【連帯・社会像】

岡本敏則:改憲論は歴史認識問題

2月24日夜、東京文京区で開催された「講演会」の「講演要旨」です。「改憲論は歴史認識問題」という観点からの講演でした。講師は山田朗明大教授(日本近現代史)、著書に『大元帥・昭和天皇』(新日本出版)、『兵士たちの戦場体験』、『昭和天皇の戦争』(岩波書店)ほか。

「明治150年」徹底批判―なぜ歴史を歪曲するのかー山田朗明大教授
⑴改憲問題は歴史認識問題
日本国憲法(第9条)は、近代日本の歩みに対する「反省」によって制定され、今日まで継承されてきた。9条護憲論の基盤は、先のアジア太平洋戦争、植民地支配(朝鮮、台湾、満州)、自由の抑圧に対する、全面的反省から成り立っている。「失敗から学ばないものは失敗を繰り返す」。
・「9条改憲論」-近代日本の歩みに対する全面的な評価、反省しないー歴史修正主義―パワーポリテックス・戦争・植民地支配・人権の制限、を評価し肯定する。
・「司馬史観」-近代日本の歩みに対する部分的な否定評価。明治時代の膨張主義・戦争(日清、日露)は成功事例とみなす。昭和戦前期の膨張主義・戦争・人権抑圧は失敗事例と捉えるが、植民地支配には言及しない。この司馬の「明治礼賛論」が、インテリ層はじめ大きな影響力を与えている。
・現在の9条改憲論―歴史修正主義を一翼としながら、「明治150年史観」が土台となっている。その典型的なものが「安倍談話」(2015年8月)である
・安倍の日露戦争観―「100年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が広がっていました。その波はアジアにも押し寄せてきました。その危機感が日本にとって近代化の原動力となったのは間違いありません。アジアで最初に立憲政治を打ち立て、独立を守り抜きました。日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」。
この捉え方は、日露戦争がまさに朝鮮半島と中国東北部をめぐる「植民地支配」確立のための、帝国主義戦争であったことを見えなくする。日本にとっての日露戦争の目的は。朝鮮半島に対する支配権の確立と南部「満州」の権益確保にあった。背景には「日英同盟」という軍事同盟があった。日本の軍事費は国債で調達。引き受けたのは、英資本と米資本(ユダヤ資本クーン・レープ商会)。クーン・レープ商会は、鉄道王ハリマンの最大の出資者。ハリマンは「満州」への進出を図っていた。日露戦争後、日・露は「満州」を分割し、米資本の「満州」進出を拒絶した。日米戦争の引き金になった要因の一つ。日露戦争の負債は残り、米国に完済したのは1950年代になってから。日本は米国に借金しながら戦争した訳だ。
 経済的援助だけなく、情報も英国から持たされた。「タイムス」はじめ、新聞、通信社がロシア軍情報を日本に提供。英国は露国と覇権を争っており、日本に資金、情報だけでなく日本海軍軍艦(7割が英国製)銃砲弾(半分が英国アームストロング社製)を提供した
・「明治」という時代―日露戦争勝利により、朝鮮半島→南満州→北満州→華北という、日本の膨張が始まった。戦争では、満州事変→華北分離工作→日中戦争→日独伊三国同盟→アジア太平洋戦争へと拡大されていった。
・「日露戦争」の本質を知ることで、安倍政権の「明治150年」キャンペーンに対峙していかなければならない。それが「明治はよかった」という「司馬史観」からの脱却でもある。

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