【連帯・社会像】

大沼博良:中央教育審議会の「学校における働き方改革」で、教師の長時間労働、ただ働きは解決できない

 安倍政権の「働き方改革」に国民は「ノー」を突き付けているが、真の改革が求められているのは学校現場も同じだ。昨年(2017年)12月、中央教育審議会が「学校における働き方改革」の中間まとめを発表した。教育現場での働き方が以前から大きな問題になり、教員らが解決を迫っていたからである。中身はどうか。

 文科省の2016年(平成28年)の「教員勤務実態調査」結果からも、勤務の実態が明らかになっていた。中教審は2017年6月に文科省から諮問を受けたが、わずか6ヶ月で中間まとめを出した。

 学校現場における働き方の問題は、①長時間労働②名ばかりの休憩時間③時間外労働の無償ーーだ。タダ働きは、ブラックそのものである。

 この数年前まで、学校現場にタイムカードはないので正確な時間外労働は誰も把握していなかった。教職員組合が独自の調査アンケートを採り長時間労働の具体的な実態を発表して、大きな社会問題になっていった。

 10年くらい前から、学校は機械警備を導入した。タイムカードはないが、機械警備の管理により、学校の警備解除と警備開始が記録されるようになった。いつ学校が開けられて、いつ閉められたが分かるようになった。

 そこで明らかになったことは、日をまたがる午前0時以降の警備の開始の日が月に何日もある時期があること。また、警備の解除が午前4時からの日もあることが分かった。つまり、学校の現場では、陽が上るはるか前から仕事をしている教員がいること、夜中午前様になるくらいまで仕事をしている教員がいることが明らかになってきたのである。

 教職員組合の勤務実態調査アンケートに、次のような回答が寄せられている。

・授業研究会の回数が増えて、精神的にも負担になっている。土日は「ぼろ雑巾」のようになって眠る。
・「朝6時に来て夜は8時まで仕事」が当たり前のようになった。
・授業時数が多くなり、放課後の余裕が無くなった。そのため子どもを理解するために必要な家庭訪問を無くした。
・子どもがほしいが、今の勤務状況・仕事の量だととても不安。

 「働き方改革」中間まとめに、その解決の方向はない。見た目は、改革らしいものを出しているが本質は別の狙いをもっていると言える。

 長時間労働を解消するとして、負担軽減の具体的な例を提言しているが、休憩時間問題と時間外労働の無償については何も具体的に提起はしていない。

 教員の時間外労働は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)に定められており、時間外労働をさせないとしている。しかし現実は、多くの教員は勤務時間を超えても学校で仕事をしている。それが現実なのに、時間外労働の報酬は無い。(残業手当というものは教員にはないということ)

 中教審の中間まとめは、この矛盾を感じていないようだ。

 文科省が実施した勤務実態調査の結果をみると、過労死ラインと言われる月80時間以上の時間外労働をしている教員は小学校で約30%、中学校で約60%である。

 さらに文科省の調査は、勤務の途中に休憩時間があるとの前提である。これも実態を無視している。実際は休憩時間も仕事をしているから、リアルに見れば、労働時間はさらに増える。休憩時間を加算すると過労死ラインを超えているのは小学校で約58%、中学校で約74%にもなる。学校現場では、半数以上の教員が過労死ラインを超えて仕事していることになる。

 文科省で実施した別の調査統計では、学校現場の病気休職者のうち精神性疾患を理由とするものが2010年以降60%の水準である。いかに、過酷な現場か。

 中教審の「学校における働き方改革」で、学校現場が直面している休憩時間無しと時間外無償労働は解決しない。それは、教育職員の時間外労働は無いとしている「給特法」と現実の労働実態の矛盾に言及していないことに現れている。

 休憩時間無しと時間外労働無償を解決しようとしないことには、ある狙いがあると思う。教員の働き方を、「高度プロフェッショナル制度」として明確にしたいのであろう。

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