また1つ、明らかになった。辺野古新基地が、住民の命も安全も顧みないことが──。民家や学校は米軍機の低空飛行の危険にさらされ、子供たちや住民はおびえて暮らさなければならなくなる。辺野古新基地は、「高さ制限」というアメリカの基準や日本の航空法を無視して造られようとしている。安倍政権はどこまで人間の命を軽んじるのか。
名護・沖縄の人々が怒っている高さ制限とはどういう問題か。高さ制限は米軍機が自由に飛べるように、基地周辺の障害物を取り除くために設定されている。このことを住民の視点でみれば、高さ制限の範囲内にある人や建物は常に危険にさらされることになる。これが問題の核心だ。
米国防総省の統一施設基準書に従えば、辺野古新基地の「水平表面」の制限は滑走路の周囲2286メートル、標高約55メートルだ。ふつうなら、55メートルの高さを超える建造物は建てられない。米軍機は、基地の周辺では、55メートルの低い高度まで自由に飛び回るからだ。ところが、米軍機が自由に飛び回るこの危険空域に住民たちをが多数暮らしている状態はそのままに、辺野古新基地を建設するというのだ。この本末転倒。
「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」の名護市豊原区を中心とした調査によれば、高さ制限を超えるのは久辺小・中学校や国立沖縄工業高等専門学校の教育施設や豊原地区会館など7公共施設、民家やマンション71戸、店舗など7戸が存在する。
久辺中学校の校舎は63・57メートル、久辺小学校は62・7メートルの高さ。マンションなどのほか、名護防衛事務所や久辺郵便局、沖縄北部雇用能力開発総合センターなども高さ制限を超え、危険空域に存在している。
8月上旬、辺野古の入り口から久志方向へ、国道329号線に沿って歩いてみた。すぐに国立沖縄工業高等専門学校が見えてきた。最も高い校舎は標高約70メートル。高さ制限に引っかかる。329号線をはさんだ左手に、学生寮がある。ここも約59メートルの高さだ。高専の教職員・学生の数は921人。552人の学生が学生寮に暮らす。
汗だくになってさらに坂の歩道を上っていくと、右手に民間マンションIーDACⅡ、さらに坂道を上がっていくとコンビニのローソン、そのすぐわきには沖縄電力の送電鉄塔がある。
さらに少し坂道を上ると、まるみつ食堂、コンビニのファミリーマートがある。まるみつ食堂は店内に美空ひばりのポスターがところ狭しと貼られていることで知られている人気店だ。
ここから少し離れたところに、久辺小学校と久辺中学校がある。子どもたちが学ぶ2つの学校も高さ制限を超えている。久辺小の生徒数は155人、久辺中の生徒数は77人。子どもたちを危険にさらすことを安倍首相、渡具知・名護市長らはどう考えるのか。
辺野古新基地の高さ制限は、国会でも大きな問題となった。5月の衆議院安全保障委員会での質疑で、防衛省整備計画局長はこう答弁した。「自衛隊の飛行場の設置に際して、周辺物件等が航空機の離着陸に支障を及ぼす状況にある中で飛行場が設置されたような事例はない」。自衛隊ではありえない、危険な辺野古新基地であることを認める内容の発言だ。
辺野古弾薬庫も高さ制限を超える危険空域に存在することが明らかになっている。
安倍政権・沖縄防衛局は、沖縄電力の送電鉄塔は移設させるが、高専や民家などは「移転の必用はない」としている。人々が暮らしている民家に移転を迫れば、辺野古新基地建設反対世論をさらに大きくすることを恐れてのことに違いない。しかし高専や小中学校、民家が危険空域内にある事実は変わらない。
〈「沖縄を考える」http://kangaeru.okinawaから〉