安倍政権は2月6日から海上工事を本格化させ、沖縄県の中止要求を無視して大型のコンクリート・ブロックを海中に投下しはじめた。ジュゴンが生息し、「宝もの」といわれる貴重な大浦湾を破壊する暴挙だ。辺野古新基地建設反対の現場のリーダー山城博治沖縄平和運動センター議長を不当に逮捕し、4カ月以上も長期勾留している。安倍政権と司法が一体となって人権を侵すのはアメリカへの奉仕のためだ。海上保安庁はカヌーの女性を海に突き落としたり、男性を意識不明になるまで暴行したり。安倍政権の手段を選ばない非道な新基地建設強行に対し、沖縄はゲート前で座り込み、海上では抗議船とカヌーで非暴力の抗議活動を続けている。(写真はクリックで拡大)
1月30日朝、抗議船「勝丸」に乗船させてもらった。船長は牧志治さん。ほかに漁師のKさん、ジャーナリストのSさん、合わせて4人で汀間漁港を出港した。船とはいっても小さく、海の冷たい風をまともに受ける。船のスピードと横風に、何かにつかまっていないと、海に放り出されそう。南の沖縄なのに、かなり寒い。昼前から風が強くなり、雨も降るという早朝の予報だ。
臨時制限区域を囲い込んだ浮具(フロート)を右に見て、抗議船は進んだ。このフロートは、去年までのとは違うという。支柱を取り付け、そこにロープを通している。沈んで見えない部分には、錘のような突起物がつけられている。危険きわまりないことが、カヌーの侵入を防ぐ名目で実施されている。
いつの間にか、抗議船は制限区域の内側を走っているようだ。船を止め、錨を下ろしたところで、海上保安庁側のスピーカー音が聞こえてきた。
「ここは立ち入り禁止区域となっている臨時制限区域です。直ちに退去してください」
勝丸からは「海を壊すな! 作業をやめよ!」の抗議の叫び。牧志船長はいった。「闘いで勝ち取ったわれわれの権利だ。臨時制限区域を認めることは屈辱以外のなにものでもない」
臨時制限区域は、住民らの海上抗議活動を排除し、埋め立て工事を進めるために、3年前に日米両政府の合意でつくられた。名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸の立ち入りを常時禁止する水域を大幅に拡大したものだ。以来、この水域の付近は国家の暴力が吹き荒れている。臨時制限水域に立ち入ったとして、カヌーに乗って新基地建設に抗議中の芥川賞作家の目取真俊さんが逮捕された例もある。
臨時制限区域内で埋め立て工事を進めるために、抗議する人々を排除するのが安倍政権。ロープでは抗議を抑えきれないとみたのか、フロートに緑の網を張り出した。
数艇のカヌーが、フロートを乗り越えて制限区域内に入り、抗議しだした。それを海保のボートが追い回す。海保がカヌーに足を入れて押さえつけ、抗議する女性を排除にかかる。「今日はカメラの目があるから、まだましだ」と牧志船長。
牧志船長は、安部の浅瀬に墜落したオスプレイを、海中からスクープ撮影したカメラマンだ。無残に大破したオスプレイは創刊したばかりの写真誌『ぬじゅん NUJUN』に掲載されている。ご一読を。
早めに下船して米軍キャンプ・シュワブのゲート前の現場にいった。正午。座り込み参加者が基地に向かって怒りの拳を突き上げた。
1月31日午前6時半、米軍キャンプ・シュワブのゲート前。すでに、まだ明けない薄闇のなかで、10人ほどの人たちが抗議行動をしていた。「辺野古新基地NO」「全基地撤去(CLOSE ALL BASES)」のプラカードが見えた。北海道旭川市からきたご夫婦、80歳を超えてなお静かに立ち続ける沖縄の女性がいた。
背後のゲートには「US MARINE CORPS FACILITY 米国海兵隊施設」「許可なく立ち入った者は日本国の法令により処罰される」と。ここはどこなのか。「独立主権国家」という日本に、「治外法権」の米軍基地が多数存在する。米軍基地被害─性暴力、殺人、米軍機の墜落・・・。日常的に人間としての尊厳が侵されている。そのうえさらに、辺野古に新基地を建設してアメリカに献上しようと安倍政権。見て見ぬふりをすることは許されない。
辺野古新基地建設反対の闘いは、民衆の闘いとしてはじまった。辺野古の浜で、地元のおじぃ、おばぁたちが座り込みをはじめて4701日目。ゲート前の座り込みは970日目を迎えた(3月2日現在)。この間、辺野古新基地建設に反対する辺野古・名護・沖縄、そして沖縄に連帯する本土の人々の非暴力の抵抗が不屈の時を刻んできた。
辺野古の浜の座り込みテントには、こう記されている。
「勝つ方法はあきらめないこと」──。