【連帯・社会像】

福山真劫:従来の延長では安倍政権に勝てない 総がかりを超える総がかり運動を

 平和フォーラム・戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会共同代表の福山真劫さんが3月21日の「連帯・共同21」のシンポジウムで、総がかり運動の今後の方向性について「総がかりを超える総がかり運動を」と提起しました。これまでの延長線上に安住していては安倍政権に勝てない、勝つためにはこれまでの運動の枠組みを広げ、参加組織の自己改革も求められる、という内容です。運動を大きくするためにはとくに、貧困・格差の問題と向き合う必要があることも強調しています。以下は、総がかり運動のこれまでとこれからを語った、シンポジウムでの福山報告の大要です。〈文責・星英雄〉

福山真劫さん〈撮影・藤田観龍〉


 小森(陽一=シンポジウムのコーディネーター)さんから、韓国の留学生になぜ日本では安倍を倒せないの、と聞かれるという話があった。私も韓国の人たちと交流すると、日本の平和運動、民主主義運動は本気なんですか、といわれることがある。平和、民主主義を闘い取ってきた韓国の運動と世代の厚み、重みみたいなものが違うと感じることがある。

 神部(紅=シンポジウムの報告者の1人)さんの話を聞きながら、総がかり運動というものは、あそこに手を伸ばさなかったら勝てないな、という気がする。一定の生活と権利を保障された者たちだけの運動では、限界があるという思いがしている。

 布施(祐仁=シンポジウムの報告者の1人)さんから、安倍政権のでたらめさの話があった。それらを聞きながら総がかり運動を今後どうしていくかを、深刻に考えたところです。

 総がかりの運動がどういう経過で今に至り、今後どうしようとしているのか、運動体の立場で話をしたい。

 総がかり行動実行委員会(福山報告レジメ4ページ参照)は、平和、民主主義、憲法擁護、そして脱原発を含めて、そのエリアのほとんどの団体が総がかり行動実行委員会に結集していると思います。中心は、「戦争をさせない1000人委員会」、「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」、「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター」の3団体です。

 総がかり運動は従来の運動とは違います。戦後日本の平和運動、民主主義運動、脱原発運動もそうですが全部分裂してきた。労働運動もそうです。それぞれみんな言い分はあるが、分裂していたら勝てないんです。やはり、「なんとかしなければ」という思いの中で一点共闘を結成する、そういうことで2014年12月に総がかり行動実行委員会の結成となったのです。

 それぞれ3団体の言い分はいろいろあったが、いまは戦後の平和と民主主義の最大の危機だ。従来の運動には限界がある、安倍に勝とうと思ったら従来の運動の延長線上では勝てないので共闘組織をつくったということです。それぞれの組織が議論して運動組織をつくったかといえば、全然議論はしていない。統一しよう、共闘しよう、という決意1本でみんな踏み切った。そういう意味では、いまに生きるものとしての責任をはたそうという判断なんです。

 たとえば脱原発の取り組み1つにしても、それぞれが言い出せばいっぱいある。しかし、それ以上に安倍の路線は危険だ。安倍を倒すためには統一するしかない、ということで踏み出していった。そして2015年の戦争法案廃案、安倍政権退陣の1本で運動を組み立ててきたわけです。この運動は共産党系の運動でもない、非共産党系の運動でもない。それを統一した運動だというので広がってきた。2015年の運動は従来に比べて画期的に広がってきたと思います。

右から、小森陽一(連帯・共同21共同代表、東大教授)、神部紅(首都圏青年ユニオン前委員長)、布施祐仁(ジャーナリスト、平和新聞編集長)、福山真劫(平和フォーラム・戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会共同代表)の各氏〈撮影・藤田観龍〉

 政党との連携もそうなんです。それぞれ、共産党に要請して頑張ってもらう。社民党や当時の民主党に要請して頑張ってもらう、ということだったのを総がかり行動実行委員会として野党共闘──民進党、共産党、社民党、生活の党に要請して野党が連携して頑張ってもらおう。国会の中でも、民進だ、共産だ、社民だ、自由だとやっていては勝てるはずがない。だから横につながってやろうと踏み出していきました。

 基本的には毎週木曜日の行動、ずっと積み重ねてきました。特徴的なのは、2015年5月3日、横浜での憲法集会に4万人が集まった。従来、5月3日の憲法記念日は、社民党系、共産党系、私ども平和フォーラムは別々で、合わせて7~8000人という感じです。だけど、いっしょにやった途端、4万人が集まる。韓国の朴槿恵退陣運動の100万、50万にはかなわないが、それでも従来の運動のありように比べれば、本当に増えています。

 2015年の戦争法案廃案、安倍政権退陣の8・30大行動は国会前12万人、全国1000カ所で展開した。結果として9・19に強行採決されたが、その時も連日1万、2万の人たちが国会周辺にかけつけた。それは総がかり行動だ、野党共闘だという統一した動きに、勝てるかもしれないという希望を見ていたからだと思う。強行採決で1面では敗北したが、勝つ闘いの展望も見えてきたかなと思います。

 その後、総がかりの次の闘いをどうするか、意思統一の2015年11月文書、ホームページをみてほしい。総がかりは1点共闘だったが、これを続けるか続けないかの議論があって、継承する、続けることを確認しました。そのときに打ち出したのが戦争法廃止の2000万人署名運動です。

 最終的には戦争法廃止の署名は1580万筆集まった。最近の署名では画期的です。そして毎月19日の行動を重ねてきた。当時は沖縄の問題もあり、沖縄への連帯に取り組もうと沖縄の課題を入れました。つぎに、野党共闘は院内共闘だけでなくて、参議院選挙をにらんで、選挙にもかかわっていこうとなっていった。しかし、総がかり行動としてはできないので市民連合を2015年12月に結成して、2016年の参院選に参加していきました。

 総がかり行動に結集していた人たちは、従来は、共産党系は政党支持の自由だ、ということで団体ではなく個人でやる。私どものところは、連合が選挙をやるからそれにまかせておく。市民は市民としてそれぞれやってきた。

 しかしそれでは勝てないんです。市民連合で政党にお願いして野党統一候補をつくろうよと、参院選挙に臨んでいく。32の1人区全部で野党共闘が成立する。中身がない野党共闘ではなく、2016年6月4日に市民連合と野党共闘の政策合意もできました。

 結果として敗北したが、野党共闘によって、確実に新しい展望をつくった。選挙も終わって去年10月、もう1回総がかり運動の総括をした。そこでどういう方針を出したか、総がかり運動を継続すると同時に連帯の輪の拡大を提起したんです。

〈撮影・藤田観龍〉

 貧困格差社会がすごく進行している。権利を侵害されている人々がわれわれの総がかり運動に参加しているのか、参加できるのか。あるいは関心があるのか、という問題意識を持ちました。

 総がかり運動もカンパはたくさん集まる。それなりに生活が安定しているから出せるんだと思う。もちろんいろんなものを削って出している人もいる。だけど、安倍の暴走は止めないといかんが参加できない、カンパもしたいができない人がたくさんいる。それをどうするか、総がかり運動の最大の課題だと思っています。

 ナショナルセンター連合の問題もある。連合のなかでも自治労とか日教組とか旧総評系の労働組合は参加しているが、連合の組合員650万のうち200万人余りで、多数派は総がかり運動に参加していない。

 課題としては、戦争法、沖縄、貧困・格差、共謀罪の4つに拡大した。沖縄の課題も、取り組まないと申し訳ないというレベルから、何もしないのは新基地建設に加担すること、共犯だという意識の深化がある。

 一方、われわれの運動の弱さは、福島で原発事故が起きてしまった。みんな原発反対、原発ゼロといってきた。もちろん東電や自民党政治の原発推進政策の結果ですよ。だけど止められなかったことの責任を考えないといけない。沖縄でも、県民はみんな辺野古新基地に反対といっている。県民の意志として決めている。新基地建設反対は、沖縄からすれば当然の権利です。もっと言えば、未来に対する今を生きるものの義務です。

 はっきりしているのは、沖縄に対する本土の連帯が弱いから安倍が暴走している。2014年、2015年は、なぜ本土、東京で沖縄と連帯する声が大きくならないのだというのが沖縄の活動家の見方だったと思う。その後私たちの側に、本土、東京で闘わなければ、不作為であれば、私たちは、共犯・加害者ではないかという自覚が生まれてきた。そのことを運動の中で認識してきたと思います。

 総がかり運動は戦後最悪の安倍・自公政権に対抗して闘ってきたが、安倍政権を揺さぶりはしたものの退陣・打倒を勝ち取ってはいない。

 そこで、もう1回、闘いの枠組みを考えそれぞれの組織の自己改革をやろうということを、総がかり行動実行委員会のなかで提起しています。安倍政権に対抗するわれわれの闘いの枠組み──総がかり行動実行委員会、市民連合、野党共闘、この枠組みで勝てるのかが、問われている。

 「沖縄県民の民意尊重と基地の押し付け撤回を求める全国統一署名」が121万集まっているが、これじゃ足りない。きょう閣議決定の共謀罪は、平和運動、民主主義運動、脱原発運動、われわれの闘いをつぶすために作ろうとしているものだ。

 総がかり行動実行委員会は4・6共謀罪反対大集会、4・19沖縄にもう基地はいらない、の大集会を準備している。私が思うのは、朴槿恵退陣運動のことだ。つい最近、韓国の人たちと意見交換してきたが、民主労組など昔からの既成の諸団体は頑張っている。だけど、それを超える爆発的な市民の盛り上がりがあることがすごい。

 日本はまだ既成の組織が行動提起、集会の場所を設定する力を持っている。韓国は既成の組織は場所を設定するだけ。そこにいろんな市民が、それぞれのグループが結集する。朴槿恵退陣では、光化門広場にセウォル号の抗議のテントが建てられていたが、韓国市民の怒りの表れだ。そして、朴槿恵と友達の女性との間のひどい癒着、政治の私物化で、一気に火が付いたということだと思う。マスコミはハンギョレ新聞だけだったのが、主要なマスコミが朴槿恵退陣の論陣を張るように動いたことも大きい。

 市民の運動には拠点が必要だと感じる。沖縄の座り込みには、キャンプ・シュワブ前、辺野古の浜、高江でもテントを張るなどの拠点がある。韓国の朴槿恵退陣運動でも、子ども連れや若者、恋人同士でも安心して参加できる光化門広場がある。日本の場合、経産省前のテントはあるが、国会周辺で家族連れで安心して参加できる場所がない。

 そういうことも含め、「総がかりを超える総がかり運動を」ということで、安倍政治を許さない勢力を総結集したい。従来の団体、保守系団体、宗教団体、生協関係、農民団体、もろもろの人々で安倍政政治を許さない1本で集まって大集会をやろう。今年の5月3日の憲法集会は、去年の5万~6万人を上回る、10万人集まる大集会にしよう。8月下旬、11月と、10万を超える大集会をやろう。韓国の朴槿恵退陣運動に迫るものにしたい。

 同時に、選挙で勝たないとだめだと思う。衆院選挙は野党共闘でやらないと勝てない。まだ民進党への信頼は回復していない。共産党は一定の人たちの支持はあるでしょう。社民党もそうかもしれない、自由党もそうかもしれない。それで安倍政権を倒せるのか。答えははっきりしていると思う。参院選の経験を踏まえて、野党共闘を本気でつくる。大衆運動の爆発と野党共闘。政策をすり合わせてもらって、野党共闘を作り出す。それがいまの政治家、政党の義務ではないかと思います。それに乗らない野党は舞台から降りてもらうしかない。

 4月6日の集会か4月13日の街宣行動までに、野党と市民連合、総がかり行動実行委員会との政策協定ができるかなと思う。それがまず一歩だ。それと全国各地、あちこちちで市民連合の働きで野党共闘を作り出す動きが強まっている。

 各党の方針をみると、民進党は、野党の力合わせを国民が求めている。市民のきずなを軸として野党連携の強化を進めていく、と。時代を読める民進党の人たちは、野党共闘をしなかったら民進党が惨敗するとわかっている。共産党の大会方針は新しい時代の始まりだといって、総がかり行動と市民連合を高く評価している。社民党も自由党も大会を開いたらそういうことになるでしょう。

 連合は『週刊金曜日』で、神津会長が市民連合の中野晃一さんと対談している。戦略と戦術を分け、戦略的には共産党との共闘はないが、政党同士が戦術的に野党共闘を位置づけ、力を合わせるのは当然だといっている。それなら、連合を含めて闘えば、安倍政権と対抗できる。そうすれば安倍なんかに負けないと思っている。

 総がかり行動実行委員会としては、そんなことを思いながら、「総がかりを超える総がかり運動」をつくらないと安倍に勝てない。従来の延長線上に安住していてはどうしようもないということで提起させてもらいました。

福山報告レジメ

 

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