【連帯・社会像】

星英雄:安倍政権の「政治の私物化」を許すな

 森友学園問題とマスコミはいうが、このネーミングは正確ではないと思う。いまや安倍政権問題と呼んだほうがいい。主役は安倍晋三首相、安倍昭恵・首相夫人、そして籠池泰典・森友学園前理事長、の3人だ。彼らは教育勅語など戦後の日本では否定されてきた時代錯誤の思想で結ばれた同志である。この関係の中で、国民には隠されて、国有地の8億円値下げ売却はおこなわれた。しかし安倍政権は、国会の多数議席にものいわせ、真相を隠蔽しようとしている。政治の私物化を許してはならない。

 安倍首相は「私も妻も一切かかわりがない。我々がかかわっていれば、責任をとる」と国会で明言した。ところが、事件のキーパーソンである昭恵夫人の証人喚問には応じない。8億円値引き売却に関する調査もしない。首相の地位を守るため、解明に必要なことに一切応じないのが安倍政権なのだ。憲法の国民主権の原理に照らしても、許されることではない。

 この問題は、さまざまに報じられているが、まずは物的裏付けに基づいて見ていこう。

 谷査恵子さん(安倍昭恵・首相夫人付きの政府職員)が籠池泰典氏に送ったファクス(財務省に照会した結果を報告)。その前に、籠池氏が谷氏に宛てた手紙。この2つは、安倍首相も国会審議のなかで認めざるを得なかった事実だ。

 籠池氏が谷氏に宛てた2015年10月の手紙。内容は3点ある。①定期借地契約を買い取りにしたい②賃料は半額に③工事費の立替払い、の3点の要望だ。

 手紙は次のように書かれている。①「資金調達都合があったので、10年以内に購入希望したところ、10年定借という当方にとっては切迫感のある契約となった。」「学校が事業用地で定借10年は短かすぎ(10年以内に買取し、できなければ建物を取り壊して現状に復する)」「50年定借として早い時期に買い取るという形に契約変更したいのです」「買取価格もべらぼうに高いのでビックリしている」。

 ②「安倍総理が掲げている政策を促進する為にも国有財産(土地)の賃借料を50%に引き下げて運用の活性化を図るということです」「学校の用地が半値で借りられたらありがたいことです」

 ③「学園側が工事費を立て替え払いして平成27年度予算で返金する約束でしたが、平成27年度予算化されていないことが9月末発覚し平成28年度当初に返金されるという考えられないことを生じています」

 2015年11月15日に谷氏から籠池氏へのファクスが「要望」に対する「回答」になっている。谷氏が財務省に問い合わせ、「国有財産審理室長から回答を得た」という内容だ。

 「先月頂戴しました資料をもとに、財務省国有財産審理室長の田村嘉啓氏に問い合わせを行い、以下の通り回答を得ました。」「大変恐縮ながら、国側の事情もあり、現状ではご希望に沿うことはできないようでございますが、引き続き、当方としても見守ってまいりたいと思いますので、何かございましたらご教示ください。」「なお、本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」。

 2つの文書をどう評価するか。それは籠池氏の要望が実現したかどうかで決まるといっても過言ではない。

 ①は、2016年6月に8・2億円の値引き、1億3400万円で売買契約を締結、早期買い取りが実現した。②は、10年分割払い、支払額は月額100万円程度の形で実現。③は、2016年4月6日に支払われた。

 安倍首相は「ゼロ回答だ」としているが、現実に照らせば籠池要望は「満額回答」を得ている。籠池氏自身も、国会の証人喚問のなかで、「神風が吹いた」と証言。その直後の外国人特派員協会で、「やはり安倍昭恵夫人というお名前によって物事が動いたんだろうという風に推察されます」と答えた。

 そして、昭恵夫人の背後には安倍晋三首相その人がいる。その影響力はまさに「神風」と表現するにふさわしい。安倍首相は行政権のトップである。実質的に、各省庁に君臨している。

 事実関係をさらに確定するためには何が必要か。昭恵夫人や財務省幹部らの証人喚問が必要だ。疑惑をもたれている大阪府の松井知事は、証人喚問に応じると態度表明している。財務省の関係資料も提出させなければならない。これらにことごとく、安倍・自民党が反対している。

 国民が事実関係の解明を強く求めていることは、各種世論調査に明らかだ。国会の証人喚問後、テレビ朝日系ANNの世論調査では国有地が籠池氏側に8億円も安く売却された問題について、83%が「国会で事実をはっきりさせる必要がある」としている。新聞、テレビの各種世論調査はほぼ同様の結果だ。

 交渉記録は廃棄したという財務省が、いくら正当性を主張しても根拠はない。そもそも公文書はなんのためにあるのか。
 
 公文書管理法は第一条で国民主権の理念を強調したうえで、公文書は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であり、「国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする」と定めている。政府は、自身の活動を国民に説明する責務がある。まして、8億円の国民の財産が消されたのだ。

 公文書管理委員会委員長代理の三宅弘弁護士も、財務省の対応を厳しく批判する(3月25日、TBS『報道特集』)。
「8億円も下げたら、会計検査院の対象になると分かり切っている。最低5年間は保存しないといけない」「交渉記録の廃棄を、もし故意にやっていたら、刑法の公用文書等毀棄罪に該当する」。「理財局長なんかは、首飛ぶ問題だと思う」「自分たちで作った法律をちゃんと守らなければ、戦前に情報隠ししたのと同じようなことが起きてしまう」

 安倍政権が政治を私物化することはこれだけではない。政権に異を唱える人々に対し、あらゆる手段を行使して弾圧するのも、憲法を無視した政治の私物化といえる。辺野古新基地建設の強行、反対運動のリーダー山城博治氏に対する不当な5か月間の拘束。防衛省の日報隠し。国民に沈黙を強いるような共謀罪も強行しようとしている。

 日本国憲法は、国民が主権者であることを宣言している。安倍首相を頂点とする行政府の在り方を問わなければならない。

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