【連帯・社会像】

星英雄:どのような連帯・共同が日本の新しい政治・社会を可能にするのか

 総選挙は自民党の圧勝で終わった。そこから日本社会の変革をどう展望すればよいのだろうか。

 自民党が294議席を得て、安倍晋三政権が誕生することになる。憲法9条を改悪して国防軍創設。原発は容認。「自助自立」をさけび、社会保障を削減。そんな方向をめざしている。

 自民党の圧勝は小選挙区制がもたらしたという。事実、自民党の小選挙区得票率は43%。それなのに、議席占有率は79%にもなる。民意を反映しない小選挙区制の弊害はあきらかだ。だが、小選挙区制の問題を指摘するだけではすまないだろう。保守の基盤の厚さを直視する必要がある。

 今回総選挙で、自民、民主、維新、みんなの得票率の合計は72・7%。前回2009年総選挙は、自民、民主、みんなの合計は73・4%。ほとんど変わらない。前回、小泉構造改革に痛めつけられた自民党離れの票は民主党に流れこんで政権交代が実現した。今回、民主党を離れた票は日本維新の会とみんなの党が吸収した格好である。つまり、保守ブロックというべき一定の基盤のなかでの票の移動が政権交代を起こしている。

 他方、憲法改悪反対、原発ゼロ、貧困・格差是正を掲げた社民党、共産党はじりじりと衰退をつづけている。かつて革新自治体が隆盛だった1970年代、社会党・共産党あわせて1700万票を獲得した総選挙もあった。今回総選挙は両党あわせてわずかに8・5%、511万票だ。自民党に逆風が吹いても、民主党が寒風にさらされても、受け皿になりえていないのが現状だ。

 民主党が壊滅的に大敗し、2大政党制が崩れても、分厚い保守の岩盤を打ち砕かなければ、日本の変革には至らない。

 「3・11」東日本大震災は日本社会にきわめて大きな衝撃をあたえた。とりわけ東京電力福島第一原発事故は、人類と原発(核)は共存できないことをはっきりと示し、全国各地で脱原発・原発ゼロを求めるデモや運動を引き起こした。毎週金曜日、首相官邸を取り囲む脱原発デモは、恒例行事となっていまに続く。「草の根」からの運動が既存の社会を大きく揺るがしている現実がある。

 自民党が大勝し総選挙が終わっても問題は解決したわけではない。原発事故はいまだ収束せず、いまも福島の16万人が避難生活を続けている。民主党政権と東京電力は被害者への補償打ち切りを策してきたが、原発容認の安倍政権でその危険性はさらに強まるだろう。福島から「見捨てられる」という不安の声をきく。

 歴代政権と原発関連大企業の癒着による国策が日本を原発依存社会にした。原発ゼロは、エネルギー政策の転換にとどまらず、他者を犠牲にする経済成長のあり方、中央と地方の関係等々、これまでの日本の経済社会構造を変えずにはおかない。だから、財界や自民党などと米国の抵抗は激しい。

 「米軍普天間基地は県外へ」は沖縄県民の総意だ。それにもかかわらず、安倍氏は辺野古への移設を進める姿勢をあらわにしている。安倍氏は1月に訪米して日米同盟の強化をはかり、7月の参院選後には憲法改悪に手をつけていく道筋を描いている。

 憲法、原発、貧困・格差、TPP、沖縄、日米同盟。国民が直面する課題はどれ1つとっても1党派が背負えるほど軽くはない。一方で、「草の根」からの変革の胎動は、1960年代、70年代よりもさらに広く深い。問題は、力を結集して政治を動かすことができるかどうかだ。

 福島・沖縄に暮らす人々、貧困・格差に苦しむ人々の思いをくみとることができる日本の新しい政治・社会像をどう描くのか。それを実現するにはどのような連帯・共同が求められているのか。いま議論するときではないだろうか。

星英雄:どのような連帯・共同が日本の新しい政治・社会を可能にするのか” への1件のコメント

  1. 護憲、反原発、反貧困、反TPPで共同する社会勢力、政治勢力をつくりだすことが必要だ。共産党は社会運動で「後衛」(縁の下で支える)の役割に徹するべきだし、衆参の選挙区選挙では共同候補を立てるべきである。その意味で「未来の党」結成に注目していたが、総選挙後の分裂をみて落胆した。小沢一派は議員政党という発想しか持っていない。
    しかし参議院選挙をひかえて「第4極」の構築につながる努力を急がねばならない。共産党は「埋没」を恐れてはならない。「のれんを守る」だけでは未来を展望できない。

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