オスプレイは欠陥機だ。米海兵隊普天間基地所属のMV22オスプレイが名護市安部の海岸に墜落したことに対し、稲嶺進名護市長も名護市議会も、名護市の55の行政区すべてがオスプレイの配備・訓練の撤回を要求した。県議会をはじめ沖縄がこぞってオスプレイの撤去を要求した。しかし米軍は、機体に問題はないとして、飛行・空中給油訓練を再開し、日本政府も追認した。沖縄の人々の命と安全は、眼中にないというのか。
オスプレイの事故があるたびに、米軍のいうことは決まっている。「人為的ミスであり、機体は問題ない」。日本政府も同じ言葉を口にする。しかし、根拠は示さない。今回もそうだ。米軍は今日まで、墜落事故解明に必要な墜落機オスプレイの飛行記録を明らかにしていない。それどころか、ニコルソン在沖4軍調整官は、オスプレイの墜落は「沖縄を守った」などと、事態をさかさまに描くありさまだった。
オスプレイは開発段階から次々と問題が発生し、運用開始後も事故が多発している。オスプレイの構造的欠陥はこれまでもさまざまな指摘がある。その1つは、アメリカのローレンス・コープ元国防次官補の証言だ。
オスプレイの事故報告書を読み解いて、「わずかなミスで墜落」とインタビューにこたえている(朝日新聞2012年9月2日付)。
「操縦ミスの『許容範囲』が非常に小さく、ほんのわずかなミスでも墜落につながる」「(一つの機体が)ヘリから飛行機に転換するというのは新しい技術で、ほぼ100%正しく操縦しないと問題が起きる。ヘリと飛行機の機能を持たせるのは素晴らしい考えに聞こえるが、 技術的に無理がある」
なぜ米軍はオスプレイの配備にこだわるのか、という問いに「海兵隊は、長年にわたって財政的にも心理的にもオスプレイに注力し、客観的評価ができていない」「オスプレイで戦闘能力を高めることは、海兵隊の存在意義を確保するためにも非常に重要だからだ」と答えている。
「わずかなミスで墜落する」のは、他の飛行機やヘリコプターにはない、オスプレイの構造からくる致命的欠陥だ。沖縄の人々は米海兵隊の”人身御供”か。
今回のオスプレイ墜落は、MC130特殊作戦機との給油中に起きた。米国防研究所でオスプレイの主任分析官を務めたレックス・リボロ氏は今回のMV22オスプレイ墜落事故について「ヘリモードで補給することができないという事実は、予期されなかった航空機の欠陥である」と、構造的欠陥を指摘している(琉球新報2016年12月16日付)。
名護市安部の浅瀬に墜落したオスプレイの操縦席から流出した緊急時の「確認書」も、構造的欠陥を裏付けている。
防衛省は1月5日、「MV-22オスプレイへの空中給油再開について」の説明で、「給油ホースとオスプレイの右のプロペラが予期せぬ接触を起こしてしまい」「オスプレイの空中給油に際して、このような接触が発生したのは、今回が初めてである」と言っている。
しかし、「接触」は予期されたことだった。オスプレイの「確認書」は、ホースなどがプロペラにぶつかれば「大惨事を引き起こしかねない」(琉球新報2月4日付け)としている。このため、繰り返し注意を喚起し、墜落した水中からの脱出方法までも記している。落ちるべくして落ちたのだ。この緊急事態を当然の前提として、オスプレイは名護の、沖縄の、日本の上空を飛び回っているのだ。
オスプレイの事故率は、普天間基地に配備された2012年10月~2015年12月末までに、重大(クラスA)事故発生率は3.99件。それ以前は1.93件(10万時間当たり)だから、ほぼ2倍に増加した。運用を重ねた結果がこれなのだから、異常な増加率といわなければならない。
1月28日午後、オスプレイ墜落現場を地元・安部の久志常春さんに案内してもらった。砂浜を少し進むと、むき出しのごつごつした石や岩が目につくようになる。砂浜はサンゴが砕けてできたという。墜落現場近くから海を見ると、向かいに安部王留島(あぶおーるじま)があった。右手遠方が大浦湾。安倍政権が新基地建設を強行する埋め立ての場所になる。
白く波立っているところがサンゴ礁だという。そこから海岸までの浅い海を「イノー」と呼ぶ。
久志さんは安部の海について話した。「ここにはジュゴンの餌になるザン草がたくさんある。ジュゴンは寝そべって少しずつ進む。大食いで、ザン草を大量に食べるが、食べつくすことはない。根本1センチメートルは残す」「石の下には生き物がたくさんいるので小さい魚が寄ってくる。それを食べる魚も寄ってくる。イセエビ、ウナギ、タコが共存している」
「オスプレイが墜落したころは、ゴロゴロしたたくさんの石は海水に隠れていた。オスプレイのパイロットは、機体をコントロールできずに海に突っ込んで石にぶつかり、機体が大破したんだと思う」
アメリカに日本が降伏して戦争が終わったころ、山中に潜んでいた旧日本軍が安部の集落に降りてきて、手榴弾を爆発させて、魚をとってこいと、住民に命令したという。軍のいじめに、自殺した人もいた。久志さんはこんなエピソードも話してくれた。
「ここは大浦湾に負けない、いい海ですよ」
名護市には4つの米軍基地がある。キャンプ・シュワブ、辺野古弾薬庫、キャンプ・ハンセン、八重岳通信所。名護市の面積の約11%を占めている。米軍による実弾の射撃訓練が昼も夜も行われ、米兵が引き起こす事件や米軍機墜落事故は絶えない。
基地被害は多々あるが、オスプレイ墜落の恐怖は今に続いている。オスプレイは低空飛行や夜間訓練を繰り返し、物資を吊り下げての飛行訓練もおこなっている。騒音・低周波をまき散らして名護市民を苦しめている。
1月9日、オスプレイが名護市辺野古の上空を低空飛行し、市民を不安に陥れた。近くの沖縄工業高等専門学校の屋上に渡嘉敷健琉球大学准教授が設置した計測器は、周波数20ヘルツの低周波音101デシベルを記録した。100デシベルは、電車が通るときのガード下のうるささに相当するとされている。耐えがたいうるささだ。
オスプレイは低空飛行を繰り返し、窓ガラスをガタガタ鳴らし、建物を揺する。低周波音は体に響き、頭痛や吐き気、耳鳴りやイライラ、不眠などをもたらす。
キャンプシュワブだけでも5つ(+1)のオスプレイ・パッド(着陸帯)がある。そのほか、東村高江や国頭村、伊江島、そしてキャンプ・ハンセンには27カ所のオスプレイ・パッドがある。
名護市はいまも基地被害に脅かされている毎日だ。その上、辺野古に新基地がつくられるとどうなるのか。ジュゴンがくる貴重な海が埋め立てられ、東京ディズニーリゾートの2倍の巨大米軍基地ができる。そこに、軍艦が接岸し、オスプレイが100機配備される。オスプレイの騒音を上回るF35B戦闘機もくるのではないかとの不安も広がっている。
人間も自然も、米軍の脅威にさらされ続けている。それが沖縄だ。こんな理不尽なことを容認できるのか。
渡嘉敷健(環境工学・騒音)琉球大学准教授は「沖縄の問題は本土にとっても他人事ではない」と指摘する。
「騒音(低周波音)と墜落の危険があるオスプレイの訓練が全国的に展開される。横田基地にはオスプレイが配備されるし、F35Bも飛ぶ。騒音は公害なのだから、反対の立場の人だけでなく、自治体がデータを収集し、各自治体が連携してデータを国民に提示する必要がある。沖縄の問題は全国の問題なのだ」