【連帯・社会像】

星英雄:安倍首相はトランプ米大統領のポチなのか 憲法9条こそ総選挙の争点だ

 安倍首相が自己保身のために解散してはじまった今回の総選挙も最終盤だ。改憲勢力が3分の2以上の議席を獲得するという予想もある。野党が一本化できていない選挙区では、どの党に投票するか迷いがあるともいわれる。確かな判断基準の1つは、憲法9条に対する姿勢ではないだろうか。

 歴代政権は軍事力の行使に慎重にならざるを得なかった。憲法9条があるからだ。しかし安倍首相は違う。憲法違反の集団的自衛権を行使する安保関連法(戦争法)を強行した。北朝鮮核問題の解決には、アメリカのトランプ大統領といっしょに北朝鮮に圧力をかけつづけることだという。

 これに対してドイツのメルケル首相はこう言った。「私たちはいかなる種類の軍事的解決も絶対にふさわしくないと考えており、外交的努力に力をつくす」。平和的・外交的解決に努力しない日米の政権担当者こそ、問題の解決を妨げている。

 安倍首相もトランプ大統領も、核兵器に依存することでは世界の双璧と言っていい。これまで米大統領が一応掲げてきた「核兵器のない世界」という目標を、トランプ政権は再検討する方針と伝えられている。安倍首相は党首討論で、「核抑止力を否定してしまっては、日本の安全を守りきることができない」と、アメリカの核にしがみついている。

 今年は国連で核兵器禁止条約が採択された。採択に貢献したNGO、ICAN〈アイキャン=核兵器廃絶国際キャンペーン〉がノーベル平和賞を授賞した。この核兵器廃絶の世界の流れに逆らっているのが、被爆国日本の安倍首相である。

 安倍首相は「核抑止力」というが、国民は誤解しないほうがいい。「核抑止」とは軍事的には、核で必ず報復することを意味する。これが国際的な理解だ。つまり、アメリカが核兵器を用いて北朝鮮を攻撃するという脅しだ。アメリカの「核抑止力」に頼ることは、核戦争を前提にしていることなのだ。日本国民を犠牲にしても核戦争で相手をやっつける、というのが「核抑止力」というものなのだ。

 「核抑止力」が日本国民の安全を守るというのは、デマである。

 対北朝鮮で「万が一」があると、加藤勝信・拉致問題担当相は言った。「万が一」とは、米朝間の戦争、それも核戦争を指すのは明白だ。安倍首相の圧力一辺倒の北朝鮮対応が、核戦争に結びつきかねない、と告白したといえる。

しかし、それに続く発言は、これも明らかなデマだ。加藤氏は先日、拉致被害者家族らと面会し、次のように語った。北朝鮮で「万が一が起きた場合にも、米国、韓国や(北朝鮮に)大使館を持つ国々と連携を深め、拉致被害者の安全確保に全力を尽くしたい」(朝日新聞10月15日付け)。

 アメリカに核攻撃をされた北朝鮮で、居場所も不明の拉致被害者をどうやって救出するというのか。

 沖縄・高江で米軍の大型ヘリが炎上・大破した。あわや大惨事である。翁長沖縄県知事は「これこそ国難」、「日本政府に当事者能力がない」と安倍政権を批判した。米軍は安全確認も再発防止策もないままに飛行を再開した。沖縄の問題は日本の問題である。

 広島の上空で、米戦闘機が火炎弾を使った訓練をした。国民の生命・安全が脅かされているのは、沖縄だけではない。日本全体が、米軍の好き勝手にされている。日本は手も足も出ないのが現実だ。安倍首相はこの国難をどう解決するのか。

 「トランプ(米大統領)と組んで突っ走っちゃ危ねえぞって(首相に)言ってんだけどね」とは、かつて安倍首相と親密な仲だった亀井静香・前衆院議員の弁である(毎日新聞10月16日付け)。

 安倍首相はトランプ米大統領の何なのか。ポチであることが、日本国民の安全を守ることになるのか。

 安倍首相(自民党総裁)は、加計・森友疑惑の真相解明のために欠かせない昭恵夫人や加計孝太郎理事長の証人喚問を拒否してきた。選挙で1票を投じる主権者国民の知る権利にさえもこたえずに、解散に打って出た。

 さらに、安倍首相の身勝手さ、情報隠ぺい体質が、主権者国民が審判を下すべきこの選挙でも貫かれていることは驚くべきことだ。安倍首相が立候補している山口4区。妻の昭恵氏が個人演説会で弁士を務めるが、報道各社はシャットアウトされている。前代未聞の事態である。

 安倍政権ほど、憲法をないがしろにしてきた政権はない。解散も、憲法53条に基づく野党の臨時国会召集要求を無視して行われた。その安倍首相(自民党総裁)が、選挙公約に「憲法改正原案を国会で提案・発議」すると明記している。自民党をはじめ改憲勢力が3分の2の議席を獲得すれば、総選挙後は、憲法改悪が日程に上ってくる。この意味からも、この総選挙の対立軸は明らかに憲法だ。

 すでに、対北朝鮮作戦に従事する米イージス艦に自衛隊が給油し、軍事行動を一体となって進めている。自衛隊の給油は、憲法違反の安保関連法(戦争法)に基づくものだ。憲法改悪は、外交的解決を拒否する安倍政権の北朝鮮対応や安保関連法を正当化することになる。

 自民党や希望の党などの改憲勢力に多数議席を与えてはならない。「市民と野党の共闘」勢力、護憲勢力を伸ばすことがこの総選挙を意味あるものにする。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)