「首相官邸主導の激しい選挙戦だった」と、市民の1人は名護市長選挙を振り返った。結果は、安倍政権の推す渡具知武豊氏が当選した。だが、選挙中は辺野古新基地建設にだんまりをきめこんでいた渡具知氏が、公明党との政策協定で「海兵隊の県外、国外の移転」を約束していたことも判明した。辺野古新基地を造らせない闘いはまだまだこれからだ。
「首相官邸主導」の選挙戦。安倍政権直轄の市長選だったといっていい。政府・与党幹部が入れ代わり立ち代わり名護市に入り「振興策」という「金目(カネメ)」の話ばかりをアピールし、企業や業界団体などを締め付けた。なかでも、前回は自主投票の公明党が渡具知氏推薦に回ったことは大きい。公明党は前回名護市議選で2300票を獲得している。単純計算で、稲嶺現市長につくか、渡具知氏につくかで、4600票の差が出る。今回市長選での得票差が3400票だったことを考えても、公明党の渡具知氏推薦の影響は大きい。実質、市長選の結果を左右したことがわかるだろう。
今回市長選の結果は、名護市民が辺野古新基地建設を認めたことになるのか。答えはノーだ。
辺野古新基地建設反対の民意は変わらず大きい。名護市長選挙序盤に行った、琉球新報、沖縄タイムス、共同通信の合同世論調査では、新基地建設に反対が66%だった。賛成は28.3%に過ぎなかったのだ。
渡具知氏自身選挙後にこう話した。「厳しい選挙だった。辺野古移設に反対する人もおそらく何%かはこちらに入れた。複雑な民意だと思う」。渡具知氏自身の話も、辺野古新基地建設反対の民意が強いことを示している。渡具知氏の当選は、辺野古新基地賛成を意味するわけではない。
さらに、5日付の沖縄タイムス社説は渡具知氏と公明党の間で結ばれた政策協定について明らかにした。政策協定には「地位協定の改定と海兵隊の県外、国外の移転を求めるということで合意に至った」と書かれている。
同じく5日付の琉球新報社説によれば、金城勉公明党沖縄県本部代表が渡具知氏推薦に至る経緯を語っている。「地位協定の改定と海兵隊の県外、国外の移転を求めるということで合意に至った」と、公明党沖縄県本部代表が政策協定の中身を明かしたのだ。
そのうえで琉球新報は「それなら海兵隊が使用する新基地は必要ないではないか」と渡具知氏に迫っている。
美ら海が埋め立てられ、オスプレイが100機も飛び交う新基地と同居して、名護市の経済発展や振興があるはずがない。それどころか、辺野古新基地が造られると、米兵と米軍機の恐怖におびえる日々となるだろう。
名護市の民意は、辺野古新基地建設反対だ。渡具知次期市長も、民意と政策協定に沿った市政を実行しなければならない責任がある。