戦争に加担することで一部の企業をうるおそうとし、オリンピックやカジノという浅はかな、カンフル剤のような景気刺激策に頼ろうとしています。

 税金で動いている政府が人々の生活を助けず、自分で生きろ、家族や地域で勝手に支えあって生きろ、そして国の役には立てと、勝手な要求をふりかざしてきているのです。

 みなさん、確かにこの国の現状は吐き気を覚えるほどひどいものです。でも、あきらめたら終わりです。あきらめることは権力や財力を握る層には思うつぼです。私たちはあらゆる手段で、日常生活のそこかしこにあるひどい状況に対して声をあげていかなければなりません。

 望んでこの国に生まれたのではなくても、わたしたちすべてがこの国の中で生きています。そうであるからには、私たちは現実を直視し、これからこの国で生きてゆく若い新しい世代のためにも動かなければなりません。DSC05859


諏訪原健:若者が社会に出るためにローンを組まなければいけない社会を変えよう

 ぼくが返済しないといけない奨学金の額は1600万円になりました(えー、っと場内がどよめいた)。ぼくが何か語ったときに投げかけられるのは、容赦ない自己責任論です。借りたほうが悪い、大学までなんで進学したんだ。政治なんかにかかわっている暇があれば働けばいいじゃないか、と。そういう言葉ばかり投げかけられる中でぼくは何も語りたくありません。

 自分の人生が、貧困の事例として見世物みたいに消費される。だからこそ本当は語りたくない。だけど、語らないといけない状況が目の前に迫ってきています。この状況を何としても変えないといけません。

 いま日本の大学生は、半数が奨学金を借りています。平均の借入額は300万円にもなります。借金を抱えて社会に出ようともがき続けているんです。出ていく先の社会もろくな状況じゃない。

 日本社会は異常に、教育におカネをかけない社会です。教育に対する公的支出が非常に低い。日本の奨学金のほとんどは利子付きで返さないといけない。若者が社会に出るためにローンを組まないといけない。こういう社会でいいんでしょうか。

 企業に就職すればどうにかなるという状況ではありません。社会の現実にあわせて社会の制度も変わっていかなければなりません。いま真剣に考えるべきタイミングがきています。

 ぼくは正直言って政治にも社会にも期待していませんでした。ただ、ここには希望があります。みなさんといっしょに声を上げ、皆さんと一緒に取り組んでいけばこの問題は変わっていくと思います。少しでも社会の未来に対して希望が持てるようなものに変わっていくと思います。

 変えるのは私たちです。ともに頑張っていきましょう。

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