【福島・沖縄からの通信】

加藤祐三:政府は音波探査結果を公表し、活断層疑惑にこたえる責務がある〈2018沖縄レポート⑥〉

 沖縄側は埋立承認撤回の有力な根拠となるとみているが、安倍政権は活断層に関する決定的なデータを公表しない。原発は活断層の上には建てられないが、辺野古新基地ならかまわないのか。不都合な事実を隠蔽する点では、森友・加計疑惑、イラク日報等々と同じ構図だ。辺野古新基地建設予定地は活断層の上にある可能性が大きいと指摘してきた加藤祐三琉球大学名誉教授に聞いた。〈文責・星英雄〉

 辺野古新基地建設予定地には活断層存在の可能性が高いという私の分析を昨年、赤旗や琉球新報が報道して、活断層疑惑がにわかに注目されるようになりました。防衛省が調査したデータを明らかにすれば、活断層だと証明されると思いますが、いくら要求しても防衛省はデータを公表しません。

 私が、活断層があると推定する根拠は3つあります。第1は、2000年に沖縄防衛施設局が公表した海底地質断面図です。これが一番重要な根拠です。(図1)

図1

 赤の地層の上に青の地層、そのうえに黄色の地層があります。青は琉球層群といってサンゴ礁が岩石になった地層、数十万年前にできました。サンゴ礁だから昔、平らにつながっていました。それがずれているのは断層で上下に切れたということです。

 黄色は沖積層といって1万年より若い時期にできた地層、もっとも若い地層です。この上面が、階段状になっています。つまり沖積層が切断されている可能性があり、もしそうなら重大です。つまり1万年よりも若い時期、縄文時代にここで断層が動いたということになります。

 断層が動いたということは、同時に地震が発生したということです。活断層とは、比較的最近活動したことがあり、今後も活動する可能性がある断層のことです。最近とは数十万年前から現在までの期間。縄文時代は地質学では、昨日みたいに若い時代なのです。若い時期に動いたものほど、これからも動く可能性が大きい。

 活断層かそうでないか、その確認のために、音波探査の図面をみせて欲しいと要求していますが、防衛省は開示しません。

 第2の根拠は陸上に活断層があるということです。私は地質学者ですから、野外を歩いて地質図をつくります。それで、どこにどういう地層がどういうふうに分布しているか、それらの地層がどう切れているか切れていないかを調査して1枚の図面に仕上げます。それが地質図です。

 地質図の中で、大浦湾に伸びていく2つの断層がはっきり示されている。陸地から海岸に向かう辺野古断層と楚久断層です。名護博物館が出版した『名護・やんばるの地質』は、活断層であることを確認しています。一方、航空写真、つまり地形をもとに、東京大学出版会の『日本の活断層』では、2つの断層は「活断層の疑い」と指摘しています。

第3の根拠は海底地形です。断層の部分は地面が切れてキズがあるので、雨、風に弱く、他の部分よりも先に削られます。そのため谷地形になりやすいのです。辺野古断層、楚久断層も谷地形になっている。これを大浦湾に延ばした海底でもこれら2断層のそれぞれに対応した谷地形が延びている。そして2つの谷地形はやがて合流する。その合流点が、2000年に那覇防衛施設局が示した断層の位置と一致するのです。こうして活断層疑惑が浮上したのです。(図2)(図3)

図2

〈図2=赤い点は2000年に那覇防衛施設局が示した断層の位置〉

図3

〈図3=緑の部分が埋立予定地、青線がV字型滑走路〉

 私の推定が正しいのかどうかを確認するには、音波探査という方法があります。漁船が音波を出し、跳ね返ってくる音波をみて、魚群がいるかどうか判断するのと同じ原理。魚群探知機よりもっと強力な音波を海底に発することで、地層の様子が分かり断層があるかないか、わかります。

 防衛省は私が活断層と推定したところを音波探査で調べていますが、音波探査の希望の図面を公表しません。公表されているのは、画像処理がされていて、分かりにくいものです。元のデータを見れば、私の推定が正しいかが分かると思います。

 そこにもってきて、最近軟弱地盤の問題も浮上しています。C1という護岸の地盤について、驚くべきデータが出てきたのです。マヨネーズといわれるほど、ずぶずぶの超軟弱地盤。沖縄防衛局の報告書では「当初想定されていないような特徴的な地形・地質」と書いています。

 ボーリング調査では、ある重さの錘を落とし、先端がどれくらい突き刺さるかをみて、N値を測定します。これから地盤の強度が分かります。地盤がずぶずぶで何もしなくても沈んでしまうN値ゼロが続出したのです。

 この地盤では、重いものを支えられません。それが厚さ40メートルもあるのです。関空(関西国際空港)も海を埋め立ててつくったけど、関係者の予想を超える沈下で困っていますが、ここはその比ではありません。地震が発生すれば液状化も起きるでしょう。

 防衛省はポセイドンという民間の船を雇って近接した海域でボーリング調査を必死にしています。不安だから調査しているのだと思います。本来、まず十分な地質調査をして、それでOKになってから工事を始めるのが当たり前なのです。たとえばダムをつくるとき、数年間は調査します。ダムのプランニングの前に地質調査、ボーリング。それでゴーサインが出てやっとダムサイト工事に入るんです。ところが辺野古新基地の場合は工事をはじめてから、後になって音波探査とかボーリング調査をやっています。手順が逆立ち、ものすごく乱暴なやり方です。常識では考えられません。

 私は辺野古、楚久の2つの断層の延長海域の元のデータ、画像処理前の音波探査図面と、2000年に沖縄防衛施設局が断面図を公表した、海底谷の合流地点の2つの海域の音波探査データの開示を求めています。活断層の上に原発はつくってはいけないことになっているように、活断層のうえに基地をつくれば大変な惨事となる恐れがあります。政府はデータを公表する責任を果たすべきです。

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